Ciao,il mio iride
「みーなさーん!おやつの時間ですよー!!」
「ハルちゃんとカップケーキ焼いてきたの」
それぞれスカルとコロネロを腕に抱いたハルと京子が、そう言いながらぱたぱたと研究室に乗り込んでくる。
「もう、こんな時間でしたか」
時計を見て骸は呟いた。いい頃合いですね、眼鏡を外し、彼はそう言う。
「じゃあお茶入れてきますね」
デスクから立ち上がったツナに、手伝うわとクロームも続く。
客用のテーブルにティーセットとカップケーキの籠が並び、それぞれがティーカップやケーキを手に雑談しだしたその時、
ふらりと、雲雀が姿を見せた。
「六道」
聞きたいことがあるんだけど。
そう言い掛けて、雲雀は部屋の状況に口をつぐむ。何か、内密の件を持ってきていたらしかった。
「やっぱり後でいい」
「わかりました」
骸が頷き、あっさりと二人の会話が終わった途端、ハルは籠に入ったカップケーキを差し出して、雲雀に言った。
「雲雀さん!おやついかがですか?」
「…………もらってくよ」
自室で食べるつもりだろうか、クロームが差し出した皿を受け取ると、雲雀はそれにカップケーキをふたつ、乗せた。気付いて、コロネロが訝しげに聞く。
「来てるのか、コラ」
どうやら雲雀の研究室に、来客があるらしい。けれど不思議な事に、雲雀もコロネロもその来客の名を言おうとはしなかった。
「検査。知らなかった?」
頷いたコロネロは、問いかけを続ける。
「どっか悪いのか?」
「単なるデータ集めさ。君達と違ってあまりに情報が足りないからね」
そのやりとりに、ツナは何となく『来客』の正体を予感した。ちら、と横に目をやれば京子が不安そうに雲雀を見ているのが分かり、予感は確信に変わる。
京子は何も言わず、ただ手を膝の上でぎゅうと握り、真剣な様子で雲雀とコロネロの会話を聞いていた。
「じゃあ、僕は戻るから」
皿を手に踵を返した雲雀の背に、コロネロは静止を呼びかける。
「待て、雲雀」
「何?」
「俺も行くぜコラ。顔が見てえ」
「……別に構わないよ」
コロネロと京子の反応、そして何より『来客』が気になって、ツナはひょこと手を上げてアピールする。そして、聞いた。
「雲雀さん、オレも付いてっていいですか?」
「いいけど」
「どうしたんだツナ?」
コロネロに聞かれ、ツナはんー、と悩んで、本心を答えた。
「なんとなく」
「……変わってるなコラ」
そうコロネロは呟いたが、すぐにまあいい、と考えを切り替えた様子で青の瞳をまっすぐ京子に向けた。
「っていう訳だ、京子。ちょっと待たすぜコラ」
「わかった。…………コロネロ君、よろしくね」
眉根を下げて、京子はそれでも笑顔を崩さず言う。
ファルコに掴まりふわりと浮かんだコロネロは、ちいさな手で京子の頭をやさしく叩いた。
「あんま気にすんなコラ」
「……うん。ありがとう」
雲雀の研究室に入ると、そこにはツナの予想通り、ラル・ミルチがいた。彼女はツナとコロネロに驚いたようだったが、すぐに平静に戻る。
「隣、来てたよ」
雲雀が言えば、ラルはだろうな、と言葉を返した。
「コロネロが来ているなら、そういう事だろう」
「それで、お土産」
皿に乗せたカップケーキを差し出せば、ラルは躊躇いながらもそれを受け取る。
すぐにはむはむとそれを頬張りだしたラルに、雲雀は僅かに笑みを浮かべた。
「好物らしいね」
「煩い」
毒づくラルだが、両手でカップケーキを持つ姿では怒気を発しても可愛らしさに打ち消されてしまう。少なくともツナはそう感じた。
「ここにいるって事は検査ってもう終わったのかコラ」
「ああ。今は結果待ちだ」
「多分正常値圏内だよ。特に悪化も見られない」
デスクに置いた書類を捲りながら答えた雲雀にそうか、とコロネロは胸を撫で下ろす。
「ところで、お前はともかく、どうしてツナまで来ているんだ?」
聞いたラルに、コロネロは俺が知りたいと首を傾けながら答えた。
「さあな、なんとなくらしいぜコラ」
「…………」
訝しげな視線がツナに突き刺さる。だって、とツナは弁解した。
「だって最近ラルちゃんに会ってなかったし」
「………………」
