ぐんじんかぞく。
ふと肩に感じた、重みと温もり。
見れば、先程まで隣で資料の紙束を捲っていたラルがそれらを手にしたままコロネロに寄りかかり、寝息を立てていた。
珍しい。目を丸くして、けれどコロネロは彼女を起こさないように気をつけて書類束を奪い、テーブルに置く。
(……さすがに動かしたら起きるよなコラ)
できればベッドか、せめて横にしてやりたいが、ほぼ不可能なミッションだろう。とりあえず今できるのはできるだけ動かないこと。
疲れていたんだろう。ボンゴレ門外顧問と軍の二足の草鞋で働く彼女は、なかなかに多忙だ。家事もある。もしかしたら門外顧問の方の仕事で、ややこしい事になっているのかもしれない。
寝かせておこう。決めて、けれどコロネロはもうひとりの昼寝も気になった。
昼ご飯を食べてすぐに眠そうな顔をした綱吉も、リビングの隣の部屋で眠っていた。だが、どうもさっきからもぞもぞと動いている気配がするのだ。そろそろ起きるのかもしれない。そう考えた矢先、ぺたぺたと足音が立って綱吉がリビングに入ってきた。
子供は昼寝のお供となった黄色い電気鼠のぬいぐるみを抱えて、寝足りないのか眠たげに目を擦る。その見た目と同じく眠たそうなぽやんとした声で、コロネロに聞いてきた。
「おかーさん、ねてる?」
「そうだぞコラ。ツナももうちょい寝るか?」
琥珀色の瞳を溶かしそうに瞬く綱吉に、コロネロはそっと言葉を返す。
こくん、と頷いた綱吉は、とことこコロネロに歩み寄り、彼の膝によじ登った。小さな腕をコロネロの体に回し目を閉じたかと思えば、数秒でことりと頭が落ちる。
ひどくあたたかい。
子供の体温が高いのも理由だろう、けれどそれ以外にもコロネロにあたたかいと思わせる何かがあった。
のどかな昼下がり。聞こえるのはふたりぶんの寝息と、静かな時計の音。目を閉じてコロネロも浅いまどろみに身を任せる。
戦場に身を置いていた頃は、こういう日常を遠いものだと思っていた。
争いは絶えない。終わらない。それは嫌なほど分かっている。
けれど、だからこそ愛するひとたちを、この幸せな空間を守りたいと強く願った。
「…………」
ふと、ぼんやりと閉じていた目を開く。慣れた気配が近づいていた。相変わらずラルも綱吉も起きないから、まあいいかとも思ってコロネロは応対もせず居座りを決め込んだ。
そういう事で勝手に上がりこんできた馴染みのヒットマンに、コロネロは立てた人差し指を口元にあて、静かに、と唇だけで告げた。
「……寝てんのか」
小声で聞くリボーンに、コロネロは僅かに頷いた。
「起こすなよコラ」
「ああ」
言う前に承知していたのだろう。リボーンは気配もなく、そういえばドアを開ける音すら微かだった。くるんと巻いたもみあげに触れて、リボーンはにやりとコロネロをおちょくる。
「どうした、にやけ面さらしてるぞ」
「しあわせだなと思ってんだコラ」
「惚気てんじゃねえ」
嘲笑したリボーンも、どこか優しげに笑んでいた。
見れば、先程まで隣で資料の紙束を捲っていたラルがそれらを手にしたままコロネロに寄りかかり、寝息を立てていた。
珍しい。目を丸くして、けれどコロネロは彼女を起こさないように気をつけて書類束を奪い、テーブルに置く。
(……さすがに動かしたら起きるよなコラ)
できればベッドか、せめて横にしてやりたいが、ほぼ不可能なミッションだろう。とりあえず今できるのはできるだけ動かないこと。
疲れていたんだろう。ボンゴレ門外顧問と軍の二足の草鞋で働く彼女は、なかなかに多忙だ。家事もある。もしかしたら門外顧問の方の仕事で、ややこしい事になっているのかもしれない。
寝かせておこう。決めて、けれどコロネロはもうひとりの昼寝も気になった。
昼ご飯を食べてすぐに眠そうな顔をした綱吉も、リビングの隣の部屋で眠っていた。だが、どうもさっきからもぞもぞと動いている気配がするのだ。そろそろ起きるのかもしれない。そう考えた矢先、ぺたぺたと足音が立って綱吉がリビングに入ってきた。
子供は昼寝のお供となった黄色い電気鼠のぬいぐるみを抱えて、寝足りないのか眠たげに目を擦る。その見た目と同じく眠たそうなぽやんとした声で、コロネロに聞いてきた。
「おかーさん、ねてる?」
「そうだぞコラ。ツナももうちょい寝るか?」
琥珀色の瞳を溶かしそうに瞬く綱吉に、コロネロはそっと言葉を返す。
こくん、と頷いた綱吉は、とことこコロネロに歩み寄り、彼の膝によじ登った。小さな腕をコロネロの体に回し目を閉じたかと思えば、数秒でことりと頭が落ちる。
ひどくあたたかい。
子供の体温が高いのも理由だろう、けれどそれ以外にもコロネロにあたたかいと思わせる何かがあった。
のどかな昼下がり。聞こえるのはふたりぶんの寝息と、静かな時計の音。目を閉じてコロネロも浅いまどろみに身を任せる。
戦場に身を置いていた頃は、こういう日常を遠いものだと思っていた。
争いは絶えない。終わらない。それは嫌なほど分かっている。
けれど、だからこそ愛するひとたちを、この幸せな空間を守りたいと強く願った。
「…………」
ふと、ぼんやりと閉じていた目を開く。慣れた気配が近づいていた。相変わらずラルも綱吉も起きないから、まあいいかとも思ってコロネロは応対もせず居座りを決め込んだ。
そういう事で勝手に上がりこんできた馴染みのヒットマンに、コロネロは立てた人差し指を口元にあて、静かに、と唇だけで告げた。
「……寝てんのか」
小声で聞くリボーンに、コロネロは僅かに頷いた。
「起こすなよコラ」
「ああ」
言う前に承知していたのだろう。リボーンは気配もなく、そういえばドアを開ける音すら微かだった。くるんと巻いたもみあげに触れて、リボーンはにやりとコロネロをおちょくる。
「どうした、にやけ面さらしてるぞ」
「しあわせだなと思ってんだコラ」
「惚気てんじゃねえ」
嘲笑したリボーンも、どこか優しげに笑んでいた。