優は幸村たちと共に屋敷に帰ってきた。
「ふぅ……」と深く息を吐く。

「優様、今気になっている漢いないんですか？」


優「は!?」

「幸村殿と佐助殿、どちらが好みなんですか？」
「待て。もうひとり男前がいたぞ」

ひとりの元織田の兵はその場から離れた。
少ししてひとりの漢を連れてくる。

「何だよ、おい！」
「ほら！このたくましい肉体（からだ）に整った顔、溢れ出る色気！」

優は漢を見た。
彼は胸が開いたえんじ色の着物を来ていて、襟元からたくましい胸筋がのぞいていた。
背はかなり高く、見た目の体型はそこまで筋肉質ではなさそう。
顔は少し強面だが整っている

「名前は？」
「龍二だが」

優は目を丸くした。

優「龍二……なの……？」
龍二「あぁ」

「優様、知り合いですか？」

龍二「優……？」

彼女はうなずいた。

龍二「大きくなったな」

龍二は彼女の頭をなでた。

優「生きてたんだ……」
龍二「濃姫様に逃がしてもらったんだ。そのあと武田に戻ってきちまった。ごめんな」

優は首を横に振った。

「いい雰囲気ですね」

兵たちはにやけた

龍二「ち、ちげぇし！」

あたしが気になる漢（ひと）……
それは……

脳裏に浮かんだのは、あの大きく頼もしい背中、凛々しい横顔。

優「あたしはあの人のこと、好きなのかな……」

「気になる漢いるんですか」
「誰ですか？こっそり教えてくださいよ」

優「お、教えない！」

彼女は去っていく。

龍二「年頃の女だしな。好きな漢のひとりやふたり、いてもおかしくねぇよな」

「優様は好きだった漢を引きずっているらしくて……」
「前向いて幸せになってもらいたいのですが……」

龍二は表情を暗くした。