文維くんのこいびと

 ハッキリない息子に焦れたのか、それをもどかしく思った包夫人が文維を押し退けて前に出て来た。

「どうして煜瑾ちゃんがあんなに小さな子供になっているのに、あなたたちは平気なの?」
「え?」

 包夫人の指摘に、むしろ茅執事は驚いたようだった。

「は?」

 茅執事の態度に、理性的なはずの文維はまたも混乱する。
 そんな文維たちに、茅執事はようやく得心したような顔になった。

「ああ、煜瑾坊ちゃまが小さくなられた理由をご存知ないのですね」
「ええ!理由?」

 目の前の非科学的な現象に対し、こうも唐家の人間が平然としているのは、この現象を受け入れ、当然のことだと認識しているようだ。
 包親子は愕然としているが、茅執事はむしろ理解できないと言った冷ややかな態度だ。

「まさか、煜瑾が子供に戻ったことに驚いているのかね?」

 前を歩いていた唐煜瓔が、それに気付き、呆れたように振り返って言った。

「どうしたの、煜瓔お兄ちゃま?」

 大人たちのぎこちない空気を察したのか、煜瑾が不思議そうに兄の顔を覗き込んだ。

「ああ、煜瑾。文維先生は、お前がこんなに可愛らしい姿になったことをビックリしているようだよ」
「ふふふ…」

 兄・煜瓔の言葉に、煜瑾は面白そうに笑った。

「ど、どういうことなんですか…?」

 論理的に破綻した「現実」に、精密な知能を持つ文維は思考停止してしまう。

「そうか、一緒に暮らしていて、こんなことも知らなかったのか」

 少し意地悪い笑みを浮かべて、唐煜瓔はカワイイ煜瑾ちゃんに頬ずりした。





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