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彼らと僕らの過ごす日々

敵対マフィアに囲まれて、それでも俺は余裕と、多少の挑発を込めた笑みを浮かべた。背中合わせには幼馴染の熱。そいつが愛用のアーチェリーを手にしているのを知って、だからこそ俺は笑える。
「……G」
ひそりと名を呼べば、幼馴染も何だ、と緊張感の足りない普段のトーンで返事を返した。相変わらずだな、と思わず笑みが深まる。
「帰ったらお前のパスタが食べたい」
「ああ、作ってやるから今は大人しくしてろ」
Gの言うことも尤もだ。だが俺はいい加減にこの硬直状態に飽きてきていた。救援は無いし向こうは動かない。俺達の処遇を考えあぐねているのか、ただ手を焼いているだけか。まあどうでもいいか。
段々と俺の思考はGの作るパスタに傾いていく。
「……トマトがいい」
Gが作りおいているお手製ソースのパスタ。それにボンゴレか烏賊か入れて、食べたい。小さい声で呆れ声の返事が降る。
「ソース無えぞ、こないだ使いきった。オイルで我慢しろ」
「イヤだ」
「お前な……ペペロンチーノも好物だろうが」
確かにそう、というかGが作るものは大体何でも旨い。が、生憎と俺の気分がそれを良しとしなかった。
「……今はトマトの気分だ」
「嫌だぜ、帰ってから煮込むとか」
「食べたい」
こういう時。何だかんだ言って、結局のところGは俺に甘い。溜息の気配に俺は内心ほくそ笑んだ。陥落は容易だ。周りの奴らより、ずっと。
「…………市場が閉まる前に片づいたら考えてやる」
「よし」
やる気がでた。もう向こうのことなど気にせずさっさと終わらせて皆の待つ場所に帰ろう。
大体俺達に不備はないんだ。奴らの隠しアジトには最近戦闘に餓え気味のアラウディを遣ったし、うちのアジトには雨月もナックルもランポウもいる。スペードは何してるか分からないが、まあ今回の騒動を省みると手出しはしないだろう。奴は意外に面倒事を嫌う。
「いくぞ、」
「……ああ」
同時に踏み出す。背中の温もりが離れる。けれど、不安などない。
炎を宿す拳を振り上げ、俺は笑顔で言ってやった。
「生憎、次の予定が詰まっていてな。お前達に構う暇はない」
さあ、今晩はおいしいトマトのパスタだ。
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