文維くんのこいびと

 唐家の広々とした食堂で、それぞれ与えられた席に着いた。
 正面の主席に唐煜瓔が座る。その右側に、わざわざ用意された子供用の椅子に座った煜瑾、その隣に恭安楽が付き添うように座った。

「文維おにいちゃま~」

 向かい側に座った文維に、煜瑾が甘えるように声を掛けた。大好きな文維を前に、嬉しくてならないという表情が、この上なく愛らしい。

「食事にしましょう」

 唐煜瓔の一言で、淡々と夕食が始まった。
 だが、その何でもない日常感に、包親子は戸惑いしか感じない。

「ところで…、煜瓔さん?」
「なんですか、お義母さま?」

 煜瑾と文維の関係に影響され、唐煜瓔も親身になって接する恭安楽を「母」と呼ぶようになっていた。

「私たちの疑問には、いつ答えていただけるのかしら?」

 動揺を隠しつつ、愛想良く、それでもどこか逸らせない圧力を感じさせつつ、包夫人は唐煜瓔に迫った。

「疑問?」

 愛くるしい煜瑾を、穏やかな眼差しで見守っていた唐煜瓔が、優しい笑顔を浮かべたまま、恭安楽の真剣な顔を見返した。
 その美貌に、一瞬、包夫人もウットリするが、慌てて我に返った。

「どうして煜瑾ちゃんが、こんな姿になってしまったの?」

 自分の話をしていることに気付いたのか、煜瑾は包夫人の顔を見上げ、嬉しそうにニッコリした。

「ああ、この現象に立ち会うのは、初めてなのですね」

 あまりにも落ち着き払った唐煜瓔に、これが当たり前なのかと包親子は錯覚しそうだった。

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