ダダダ！

縁側から走るような足音が聞こえ、優は不思議そうに立ち上がり、部屋の中から顔を出した。

「幸村様！石田軍が、こちらに……！」

彼女は目を丸くした。

幸村「なんと！兵を挙げねば……！お館様ぁぁぁ！」

幸村は慌てて走り出す。
優は刀を手に取り、部屋を出た。

「優様！出陣のようです！」

優「うん。迎え撃とう」

「はい！」

彼女は深く息を吐いた。


優と幸村、佐助は立ち止まった。

「島左近、入ります！」

茶髪の男が立ちはだかる。

左近「あんたが鬼姫？織田の人間って感じしなくね？」

すると、優はピクっと反応した。

「あ……今『織田』って……」
「貴様！優様の前で軽々しく『織田』と口にするな！」

『ククク！いい顔ですね』

頭の中で光秀の声が響く。
炎に包まれた本能寺を思い出す。

優「はぁ……はぁ……はぁ……」

彼女の息が荒くなる。
右手がゆっくり刀に伸びる。

佐助（マズイ……！この雰囲気……理性失いかけてる……！）

『蘭丸様は敵兵を優様から遠ざけて戦っていました』

優「あたしは……」

優は刀の柄を握った。

幸村「優」

幸村は彼女の右肩に手を置いた。
優は目を丸くした。

幸村「大丈夫か」
優「……幸……村……」
左近「さっさと鬼姫渡してくんね？俺、三成様に怒られるんスけど」

優は目を閉じると、深く息を吐いた。

『蘭丸が好きになったのは、お前の前を向く強い姿』

彼女はゆっくり目を開け、刀を抜いた。
元織田軍兵たちはおそるおそる優を見る。

「優様……？」
「この雰囲気は……？鬼姫ではない……？」

佐助は驚いた顔で彼女を見た。

優「わたしは鬼姫ではない。武田の華だ……！」
幸村「優……！」

彼女は幸村に向かって凛々しい笑みを浮かべた。

「優様！ご指示を！」

優「敵兵を撤退させるんだ。あくまで殲滅（せんめつ）するのではなく撤退させる。わかった？」

「はっ！」

佐助はほっと息を吐いて、かすかな笑みを浮かべた。