◇第四十七話◇躾が必要
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ジャンは、私をベッドの真ん中に座らせると、自分も向き合うように腰を降ろした。
私のことを心配した先輩兵士達から話を聞いたのは、ジャンだけではなかったようで、ハンジさんから、少し早めの休憩を貰ったらしい。
「何かされませんでしたか?」
「え?」
「怪我はねぇみたいっすけど。」
ジャンは、私の首筋を見た後に、手首や腕に触れて、傷がないかを確認し始めた。
てっきり、怒っているのだと思っていた私は、心配しているようなその素振りに安堵する。
「うん、怪我はないよ。大丈夫。」
「どこか触られたりは?」
「してないよ。壁との間に挟まれただけ。」
「そうっすか、ならよかったです。」
ジャンは小さく息を吐くと、私に触れていた手を離した。
だから今度は、私がジャンに訊ねる番だった。
「…怒ってないの?」
私がそう訊ねると、ジャンの片眉が僅かに上がった。
また、ピリッとした空気が放たれたのを感じて、余計なことを聞いてしまったと後悔したけれど、もう遅い。
ジャンは、先輩兵士にした時みたいに、無表情の中で瞳だけに怒りを戻してしまった。
「それは、おとなしくしてろっていう俺の忠告を無視して
他の男にほいほいついていった挙句に、クソみてぇな死ぬ前のお願いってのをされて
ハッキリ断ることすら出来てなかったどうしようもねぇ婚約者に対してってことですか。」
「…ごめん。」
私は目を伏せて謝る。
怒っているどころか、ブチギレているようだ。
でも、私だって、彼を部屋には入れなかったし、ちゃんと断りはしたのだ。
言い返したいことはあったけれど、ジャンの怒りを逆撫でしたくはなかったから、口を噤んだ。
たぶん、その選択は正解だったと思う。
ジャンが、長めの息を吐いた。
素直に謝った私に、少しだけジャンも怒りがおさまったのかもしれない。
「怒るってのはもう何度もやって来ましたけど、
何も意味なかったんで、もうやめました。」
「そっか。それはよか——。」
「昔、聞いたことがあるんですよ。」
「何を?」
私は顔を上げて、首を傾げた。
ジャンはもう、あの静かにブチギレているような顔はしていなかった。
でも、何を考えているのか分からないような表情をしていて、昔聞いたことがあるという話をし始める。
「躾に一番効くのは、痛みらしいんです。」
「躾?」
「何度忠告をしても俺を困らせてばかりのなまえさんには、
躾が必要だと思うんすよね。」
「え、あの…っ。」
ジャンは、私の手首を掴むと、それを軽く捻るような素振りをした。
思わず、痛みを想像してギュッと瞼を閉じた私だったけれど、掴まれた手が本当に捻られることはなかった。
恐る恐る目を開けた私と視線が絡むのを待っていたみたいに、ジャンが言葉を続けた。
「でも、痛みを与えるのは可哀想だし、なまえさんも嫌っすよね。」
「い、嫌…!痛いのは嫌い!!」
私はここぞとばかりに必死に伝えた。
それを分かっていたみたいに、ジャンが薄ら笑い浮かべる。
あぁ、まだ怒ってる———。
私は今さら、気づく。
これはきっと、何かの罠だ。
でも、その何かが分からなくて———。
「痛みの次は何が効くか、分かりますか?」
「んー…、分かんない、けど…。」
「快楽ですよ。」
ジャンがそう言って、私の首筋に触れた。
長い指の爪先に首筋を撫でられて、思わず私は小さく身震いをする。
「ジャン、くすぐったいよ。」
今度は、私の腰の辺りを撫でようとしていたジャンの手を掴んで、困ったように眉尻を下げた。
このまま、冗談だということで流れてしまえばいいというのが本音だ。
でも、掴んだはずの私の手が、呆気なく、捕まえられてしまった。
そして———。
「前に言ったはずですよ。
必要な状況になれば、アンタが泣こうが、喚こうが、俺はヤるって。」
「そ、んなこと…、言われたっけな…。」
「俺を怒らせない方がいいって忠告、
ちゃんと聞いてればよかったのにな。」
ジャンはそれだけ言うと、私の腰を抱き寄せた。
あ、と思ったときにはもう、彼の歯が私の首筋にめり込んでいた。
痛みは与えないと言ったのに、チクリとするその痛みに、私は顔を歪める。
何度か角度を変えながら、首筋に噛みついては、柔らかい舌にくすぐられて、肌を吸われる。
「ん…っ。ジャ、ン…っ、痛い…っ、や…っ。」
痛みと交互にやってくるくすぐったさに、顔が熱くなる。
筋肉質な胸板を押し返せば、思ったよりも簡単に、ジャンは離れて行った。
そして、自分が噛みついていた私の首筋を、最後の仕上げとばかりに撫でた後に、満足気に口の端を上げた。
