路上生活からの解放
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――盟王学園高等部、1-Bの教室――
ザワザワザワザワ
――盟王学園高等部 校門付近――
今は、6月20日。
少し汗ばむ暑さだが、学ランに身を包んだ淡い紫色で、少しウェーブがかった髪は、背中まであり、キラキラ光るカチューシャをしている、容姿端麗な女の子が少し、仏頂面で校門付近で立ち止まり、校舎を見上げていたが、そこに彼女の保護者の姿は、見当たらない。
それは、彼女が3歳の時、火の不始末で実家が火事になり、たまたま外にいた灯里は、難を逃れたが、就寝中だった母と上2人は逃げ遅れ、
と、言うのは建前で、火事になった本当の原因は、彼女の指輪に封印されている
しかし、愛想笑いの1つもない所を見ると、本当に来たくなかったらしい。
その理由というのが、霊界絡みというから、なお気が進まないのだろう。
?(ったく、何が悲しくて、あたしが、こんな大勢のところで、それも集団生活するところに、通わないといけないの?ハァ。それもこれも、全部コエンマの
と、1人心の中でごちる。
――遡る事、1ヶ月前――
コ「おう!灯里!スマンな、急に呼び出して…。」
灯「本当だな。今から、店の仕込みがあると言うのに、霊界のお偉様は、余程暇なんだろうな。」
バチッバチ。
バチッバチ。
灯里とコエンマの間には、青白い火花が散っている。
柚「ま、まぁまぁまぁ。その辺にしてさ!」
灯「ところで、何で
柚「『
灯「ム。別に、『柚貴』でも、良いじゃん。」
コ「全く、お主らは、顔を合わす度に言い合いしかせんなぁ=3」
プチン。
灯・柚「「アンタが、中途半端な時間に呼び出すからだろーが!/でしょうが!」」
と、2人に迫られ、コエンマは思わず小さくなったそうな。
コ「ス、スマン!まさか、ここまで責められるとは、思ってなかったんじゃ〜。泣」
灯「大体、アンタがあたしを呼び付けるなんて、碌な事がない。数年に渡る路上生活をやっと、解いて貰ったっていうのに、今更何の用?今、あたしは、自分の店を持って、充実しているんだから!!用がないなら、帰らせて貰う!」
コ「あ〜、待て待て待て、灯里!お主なら、『南野 秀一』という名を知ってるおるだろう?」
ピタ。
クル。
スタスタスタ。
ガッ!
コ「な、な、何じゃ!?どうしたと言うのじ…。」
灯里は、コエンマの前まで来ると、左手で胸ぐらを掴んだ。
柚「(あ〜あ、灯里の1番触れてはいけない所に触れたよ、コエンマ様。知らなかったとはいえ、それくらい、前もって調べておいたら良いのにぃ〜…。ハァ。)可哀想だからそろそろ、やめてやれ、灯里。」
柚貴のその一言が、合図となり、灯里は、コエンマの胸ぐらを掴んでいた手を離した。
灯「フン!」
パ。
ドサッ。
ギロ。
コ「ゲホゴホゲホ。ハァハァ。」
そんなコエンマを孤独に満ちたマリンブルー色の瞳を持つ灯里の瞳は、今や、絶対零度の瞳に変わっていた。
灯「2度とあたしの前で、その名前を出すな。知っていても、お前に教える義理はない。」
コ「ちょっと待てぇ〜!!」
灯「何だ。」
コ「灯里、お前には、“盟王学園”という、進学高校に行ってもらいたいのじゃ。」
灯「…話しがあまり見えんが、つまり潜入しろと言うことか。」
コ「それもあるが、1人は、もう飽きたじゃろ。」
灯「別に。今のままがのびのび出来て、結構快適だ。今更、
と、灯里の纏う雰囲気が、嫌味に聞こえた。
“これ以上言えば、いくら
それに怯んだ2人を尻目に、灯里は、その場から
去っていった。
フイ。
カッカッカッ。
2人は、遠ざかっていく小さな背中を、戸惑いの眼差しで見送っていた。
柚「……」
コ「……」
2人の間に微妙な沈黙が訪れる。
その沈黙に耐えきれず、最初に口を開いたのは、コエンマだった。
コ「柚貴、灯里は、何故、わしらを信用してくれんのじゃ?」
柚「難しい質問ですね…。ん〜、こればかりは、いくらコエンマ様でも、俺の口からは、言えないですね。灯里本人が心を開いてくれなければ…。俺が簡単に『それじゃあ』と言って良い問題ではないので。すみません。」
コ「分かった!済まなかったな。」
柚「いえ。もう用はないんですか?それでは、ちょっと、灯里の様子が心配なので、様子を見てきます。」
コ「あ、そうじゃ!柚貴。」
柚「何ですか?」
コ「灯里を、『霊界探偵』に任命する。その事を灯里に、伝えてくれ。」
柚「了解しました!伝えておきま〜す!って、ええぇ〜!!霊界探偵ぃ〜!?灯里がっスかァ!?」
キーン!!!
