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彼らと僕らの過ごす日々

ジョットが見当たらない。そんな時、探しに向かうのは大抵、右腕たる嵐の守護者だった。
そうして彼は今日も書類からエスケープしたボスを探す。

「どこ行きやがったあの阿呆…」

幾つ目かの扉を開けて、Gは探し人を見つけた。彼は薄暗い部屋に佇むジョットの背に声を掛けた。

「どうしたジョット。物置なんかに隠れて」

返事も待たずにGはジョットに近づいた。
使わない物ばかり詰め込んだ物置は誰かが入ること自体少なく、そこかしこに埃が積もっている。床を見ればやはり埃が白く積もった中に一人分の足跡。
それを付けた張本人は、厚いカーテンの僅かな隙間から外を眺めているようだった。

「昔はよく隠れ鬼をしたな」

背を向けたまま、彼は唐突に昔話を切り出す。Gはそうだな、と返事した。
幼い頃は空がジョットの瞳と同じ色に染まるまで、飽きもせず遊んだものだった。

「お前が鬼をするとすぐ終わってつまらなかったぜ」

どんな場所に隠れても、すぐにジョットは見つけてしまう。今思えばその頃から超直感が目覚めていたのだろう。
それにジョットは、不服そうに答えた。

「お前もすぐオレを見つけたじゃないか」
「てめえの思考回路は単純だからな」
「お前が無駄に頭が回るだけだ」

皮肉を皮肉で返したジョットが、くるりと振り返る。埃の浮く空気が揺らぐ。
小さく息を吸う音、その一瞬の後に、

「ジョット」

ジョットは楽しげに、自らの名前を呼んだ。
その意味を、理由をただしく理解して、Gは眉を寄せる。
だがジョットは何度もその名をやわらかな声で紡ぎ、にこにこと笑っている。

「ジョット」
「んだよ」

嫌そうに返事をしたGに、ジョットは笑みを深めた。そして、嬉しそうに言う。

「久しぶりに呼んだな」

ジョット――それはドン・ボンゴレの名であり、その右腕の名であった。
同じ名前を持った幼馴染みに、Gはぼそりと釘を指す。

「てめぇ、それ人前で言うんじゃねぇぞ。狂ったと思われるぜ」
「当然だ。オレがそんなへまをするか?」
「…………しねえな」

Gもようやく不機嫌顔を消し、にやりと笑みを返した。
自らの名をGと称するようになってから今まで、ジョットが誰かの前でGのほんとうの名を呼んだことはない。
ボンゴレのファミリーも誰も知らない、自警団を作るよりも前から呼ばれなくなった名前。
不都合も不満もGには無い。この方が色々とやりやすいし、何より混乱しないから楽だった。

「お前だけでいい」

夕焼け色の瞳をじっと見つめ、Gは言う。

「“ジョット”も、俺の名を知ってるのも」

Gにとってその名は、自分を意味するものではない。それは、目の前の幼馴染みであり彼の大空のもの。

「……独り占めだな」

そうして、やはりジョットは嬉しそうに笑みを零すのだった。




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暫く前に唐突に思いついたネタ。流石に無いかな、と自粛してたけど意外と似た考えの方をお見かけして嬉しくなって書いてしまいました。
なんで……カップリング色が出ないんだ…(苦笑)
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