学び舎の園
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『「常盤台狩り?」だぁ?』
常盤台の風紀委員室で御坂と俺の声が重なる。黒井と初春と合流した。すると、常盤台の生徒が狙われている事件がここ数日おきているらしい。
「そーか、うちの制服を着てたせいで」
『具合はどうなんだ?』
「体のほうはたいしたことなくて、しばらく横になれば大丈夫だろうって…ただ」
「…くぅ」
初春は悔しそうに唇をかみ締める。
『で、白井、犯人は?』
「まだですの。少々厄介な能力者でして」
「厄介って?」
「目に見えないんです」
『「えっ?」』
それで初春と黒井がパソコンで被害者の証言現場の映像を見せてくれた。
「被害者には見えない犯人ねぇ」
「最初は工学操作系の能力者を疑ったのですが」
「姿を完全に消せる能力者は学園都市に47人います。けど、その全員にアリバイがあって」
「それ以前に監視カメラに映ってるんでしょう。工学操作系っていうのはちょっと違うんじゃない?」
「そうなんですの…」
「あっ、鳩」
初春が外を見て言った。
「えっ?」
「白井さん見なかったんですか」
「そんなもの気づきませんでしたわ」
『気づかない…初春、ちょっと調べてほしんだけど』
「えっ?」
「ありました。能力名はダミーチェック。対象物を見ている認識そのものを阻害する能力です。該当する能力者は一名…関所中学校2年、重福省帆」
「そいつですわ!」
「でも、この人異能力者(レベル2)です。自分の存在を完全に消せるほどの力ではないと実験データにあります」
『いい線いってると思ったんだけどなぁ』
初春と黒井の会話からもしかしたらと思っていたけど。
「また一から考え直しですわね」
『そーだな…ちょっとトイレに行って来てくるわ。職員用のトイレってあるか?』
「あるわよ。職員室の近くにあるから」
『分かった、ありがとう』
『いい線いってると思ったけどなぁ』
トイレを済ませて洗面所で手を洗いながらさっき言った台詞を零した。異能力者は自分の存在を消せるはずがない。もし、能力が上がっていたとしたら…いや、そんなわけ…もしかしたら。
『まさか…ね』
頭のモヤモヤを払うように首を横に振り、トイレから出て風紀委員室に戻った。
『なんだ?』
風紀委員室前に着くと廊下に漏れるほどの声で悲鳴と笑い声が聞こえた。
『どうしたのみんな…お、佐天さん目覚ましたんだね。体は大丈夫なの』
扉を開けると佐天さんが目を覚ましていた。
『どうしたの佐天さん?』
俺が佐天さんのところに向かおうとすると佐天さんは俺に背を向けた。なんでだ?顔を覗き込もうとすると佐天さんはそれを避けるかのようにまた俺に背を向ける。
「先輩、ちょっとこっち見ないでください!」
『えっ?』
俺、嫌われた?なして?どうして?
「アンタ、ここまで佐天さんを抱えてきて分かんなかったの?」
笑ってた御坂が笑いを堪えて言ってきた。
『何が?』
「…」
何その沈黙、俺何かした?
『俺、佐天さんに嫌われるようなことした?』
「いえっ、違いますよ!私は先輩のこと嫌いとか思ってませんよ!むしろ好きですよ!安心してください!」
佐天さんは俺の言葉を全力で否定してくれた。
『良かった…どうしたの、その顔!』
振り向いた佐天さんの顔を見て肩を掴んだ。
「えっ?」
『誰が…ってどうしたの?』
「いえ、笑わないんですか?」
『笑う…?』
「この眉毛見て笑わないんですか?」
『佐天さんが笑わせるために書いたの?』
「んなわけないじゃないですか!」
『佐天さんが俺たちを笑わせるために書いたならともかく、誰かにやられたとか笑えないだろ』
前も銀行強盗の時に顔を蹴られて傷つけられたっていうに…安易に女子の顔に傷やら落書きやらするんじゃないよ。
「先輩…」
「さきほど申した常盤台狩りの被害者は皆、佐天さんのようにされてますの」
『そうなんだ』
「まー、せめてこれくらい前髪があったら隠せますのに…」
黒井がパソコンの画面の重福省帆の写真を見て言った。
「前髪?」
佐天さんは黒井のとこにいき、パソコンの画面を見た。
「…こいつだぁ!」
『えっ?』
「あなた、犯人を見たんですの!?」
「はい。あの時…鏡の中に確かに」
「鏡に監視カメラ…なるほどそうゆうことか、認識できなくするのは直接肉眼で見てる人間に限るんだ」
「ふっふふふ…この眉毛の恨み、はらさねおくべきか!やるよ、初春!」
「はい?」
少しして、机の上にパソコンの画面が5、6台増えた。
「なんかすごいね」
「こうでもしないとここにある端末じゃ追いつかないんです。それより、学び舎の園は一七七支部の管轄じゃないんですけど、大丈夫なんですか?」
「上からの許可、取り付けましたわ」
黒井が電話で許可を取ったらしい。仕事が早い事で。
「よっしゃ!初春、どーんといってみようか!」
「はいはい。どーん」
初春がエンターキーを押した。すると、画面が見る見るうちに変わる。
「学び舎の園の監視カメラ全2458台、接続終えました」
「おぉ!」
すげーな初春、君は何者だ?
「待ってろよ、前髪女!必ず見つけ出してやるからな!」
拳を握りながら佐天さんが張り切ってる。余程嫌なんだね、その眉毛。
「約束のケーキ、忘れないでくださいよ」
「3個でも4個でもいくらでも食べてよし!」
「わぁーい!」
「…多すぎるわね」
『確かに』
「そうですか?」
「えー大丈夫ですよぉ」
『いやっ、ケーキじゃなくて』
「「えっ?」」
「初春、エリアEからHと、JとNは無視ですわ」
「えっ?はい」
初春は黒井に言われた監視カメラのエリアを黒くして除外した。
「あのあたりは常盤台から一番遠い場所、ですからうちの生徒はほとんど行かないですの」
「へぇー」
「じゃぁ、一通りの多いとこも後回しね」
「え?なんでですか」
「犯人の服装、学び舎の園じゃ、かなり目立つと思わない?」
「「あっ!確かに」」
初春と佐天さんの声が重なる。
「人目のある所ではずっと能力を使っていると?」
『なるほど、そういうことか』
「そして能力は永遠に使うことはできない」
「はっ!どこか人目に付かないとこで意気を潜んでる…」
「正解」
改めて風紀委員の任務をしてる白井はすごくかっこいいと感心してしまう。いつもは変なのに…。
「と、いうことは…」
監視カメラのエリアが絞られて俺たちは初春の指示で犯人を捜しに常盤台の風紀委員室を出た。
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