クラクラクラ。
ドサッ。
コエンマの両目や頭には、星が飛んでいる。
柚貴の大声を耳元で聞いた為、じっと、椅子に座っていられず、落ちてしまった。
コ「ゆ、柚、貴、そなた、わざと、じゃ、ろう?」
柚「誰がわざとそんな声を出すんスか!!」
コ「“霊界探偵”と言っても、名前ばかりのものじゃ。アヤツが心から信頼出来る者を助手に付けたいのじゃ。スマンが、柚貴、引き受けてはくれまいか?」
柚「ハァ=3。いつか、こんな日が来るのではないかと、心の何処かで思っていましたが、こんなにも早く来るとは…。分ッかりましたぁ!この柚貴が、責任を持って、灯里のフォローをしますので、ご安心下さいッス!」
コ「いやいや、フォローはしなくて良い。」
柚「え"。だって、“霊界探偵”って、」
コ「確かに、ワシは、そう言ったが、『
柚「え。何で、名前だけなんスか?」
コ「あやつは、何だかんだ言いながら結局優しいんじゃ。そこに付け込む様な事は、したくないんじゃ。だから、柚貴、お主を灯里に付けたんじゃ。」
柚「分かりました。では、その旨、灯里に伝えておきます。失礼します。」
パタパタ。
執務室には、コエンマ1人が残された。
タッタッタッ。
柚「ハッハッ。でも、灯里が名前だけの霊界探偵に任命されるなんて、凄い事だな〜!喜びそうだ!」
ガッ。
ドサッ。
柚「痛いなぁ!誰だよ、ンな事する奴ァ!?」
灯「悪いな、あたしだ。霊界探偵なんぞ、誰が好き好んでなるか!馬鹿馬鹿しい。」
柚「灯里!?何で
――1-Bの教室にて
ザワザワ、ザワザワ。
女子生徒1「ねぇねぇ、聞いた?」
女子生徒2「え〜?何を〜?」
女子生徒1・3「「今日から、転校生がこのクラスに来るんだって〜!!」」
そんな女子生徒たちの噂話を、先程、霊界で話題になっていた、『蔵馬』こと“南野 秀一”は、読書をしながら静かに内容を聞いていた。
秀(――あの子は、1度亡くなって、無事に、帰って来れたんだろうか。12年前の今日の事を、オレは、1日たりとも忘れた事はなかった。今頃、何処で、どうしてるのかな…。)
綺麗な翡翠色に憂いを帯びた瞳を静かに閉じようとした時、秀一の肩を誰かが叩いた。
優「よっ!南野。」
ポンと秀一の肩を叩いたのは、クラスメイトの『
彼は、秀一と学年1位、2位を争う仲で、格別仲が良い訳でも、悪い訳でもない。付かず離れずと言った所だろうか。
秀「あぁ、おはよう、海藤。」
優「どうしたんだ?元気がないように見えるが…。」
秀「!あぁ、大丈夫だよ。
優「ふぅ〜ん。まぁ、話だけなら、幾らでも聞いてやるからな!」
秀一は、優のその一言で、肩の荷が降り、少し口元を緩めた。決して口には出さないが、彼なりの『ありがとう』なのだ。
そんな秀一に、優は気分を害する事はなかった。
むしろ、『素顔を見れて良かった』と優は、思っているはずだ。周りから見ると、お互い、言葉数は少ない為、異様な光景に見えるだろうが、2人の間には、意思疎通が成り立つため、この際、良しとしよう。
パカッ。
ゴソゴソ、パサッ。
秀「あ、そういえば、海藤。」
ガタ。ドサッ。
ゴソゴソ、ドサッ。
優「ん?何だ?」
秀「さっき女子たちが『転校生が来る!』と騒いでいたけど、本当か?」コソ。
優「あぁ!本当だよ!チラッと見ただけなんだが、可愛い
秀「へぇ。どんな
優「ん〜と、確か…、マリンブルーの瞳に、淡い紫色で少しウェーブがかった長い髪に、キラキラ光る、カチューシャをしていたよ。見た目は…、ん〜。、多分、小学生ぐらいだったかな…。」
秀「…早く、会いたいな。その娘に――。」
優「あ、でも…。」
秀「?どうした。」
優「その娘、自分だけしか信じていないようでな。俺、さっき職員室に用事があって行ったんだが、狼みたいに、かなり鋭い瞳つきだったから、お前も気を付けろよ。」
秀「――ああ、分かった。」
と、口では言ったものの、秀一には誰なのか既に
秀(その少女は、恐らく、紫音の生まれ変わりだろう。あの娘は、当時の
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