「あと、やっぱり……その、気になって」
思わず語尾が小さくなる。黙っていたラルはやがて小さく息を吐いて、ツナに言った。
「お人好し」
「あー、言われたことあるや」
照れたようにツナは笑う。褒めてない、と呆れた様子でラルは言ったが、ツナはあまり気にならなかった。
「でも元気そうでよかった」
にこりと笑顔を向ければ、ラルにも照れが移ったらしい。彼女は僅かに頬を染めてぷいと視線を逸らすと、またカップケーキに口をつけた。
夢を見る。ふわふわ闇に揺られながらツナはリボーンの名を呼んだ。いつもどおりの夢、探せばリボーンの気配があるような気もする。
「リボーン、いるんだろ?」
「ああ。つーか相変わらずだな、てめえは」
闇にリボーンの声が降る。辛辣な、けれどからかいを含む言葉に、ツナは苦笑を返した。
「だって、オレはオレだし」
リボーンが何を指してそう言ったのか、薄々ツナは気付いていた。
「お前が言いたいの、京子ちゃんとラルちゃんの事だろ」
聞かれる前に答えれば、リボーンはほうと感心した様子で言ってくる。
「分かってるじゃねえか」
「だって……気になるじゃないか、仮にも、親子なんだし」
「俺はお前の方が気になるぞ」
リボーンの声に、ツナはぱちりと瞬きして、闇に首を傾けた。リボーンに気になる事をしたなんて、いまいち身に覚えは無い。
「オレ?」
「ああ、妙な奴等と知り合いみてぇじゃねえか」
妙な。ツナ自身としては思い当たる節はないが、おおよそスクアーロかザンザスの事だろう。そう予想を立てて、けれどツナはあえて何も言わない。反対に、リボーンは更に言葉を続ける。
「九代目とも親しいみたいだしな」
「んー……九代目は、オレの恩人だよ」
「……本当に、それだけか?」
「うん」
そうじゃなきゃ、いけないんだ。
続く言葉を飲み込んで、ツナは笑ってみせた。
*****
お人好しとかおせっかいとかいろいろ言われがちなツナさん。
ラルを除くアルコバレーノ、今出てる連中は基本マザーと仲良しみたいです。
ハルと京子が遊びに来る時にお菓子持参なのはなんだかんだ言って日常茶飯事だったりする。
「ハルちゃんとカップケーキ焼いてきたの」
それぞれスカルとコロネロを腕に抱いたハルと京子が、そう言いながらぱたぱたと研究室に乗り込んでくる。
「もう、こんな時間でしたか」
時計を見て骸は呟いた。いい頃合いですね、眼鏡を外し、彼はそう言う。
「じゃあお茶入れてきますね」
デスクから立ち上がったツナに、手伝うわとクロームも続く。
客用のテーブルにティーセットとカップケーキの籠が並び、それぞれがティーカップやケーキを手に雑談しだしたその時、
ふらりと、雲雀が姿を見せた。
「六道」
聞きたいことがあるんだけど。
そう言い掛けて、雲雀は部屋の状況に口をつぐむ。何か、内密の件を持ってきていたらしかった。
「やっぱり後でいい」
「わかりました」
骸が頷き、あっさりと二人の会話が終わった途端、ハルは籠に入ったカップケーキを差し出して、雲雀に言った。
「雲雀さん!おやついかがですか?」
「…………もらってくよ」
自室で食べるつもりだろうか、クロームが差し出した皿を受け取ると、雲雀はそれにカップケーキをふたつ、乗せた。気付いて、コロネロが訝しげに聞く。
「来てるのか、コラ」
どうやら雲雀の研究室に、来客があるらしい。けれど不思議な事に、雲雀もコロネロもその来客の名を言おうとはしなかった。
「検査。知らなかった?」
頷いたコロネロは、問いかけを続ける。
「どっか悪いのか?」
「単なるデータ集めさ。君達と違ってあまりに情報が足りないからね」
そのやりとりに、ツナは何となく『来客』の正体を予感した。ちら、と横に目をやれば京子が不安そうに雲雀を見ているのが分かり、予感は確信に変わる。
京子は何も言わず、ただ手を膝の上でぎゅうと握り、真剣な様子で雲雀とコロネロの会話を聞いていた。
「じゃあ、僕は戻るから」
皿を手に踵を返した雲雀の背に、コロネロは静止を呼びかける。
「待て、雲雀」
「何?」
「俺も行くぜコラ。顔が見てえ」
「……別に構わないよ」
