3人の視線が痛くて恐い。

「片倉さんがあんなのを選ぶわけないじゃない」
「確かに。幼すぎる」
「ねぇ、いつ妻にしてくださるんですか？」

小十郎「おい……！」

優を見るとうつむいていた。
小十郎は困惑した表情をする。

わかってるよ
小十郎さんとつり合わないことぐらい
小十郎さんは好きでいてくれてるけど
そんなことわかってる

優は小石を蹴った。
大きな溜め息をつく。

優「あたし、先に帰りますね」

小十郎に背を向け歩き出す。

小十郎「竜堂！待ってくれ……！」

「片倉さん、あの娘（こ）が好きなの……？」

小十郎「……俺たちのことはほっといてくれ」

小十郎は彼女を追いかける。
3人は優をにらみつけた。

「お嬢ちゃん」

少し年のいった女が話しかけてきた。

「着物はいらないかい？」

女は薄緑の着物を見せた。

「お嬢ちゃんは小柄だからこの小袖がいいと思うわ」

小袖は梅柄で可愛い。
見れば見るほど欲しくなってきた。

優「でも、お金が……」

「じゃあ、それをくれ」

後ろから小十郎が言った。

優「そんな、悪いです！」
小十郎「いいから」

小十郎はお金を払った。

「どうぞ」

小十郎は小袖を受け取る。

優「すみません」
小十郎「遠慮するな」
優「……はい」

チラッと見ると、女3人がこちらをにらんでいた。

優「……」

彼女は小さく息を吐いた。


夕刻ー

優は腰紐と小袖を見た。

優「色が合わないかなぁ。さっきのお店で腰紐売ってないかな」

彼女は立ち上がると、部屋を出た。

勝家「優様、こんな時間にお出かけですか？」
優「少し町にね。すぐ帰ってくるから」

勝家は心配そうな顔をした。

勝家「……お気を付けて」
優「うん」

彼女は小走りで出かけて行った。