農村ー

優はあたりを見渡した。
のどかでどこか落ち着く。

「あっ、片倉さん！お米だべか？」

銀髪を頭の左右で結んだ女の子がやってきた。

小十郎「あぁ、頼む。いつき」

いつきは優を見た。

いつき「かわいい子を連れてる！」
小十郎「あぁ、こいつは最近うちに入ったやつだ」
いつき「おらはいつき！よろしく！」
優「竜堂優歌です。よろしく」

いつきはにっと笑った。
無邪気なかわいらしい笑顔だ。

「いつきー！腹減ったー！」

向こうから男の子が歩いてきた。
彼を見たとたん、優は目を見開く。

優「蘭丸……？」
蘭丸「優！良かった……！大丈夫だったのか」
優「心配したじゃない！バカ……！」

彼女は蘭丸に抱きついた。

蘭丸「ごめんな」
小十郎「……」

小十郎はふたりから目をそらした。

『優様が愛した人です』

蘭丸「蘭丸、ここに住んでんだ。いつきの飯美味くてさ」

優はいつきを見た。

いつき「おめぇが来てから減りが早いべ」
蘭丸「へへ。しょうがねーだろ」

優は表情をくもらせ、彼を離した。

優「そっか」

そう返すのがいっぱいだった。
込み上げてくるものをぐっとこらえる。

優「お米もらったら帰りましょうか、小十郎さん」
小十郎「あぁ」

彼女は小十郎に駆け寄る。

小十郎「……大丈夫か」
優「はい」

小十郎は心配そうに彼女を見た。


いつき「じゃーな！」
蘭丸「優、また来いよ！」

蘭丸は笑みを浮かべた。
優は作り笑いして、うなずいた。

小十郎「……」

彼女は蘭丸たちに背を向け、歩き出した。