肉食系女子
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
政宗君のお誘いで、春休みを利用して彼の御屋敷に三泊四日ほどお泊りさせて頂くことになった。
「泊まりだったら、普段見られない小十郎が拝み放題だぜ?悪くない話だろ 」
だって。こんなウマイ話あるか、いやない…!何か裏があるんじゃないかと思ってよくよく話を聞いてみたところ、「あんたには普段色々と世話になってるからな。」だって。せ、世話…?したかなわたし…。まぁなんかよく分かんないけど取り敢えず政宗君グッジョブ!分かるね君!いいぜ乗ってやるぜその話!ってことでわたしは二つ返事で政宗君の提案を了解した。
で、代わりといってはなんだけど、泊まらせてもらっている間は掃除洗濯などなど家事全般を手伝わせて頂くことにした。政宗君の御屋敷は男の人が多いので、洗濯一つにつけてもかなりの量になってしまうんだそうだ。わたしなんかでいいのなら少しでも力になれればいいと思い、そう申し出た。…え?下心?いや、いやいやいや別に片倉さんとの接点を増やしたいとか一緒に家事に勤しみたいとかそんなんじゃな……いよ……ないないない。うん。ない。
…さてさて。
そんなこんなであれから一週間が経ちました。今日がその約束の日。一日中そわそわドキドキ落ち着かない状態で浮き足立ったまま授業に臨み、放課後になって政宗君に言われたとおり学校の裏門で片倉さんの車を待ちます。当の政宗君はというと、なにやら部活?か何かがあるらしくて一緒に帰れないとのこと。先に家に向かっていてくれと伝えられた。桜の木の下でぼんやりと片倉さんを待ちつつ、ここでわたしはハッと一つ大事なことに気が付いた。…もしかして?もしかすると?しょ、初っぱなから片倉さんと二人きり…!?なのでは!?ええええまじかまじか、どどどどうしよう何話そう!そんなこと全っ然考えてなかった!と、今更ながら私は自分の用意の悪さに愕然とした。片倉さんって大人の方だからあんまり馬鹿っぽい話はしないほうがいいんだろうな…。え、でもわたし大人っぽい話とか知らないよ!そもそも大人っぽい話ってなんだ!?株価とか?世界の紛争についてとか?ユネスコ?ユニセフ?人口衛星?はやぶさ?あああもうどうしよう…!一人パニックに陥り頭を抱えていると、トントンと不意に誰かに肩を叩かれた。…ん?誰だろう?なんて俯かせていた顔を上げると、
「すみません、みょうじさんでいらっしゃいますか?」
「ぬあぁっ!!?」
「?(ぬあ?)」
「か、か、かかかかかた、カタクラさんっ!!!?」
「…は?」
き、きたぁああああ!!!!来ました来ました、来てしまいました生片倉さんです!!!!待ちに待った片倉さん!!あああああうわぁああ肩トントンされちゃったよ何これどうしようこの服一生洗濯しない…!!!
「あの…?」
ああっ!その眉間に寄せられた皺にきゅんっ!!
「(大丈夫かこいつ…) あの、みょうじさんですよね?」
「はいっ、みょうじなまえです!政宗君にはいつも仲良くしてもらっています!!」
「…そうですか。」
「(ふわぁあああ笑ったぁあああ!!!!!!)は、はいいいいいっっ!!」
駄目だ、もう駄目だ、何コレときめきすぎて死にそう…
この人存在がもはや兵器だよ…新手のテロだよこれ…
そんな感じで片倉さんとかなり心臓に悪いご対面を済まし、興奮冷めやらないまま彼の運転する車に乗せて頂くことになりました。助手席はなんとなく気が引けたので(多分あの場所は政宗君の席なんだろうなと思ったのだ)、ここはおとなしく片倉さんの斜め後ろ、後部座席に座ることにした。ツルツルピカピカの黒い車体。ドアを開けた途端ふわっと新車の匂いがした。なるべく床を汚さないように足を浮かしさっさと椅子に腰掛けると思いの外体が椅子に沈んで驚いた。な、なんだこりゃふっかふかだ!椅子の表面は触ると冷たいし革のような堅い感じがするのだけど、いざ座ってみるとお布団…とまではいかないけれどそれくらいふっかふかだったのだ。社長室の椅子ってこんなかんじだろうか。ちなみに床はベルベットのような、うっとりするほど触り心地が滑らかな生地だ。豪華すぎでしょっ!もふもふと椅子の上で体の位置を直しつつ、ふ、と手元から顔を上げ前を向くと丁度片倉さんの綺麗なうなじが目に入った。う、うわぁああ無防備ですね片倉さん突いていいですか!えいっ☆とかっつって!何すんだコノヤロウやったななまえ仕返しだっ!うひゃあちょっとなにすんですか片倉さんやめてくださいよぉくすぐったい!そーれアハハウフフ…
「…シートベルトはしめましたか?」
「は、はいっ?!」
片倉さんの質問に、慌てて現実へと思考を戻す。
え?!何々なんですか!?うわぁ話聞いてなかったごめんなさいすみません!うなじに夢中でしたごめんなさい!
何を言われたんだか分からずあわててわたわたとしていると、バックミラー越しに苦笑する片倉さんとばっちり目が合った。
(なッ……………)
ズッキューーン
「シートベルトはそこで…みょうじさん?」
「は、はいっだ、大丈夫です…分かります…」
シートベルトを締める振りして慌て下を向く。
あああああ胸が痛いっ…!もはやキュンキュン通り越して胸がギュンギュンする…
「…いいですか?車出しますね。」
「はい」
私の返事を聞くと片倉さんがゆっくりと車を走らせ始めた。
片倉さんハンドル握る姿も超絶カッコいいんですけど…。ええええ弱点なしだよこの人…。茶色いスーツの広い背中とか運転に集中する横顔とかそのなにもかもが美しく、完璧だ。否の付けどころがない。洗練されているって言葉がぴったりな感じ。大人の魅力ってこういうことをいうのかな。
今私の視界に入っている全てが、普段だったら絶対に見ることが出来ないものだ。本当に政宗君には感謝してもし尽くせないよ。政宗君がいなかったらわたし、片倉さんとの接点なんてほとんどないに等しいもんね…。…よし、決めた。これからは伊達君のこと、敬意をもって筆頭と呼ぶことにしよう、そうしよう。なんか格好いいしね。ありがとうごぜぇやす筆頭、帰ったら肩揉ませて下せぇ!心の中でひたすら政宗君に土下座しつつ、わたしは口元が勝手に緩むのを押さえることにただただ必死だった。
2011.1.30
------------
1/5ページ