コロネロと京子の反応、そして何より『来客』が気になって、ツナはひょこと手を上げてアピールする。そして、聞いた。
「雲雀さん、オレも付いてっていいですか?」
「いいけど」
「どうしたんだツナ?」
コロネロに聞かれ、ツナはんー、と悩んで、本心を答えた。
「なんとなく」
「……変わってるなコラ」
そうコロネロは呟いたが、すぐにまあいい、と考えを切り替えた様子で青の瞳をまっすぐ京子に向けた。
「っていう訳だ、京子。ちょっと待たすぜコラ」
「わかった。…………コロネロ君、よろしくね」
眉根を下げて、京子はそれでも笑顔を崩さず言う。
ファルコに掴まりふわりと浮かんだコロネロは、ちいさな手で京子の頭をやさしく叩いた。
「あんま気にすんなコラ」
「……うん。ありがとう」
雲雀の研究室に入ると、そこにはツナの予想通り、ラル・ミルチがいた。彼女はツナとコロネロに驚いたようだったが、すぐに平静に戻る。
「隣、来てたよ」
雲雀が言えば、ラルはだろうな、と言葉を返した。
「コロネロが来ているなら、そういう事だろう」
「それで、お土産」
皿に乗せたカップケーキを差し出せば、ラルは躊躇いながらもそれを受け取る。
すぐにはむはむとそれを頬張りだしたラルに、雲雀は僅かに笑みを浮かべた。
「好物らしいね」
「煩い」
毒づくラルだが、両手でカップケーキを持つ姿では怒気を発しても可愛らしさに打ち消されてしまう。少なくともツナはそう感じた。
「ここにいるって事は検査ってもう終わったのかコラ」
「ああ。今は結果待ちだ」
「多分正常値圏内だよ。特に悪化も見られない」
デスクに置いた書類を捲りながら答えた雲雀にそうか、とコロネロは胸を撫で下ろす。
「ところで、お前はともかく、どうしてツナまで来ているんだ?」
聞いたラルに、コロネロは俺が知りたいと首を傾けながら答えた。
「さあな、なんとなくらしいぜコラ」
「…………」
訝しげな視線がツナに突き刺さる。だって、とツナは弁解した。
「だって最近ラルちゃんに会ってなかったし」
「………………」
「あと、やっぱり……その、気になって」
思わず語尾が小さくなる。黙っていたラルはやがて小さく息を吐いて、ツナに言った。
「お人好し」
「あー、言われたことあるや」
照れたようにツナは笑う。褒めてない、と呆れた様子でラルは言ったが、ツナはあまり気にならなかった。
「でも元気そうでよかった」
にこりと笑顔を向ければ、ラルにも照れが移ったらしい。彼女は僅かに頬を染めてぷいと視線を逸らすと、またカップケーキに口をつけた。
夢を見る。ふわふわ闇に揺られながらツナはリボーンの名を呼んだ。いつもどおりの夢、探せばリボーンの気配があるような気もする。
「リボーン、いるんだろ?」
「ああ。つーか相変わらずだな、てめえは」
闇にリボーンの声が降る。辛辣な、けれどからかいを含む言葉に、ツナは苦笑を返した。
「だって、オレはオレだし」
リボーンが何を指してそう言ったのか、薄々ツナは気付いていた。
「お前が言いたいの、京子ちゃんとラルちゃんの事だろ」
聞かれる前に答えれば、リボーンはほうと感心した様子で言ってくる。
「分かってるじゃねえか」
「だって……気になるじゃないか、仮にも、親子なんだし」
「俺はお前の方が気になるぞ」
リボーンの声に、ツナはぱちりと瞬きして、闇に首を傾けた。リボーンに気になる事をしたなんて、いまいち身に覚えは無い。
「オレ?」
「ああ、妙な奴等と知り合いみてぇじゃねえか」
妙な。ツナ自身としては思い当たる節はないが、おおよそスクアーロかザンザスの事だろう。そう予想を立てて、けれどツナはあえて何も言わない。反対に、リボーンは更に言葉を続ける。
「九代目とも親しいみたいだしな」
「んー……九代目は、オレの恩人だよ」
「……本当に、それだけか?」
「うん」
そうじゃなきゃ、いけないんだ。
続く言葉を飲み込んで、ツナは笑ってみせた。
*****
お人好しとかおせっかいとかいろいろ言われがちなツナさん。
ラルを除くアルコバレーノ、今出てる連中は基本マザーと仲良しみたいです。
ハルと京子が遊びに来る時にお菓子持参なのはなんだかんだ言って日常茶飯事だったりする。