一の陣~第一篇~
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『長野県上田市?』
夏「田舎で大おばあちゃんのお誕生会があるの」
先輩は売店で弁当と茶を受け取りながら言った。ホームには俺と先輩が乗る予定の新幹線がすでに停まっていた。
夏「あちこちから親戚一同が集まるんだけど、全然人手が足りなくて」
大おばあちゃんと言うことは、曾祖母のことだろうか。親戚一同となると、よほどの人数が集まるのか…って。
『そのお誕生会に僕なんかが行ってもいいんですか?』
夏「いいのいいの」
『そう、ですか…じゃあ僕はそのお誕生会のセッティングを手伝えばいいんですね』
人手が足りない=力仕事してくれる人も少ないと解釈した俺。しかし、そんな簡単な事なんかではない、と後々知る事になる。
夏「うん、そうなんだけど…ええと、それだけってわけでもなくて」
弁当の袋をぶら下げて戻ってきた先輩が俺から目をそらした。
『…なんですか?』
夏「ううん、何でもない。詳しいことは、現地で話すから」
午前11時44分、あさま521号は東京駅から発車した。
上野、大宮を過ぎて、窓の外を流れる風景が増え始めた頃に、俺と先輩は昼食をとることにした。先輩が買った弁当はとてもバランスのいい弁当であった。
夏「ところでさ。何の日本代表になれなかったの?」
『え?』
弁当の中に入っていた炊き込みご飯を口に入れようとしたら、先輩の口からそんな言葉が出てきて、驚いて隣の先輩を見た。隣といっても、通路を挟んでとなりだ。2人席は空いていなかったのて通路を挟んでとなり。少しガッカリだけど、このくらいの距離がちょうどいい。
『どうしてそれを…』
夏「佐久間くんが言ってた。あとちょっとだったの惜しかったって」
先輩が身を乗り出して好奇心いっぱいに顔を近づけてくる。
夏「ねね、何の日本代表なの?淳樹くんって、スポーツとかしてたっけ?」
佐久間の奴、余計なことを…
『スポーツじゃないですよ』
夏「だよね。淳樹くん、そういうの苦手そう」
運動もそこそこできる方なんですけど。でも先輩は俺ことそう見られてるのか。だいぶ隠し通せてる。それは良かった。
『ええと、数学オリンピックって言って…』
夏「オリンピック?数学?なにそれ?どっち?」
『え、どっち?いえ、どっちもです。計算力を競うオリンピックで…』
夏「へえー、そんなのあるんだ」
そりゃ初耳だろうな。
夏「淳樹くんって数学、得意なの?あ、でも物理部だもんね。パソコンやるだけの部かと思ってたけど」
数学は人より少し得意ってだけです。でも意外だ。先輩のような活発な体育系からしたら、興味ゼロの話題かと思ってた。
『得意なんですかね…』
夏「ふーん。ねえ、何かやって見せて!」
『え?』
期待に輝く瞳で見つめないでください。
『そ、そーですね。ええと…そうだ、篠原先輩の誕生日って、いつですか?』
夏「わたし?7月19日。平成4年の」
『日曜日ですね』
夏「え?」
『1992年の7月19日は日曜日です、ね』
そうしたら先輩はひきつった顔で少し身を引いた。
夏「そんなこと知ってるなんて… 淳樹くんってストーカー?」
『はぁ?ち、違いますよ。先輩をストーカーするチャレンジャーに見えます?俺?』
夏「じょ、冗談だよ。そんな風にも見えないし…(俺?)」
『それで、合っていましたか?』
夏「分かんない」
『…』
そりゃそうだろう。自分の生まれた日の曜日を知ってる人間なんているわけがない。なんやってんだ俺。
『そう言えば篠原先輩も、剣道部で全国大会に出られそうだって聞きましたけど』
もう数学の話は続かないと思って話題を変えた。これも聞いたのは佐久間からだ。
夏「うーん、私も惜しかった…のかな?」
食べ終わった弁当を片付けながら言った。確か篠原先輩は剣道部の元主将でつい先日、引退したんだっけ。最後の大会では団体戦でインターハイ出場を惜しくも逃したらしい。
あと部活以外でも、先輩は生徒会長を務めていて、任期が残っているそっちは夏休み中にキャンプを計画してるらしい。容姿が良く、社交的で面倒見が良い。ちょってアクティブすぎる面があるところも、男子生徒から見たら魅力以外の何物でもない。そんなスーパー女子高生の篠原先輩は恋愛方面で大活躍…と言いたいが、なぜかそういった噂は聞いたことがない。ただ一つ耳にするのは男子生徒の玉砕記録更新だけ。
その理由は不明。篠原先輩みたいな人は絶対彼氏がいる。だから他の男子生徒を断ってんだろう。でもなんで本当に恋愛方面の話しは噂はないのだろうか。
『あの、篠原先輩…』
夏「そんでね、生徒会のキャンプには…なに?て言うか下の名前でいいよ。呼び方」
『え、いや…』
夏「でなにか用?」
『…なんでもないです』
他人の恋愛に首を突っ込むな、俺。