それを見て、私はホッとしてしまったのだ。
「躾、終わったね。」
分かってる。私は、凄く馬鹿だった。
私のことを心配した先輩兵士達から話を聞いたのは、ジャンだけではなかったようで、ハンジさんから、少し早めの休憩を貰ったらしい。
「何かされませんでしたか?」
「え?」
「怪我はねぇみたいっすけど。」
ジャンは、私の首筋を見た後に、手首や腕に触れて、傷がないかを確認し始めた。
てっきり、怒っているのだと思っていた私は、心配しているようなその素振りに安堵する。
「うん、怪我はないよ。大丈夫。」
「どこか触られたりは?」
「してないよ。壁との間に挟まれただけ。」
「そうっすか、ならよかったです。」
ジャンは小さく息を吐くと、私に触れていた手を離した。
だから今度は、私がジャンに訊ねる番だった。
「…怒ってないの?」
私がそう訊ねると、ジャンの片眉が僅かに上がった。
また、ピリッとした空気が放たれたのを感じて、余計なことを聞いてしまったと後悔したけれど、もう遅い。
ジャンは、先輩兵士にした時みたいに、無表情の中で瞳だけに怒りを戻してしまった。
「それは、おとなしくしてろっていう俺の忠告を無視して
他の男にほいほいついていった挙句に、クソみてぇな死ぬ前のお願いってのをされて
ハッキリ断ることすら出来てなかったどうしようもねぇ婚約者に対してってことですか。」
「…ごめん。」
私は目を伏せて謝る。
怒っているどころか、ブチギレているようだ。
でも、私だって、彼を部屋には入れなかったし、ちゃんと断りはしたのだ。
言い返したいことはあったけれど、ジャンの怒りを逆撫でしたくはなかったから、口を噤んだ。
たぶん、その選択は正解だったと思う。
ジャンが、長めの息を吐いた。
素直に謝った私に、少しだけジャンも怒りがおさまったのかもしれない。
「怒るってのはもう何度もやって来ましたけど、
何も意味なかったんで、もうやめました。」
「そっか。それはよか——。」
「昔、聞いたことがあるんですよ。」
「何を?」
私は顔を上げて、首を傾げた。
ジャンはもう、あの静かにブチギレているような顔はしていなかった。
でも、何を考えているのか分からないような表情をしていて、昔聞いたことがあるという話をし始める。
「躾に一番効くのは、痛みらしいんです。」
「躾?」
「何度忠告をしても俺を困らせてばかりのなまえさんには、
躾が必要だと思うんすよね。」
「え、あの…っ。」
ジャンは、私の手首を掴むと、それを軽く捻るような素振りをした。
思わず、痛みを想像してギュッと瞼を閉じた私だったけれど、掴まれた手が本当に捻られることはなかった。
恐る恐る目を開けた私と視線が絡むのを待っていたみたいに、ジャンが言葉を続けた。
「でも、痛みを与えるのは可哀想だし、なまえさんも嫌っすよね。」
「い、嫌…!痛いのは嫌い!!」
私はここぞとばかりに必死に伝えた。
それを分かっていたみたいに、ジャンが薄ら笑い浮かべる。
あぁ、まだ怒ってる———。
私は今さら、気づく。
これはきっと、何かの罠だ。
でも、その何かが分からなくて———。
「痛みの次は何が効くか、分かりますか?」
「んー…、分かんない、けど…。」
「快楽ですよ。」
ジャンがそう言って、私の首筋に触れた。
長い指の爪先に首筋を撫でられて、思わず私は小さく身震いをする。
「ジャン、くすぐったいよ。」
今度は、私の腰の辺りを撫でようとしていたジャンの手を掴んで、困ったように眉尻を下げた。
このまま、冗談だということで流れてしまえばいいというのが本音だ。
でも、掴んだはずの私の手が、呆気なく、捕まえられてしまった。
そして———。
「前に言ったはずですよ。
必要な状況になれば、アンタが泣こうが、喚こうが、俺はヤるって。」
「そ、んなこと…、言われたっけな…。」
「俺を怒らせない方がいいって忠告、
ちゃんと聞いてればよかったのにな。」
ジャンはそれだけ言うと、私の腰を抱き寄せた。
あ、と思ったときにはもう、彼の歯が私の首筋にめり込んでいた。
痛みは与えないと言ったのに、チクリとするその痛みに、私は顔を歪める。
何度か角度を変えながら、首筋に噛みついては、柔らかい舌にくすぐられて、肌を吸われる。
「ん…っ。ジャ、ン…っ、痛い…っ、や…っ。」
痛みと交互にやってくるくすぐったさに、顔が熱くなる。
筋肉質な胸板を押し返せば、思ったよりも簡単に、ジャンは離れて行った。
そして、自分が噛みついていた私の首筋を、最後の仕上げとばかりに撫でた後に、満足気に口の端を上げた。
それを見て、私はホッとしてしまったのだ。
「躾、終わったね。」
分かってる。私は、凄く馬鹿だった。