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ぐんじんかぞく。

 バイパーにより「コロネロとラルの所に子供がいた」という情報がアルコバレーノ中に撒き散らされた翌日。
 コロネロとラルのもとにはさっそく、パイパーにスカル、風が押し掛けていた。三人はベビーベッドを取り囲み、三者三様の反応を見せながら、すやすや眠る綱吉を見つめている。
「マジだった……」
 呆然、といった様子で呟いたスカルに、マーモンはむっとして言い返す。
「何、スカル。僕の情報を疑ってたの?」
「突然あんな事言われて信じるほうが難しいっつーの!」
 スカルの反応も当然と言える、とコロネロは騒ぐ客人を見ながら思った。大体彼自身もまだ事情をはっきりと飲み込んでいない。
 まじまじと綱吉を見ていた風は、ふとラルを見て柔らかく微笑んだ。
「可愛い子ですね。名前は?」
「綱吉だ」
「ツナヨシ……いい名ですね」
 にこ、と風は笑みを深くする。それを見ながらコロネロはふと違和感に気付いた。
「そういや、リボーンがいねえなコラ」
「ヴェルデとルーチェも、どうしたのでしょうね」
 風が同意して、集まらなかったアルコバレーノの名を挙げる。情報はやったんだけどね。そう、情報源のバイパーは言った。
「ルーチェは分からないけど、ヴェルデは研究にかかりっきりでメール見てないんじゃない?」
 しかし、こういう騒ぎに真っ先に飛んでくる筈のリボーンが姿を見せないのは、あまりに珍しいことだ。
「リボーンはどうせすぐ来るだろう」
 噂をすれば、ということか。そうラルが口にした途端、ドアが開く音とかすかな人間の気配。すぐに漆黒のスーツを纏ったリボーンが姿を見せた。
「よお。――って、意外と集合してんな」
「来たか」
「お久しぶりですリボーン」
「遅かったなコラ」
「情報が行ってないと思ったよ」
 それぞれが口々に出迎えの言葉を黒衣の男に投げつける。おう、と軽い返事を返し、リボーンは軽く首を傾けて言葉を投げた。
「で、てめえは無視かスカル」
 一人だけ、相変わらずベビーベッド、その中の綱吉を見つめていたスカルは、その呼びかけに振り向きぼそりと呟いた。
「…………おかしくねえ?」
「どうした?」
「どうやっても計算が……合わない」
 ピアスだらけの口元を曲げて、彼は困ったようにラルを見る。
「三ヶ月前姐さんに会ったけど、その時、子供がいるようには……」
「だろうなコラ」
 そんな覚えはコロネロにだって無い。
「では、その子は……?」
  風が不思議そうに問う。するとラルは断言した。
「うちの子だ」
 ばっと、四人の視線がコロネロに集中する。リボーンは少しだけ楽しげに。他の三人は、訝しげに。それにざくざくと刺されながら、コロネロは溜息混じりに答えた。
「よく分からねえが、確かにうちの子だコラ」
 今更突き放すこともできない。それにコロネロはあの赤子の笑顔に絆されてしまった自分に、気付いてしまっていた。
 ふ、とリボーンが笑う。彼はベビーベッドを覗き込んで綱吉に話しかけた。
「よかったなツナ、ちゃんとパパに認知してもらえて」
「どういう事だコラ」
「重要な問題だぞ。てめえがツナの事認めねえと、今以上に話がややこしくなる」
 そこでコロネロははたと気付く。ラルが風に聞かれ綱吉の名を口にした時、リボーンはまだこの場にいなかった。
けれど、彼は綱吉の名前を知っている。
「…………何でツナの名前…」
 戸惑いがちにコロネロが聞けば、リボーンはラルに視線を流して問いかけた。
「なんだラル、まだ説明してなかったのか?」
「一度に終わらせようと思ってな」
 ラルの答えに、リボーンは何故か同情の眼差しをコロネロに向けた。
「……なかなか困った状況に置かれてたんだな、てめえ」
 なるようになれ。コロネロは若干投げやりな事を思いながら、答える。
「らしいな、コラ」
「……なら、種明かしだ」
 そう言ったラルの声に、ばらばらだった視線が彼女に集まる。
 何を話すつもりなのか、切れ長の瞳には覚悟の色が灯っている。すう、と彼女は一度空気を吸い、言った。
「まず前提の話だ。先月、門外顧問に襲撃があった」
 唐突に突きつけられた前置き。その内容に、全員に緊張が走る。コロネロは驚きに目を見開き聞き返した。
「門外顧問に、襲撃?……聞いたことねえぞコラ」
「外部には漏らしてねえからな」
「知ってるよ、それ」
 答えたリボーンに口を挟んだバイパーは、そういえばヴァリアーの一員。大きく括ってしまえばボンゴレファミリーの一種でもある。リボーンもどうやら事情を知っているらしい。ボンゴレと彼の濃い関係を考えればそれは不思議ではなかった。
「確か門外顧問のトップが襲撃されて、その妻子が殺され――」
 ぴたり、バイパーが言いかけて固まる。数秒の躊躇いの後、バイパーはラルに問いかけた。
「ラル……」
「何だ」
「まさかその子、」
 再びの躊躇い。しかしそれは一瞬で、彼は押し出すように言葉を続けた。
「その子、件の門外顧問とこの実子」
「……そうだ」
 はっきりとした、肯定。
 バイパーは言葉を失ってベビーベッドを振り返る。コロネロはあっけに取られた様子でラルを見つめ、ボンゴレにあまり詳しくないスカルと風は目を合わせ困惑の様子を見せる。唯一、リボーンは満足そうな笑みを浮かべて言った。
「つーことはヴァリアーもまだ知らねえんだな。奴等も騙せてんなら、上出来だぞ」
 ――騙す。
 その言葉に敏感に反応して、バイパーはまたラルに視線を戻した。
「つまりどっちも嘘だって、事?」
「いや。……奈々は助からなかった」
 眉を僅かに下げて、ラルは答える。その言葉の端に滲むのは悲しさであり、悔しさでもあるようだ。僅かに手を握り締め、彼女は言葉を続ける。
「…………それで、俺が引き取ることになった。そう、頼まれた」
「アルコバレーノの子供ってしときゃ箔も付くしな。もしもの護衛代わりにもなる」
 取ってつけたような理由をリボーンが足す。けれどそういう打算もあったほうがいいかもしれないと、話を聞きながら漠然とコロネロは思った。
 不思議と、守りたいと思った。その訳はまだ見つからなかった。
 反論が出ないのを了解と取ったのか、ラルはまだ起きない綱吉を抱き上げ微かに笑う。
「――という事で、俺とコロネロの息子の綱吉だ。これからよろしく頼む」
「……宜しくなコラ」
 そう言った夫婦に、アルコバレーノ達はしっかりと頷いた。


 そういうわけで。
 身内――アルコバレーノ内で子供はまだかと散々からかわれていた夫婦に、子供ができた。
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