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ふたつの霧と空色の王様

骸もクロームも寝ちゃって、一人で書類を片づけて、もう真夜中。気晴らしに執務机の引き出しに手を突っ込んでみたら、懐かしいものが出てきた。
「わあ、」
あんまり騒ぐと、獄寺君辺りが飛び込んできそうで、叫び出しそうな衝動を抑える。デスクライトの光に翳してそれを見て思わず目が細くなってしまう。
それは、ボンゴレに来てすぐーーまだ二人で霧の守護者を名乗る前の、骸とクロームを写した写真だった。
「なんか、今よりもほそいしちっちゃいなあ。……っていうか」
まじまじと、写真の中の二人を見て。違うなあと思ってしまった。
今の二人とはずいぶん違う、あのころのふたり。
なんだか懐かしくなって、俺は肘をついてぼんやりと昔を辿った。


あのころ。
骸は、とにかく俺のことを信用してくれなかった。マフィアなんて嫌いですって言って色違いの目で俺を睨んで、最初は話もしてくれなかった。
クロームは、今もまだ引っ込み思案なところがあるけど、それよりもおびえが強くて、いっつも骸の後ろに隠れてすぐ泣いてた。(それで骸が怒った)
術者ってこともあって守護者の皆も警戒するし、その辺わかってて骸は皆に喧嘩をふっかけるし。

「あなたは、僕達をどうするのですか」

硬くこわばった骸の声がふっと蘇った。クロームを背にかばって(この辺は今も同じだ)、刺すような視線で俺を見上げて、そんなことを聞かれた。

「何に、使いますか」

拒絶と、俺を試すような物言いだった。答えによっては三叉槍が飛び出しそうだな、とか思った気がする。

「使ったりしない。俺は、お前達を物だとは思ったことない」
「じゃあ、何で拾ったりしたんです?」

呆気にとられたのを、まだ覚えてる。
だって当たり前じゃないか。ちっちゃい子がふたりっきりで、家も親もないって言って。クロームはちょっと衰弱してたし骸だってやせっぽっちだった。
ほとんど衝動的に二人を連れて帰ってたような気がする。

「だって、あのままだったらお前達が危ないだろ?」

そうこたえたら。骸の色違いの目がぱちぱち瞬いて、ふっと和らいだ。

「馬鹿ですね、あなた。マフィアのボスの癖に」

そのとき初めて骸が笑って、ああやっぱりこいつも可愛いなあって思った。
そこから、少しずつ距離を埋めてった。


記憶の海から浮かび上がる。
べたりと堅い机に頭をひっつけて、俺は唸った。どうしよう。今無性に骸とクローム抱っこしたい。すっげーいとしい。
けど寝てる二人を起こすのは可哀想だ。だってあの子達、まだまだ成長期だし。睡眠時間はたっぷり取らせてあげたい。
「……寝顔くらいなら…いいかな」
夜中まで書類やったご褒美にそれくらいやったっていいだろう。起きあがってできあがった書類束を纏めてると、ふと部屋の扉が叩かれた。
こんな時間に誰だろう。リボーンか、夜勤の誰かか?
「どうぞ」
返事に開いた扉から滑り込んできたのは、パジャマに上着を羽織っただけの骸とクロームだった。
「こんばんわ、ボンゴレ」
「おしごとちゅうごめんね、ぼす」
「仕事はもうすぐ終わるけど……どうしたの、二人とも」
机から離れて近づくと、二人はぱっと俺の足に抱きついてきた。どうしたんだろ、今日はやけに甘えただ。とりあえず、俺はちっちゃいふたつの頭を撫でてみる。
「おきちゃって、ねむれなくなったの」
「クロームの夢見が悪くて。僕もそれに引きずられてしまいました」
それは大変だ。けど、そういう時に頼ってくるのが俺って言うのは、なんだか嬉しい。
「そっか。じゃあ、あとちょっとだけで終わるから、それからホットミルク飲んで、三人で寝ような」
「……うん」
こくんと、クロームが頷く。骸も文句言わないでいる。ちょっと待っててな、と二人をソファに座らせて、俺は万年筆を走らせた。俺って素直だからこういうときはすらすらペンが動く。
最後の書類にサインをして投げるようにペンを置くまでに数分もかからなかった。
「おまたせ………あ」
眠さを押してここまできてたのか、二人は身を寄せあって目を閉じていた。すうすうと寝息がふたつ、重なって聞こえる。
「寝ちゃったか」
俺は苦笑して、二人を抱き上げた。俺の部屋に連れてって三人で眠ろう。そうしたらきっと、幸せな夢しか見れないから。
可愛いふたりの霧の守護者は、ぽかぽかと暖かかった。
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