◇第四十話◇騎士の手に惹かれる噴水の逢瀬
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普段よりも時間をかけて、1段1段をゆっくりと降りていく。
ドレスの裾を踏んでしまわないように視線は常に下を向いていたけれど、少し前を歩くリヴァイ兵長の姿が見えないわけじゃない。
繋いだ手だけに私の熱のすべてが集まっているみたいだった。
先に階段を降りたリヴァイ兵長が、手を握ったままで後ろを振り向く。
そして、私が、最後の一段を降りきるまで見守る。
それがまるで、本当に、夢の世界のお姫様と騎士みたいで、階段を降りきったときには、厳しい訓練を終えた後と同じくらい心臓がドキドキしていて、疲れていたような気がする。
「ありがとうございました…っ。」
逃げるように手を離してから、頭を下げた。
「いや。」
リヴァイ兵長は小さく首を横に振ろうとして、私を見た。
さっき、離したばかりの手が、また私の元へ戻ってくる。
そうして触れたのは、私の頬だった。
「———そうしてると、本当にお姫様みたいだな。」
リヴァイ兵長の切れ長の三白眼が、私を真っすぐに見る。
まるで本当に、お姫様を慕っている騎士みたいに——。
「な…っ、なな、な、何言ってるんですか…っ。」
慌てて目を反らした私は、綺麗に整列された花壇を、少し早足で抜けて、噴水へ向かう。
頬を両手で覆って「あー、恥ずかしい。」と敢えて口にして繰り返した。
触れた頬が熱くて、まるで、まだリヴァイ兵長に触れられているみたいだった。
だから、噴水に辿り着いた私は、縁に腰を降ろすと、青く光る水に手を伸ばした。
触れるとひんやりと冷たくて、凄く気持ちがよかった。
(そういえば、昨日、ジャンの手が冷たくて気持ち良かったな。)
私の熱が下がったのかを確認するために、ジャンが何度か額に触れた。
熱で魘されていて昨日の記憶はぼんやりとしか残っていないけれど、私に触れるジャンの手がとても冷たくて、気持ちが良かったのを覚えてる。
今頃、ジャンは———。
「綺麗だな。」
噴水を流れる水をぼーっと眺めていたら、リヴァイ兵長がそう言いながら、隣に腰を降ろした。
「はい、とても。まるで、夢の世界に迷い込んだみたいです。
このままずっと、今夜が続けばいいのに。」
私はそう言いながら、水面を指の先で撫でた。
波の線が、幾つもの波紋になってユラユラと揺れていく。
それが、洋館から漏れる明かりに反射して、キラキラと輝いてとても綺麗だった。
「あぁ、そうだな。」
リヴァイ兵長が、あっという間に消えてしまう水面の波紋を見下ろしながら言った。
今夜のパーティーには乗り気ではないようだったから、そんなに楽しんでいたのか、ととても意外だった。
それとも、リヴァイ兵長も、この綺麗な噴水に心を奪われたのだろうか。
夢の世界の騎士のように———。
リヴァイ兵長の方を見ていると、彼は、私がしたのと同じように、噴水に手を伸ばし、水を片手ですくった。
華奢で綺麗な手から、青い水がさらさらと流れ落ちていくのがとても幻想邸に見えて、目が離せない。
全てが流れてしまっても、リヴァイ兵長は、濡れてしまっただけの手をじっと見下ろしていた。
そして、しばらくそうした後、彼は、ゆっくりと私の方を向いた。
真剣な目と視線が重なった。
指の隙間から流れてはキラキラと輝く水よりも綺麗な瞳の色から、目が、離せるわけはなくて———。
絡まった視線に囚われて身動きが取れない私の頬に、リヴァイ兵長の手が触れる。
濡れたばかりの手は冷たくて、また、昨日、私に触れたひんやりと気持ちのいい手を思い出した。
「昨日のこと、覚えてるか?」
リヴァイ兵長がそう訊ねたとき、頬に触れている手が少しだけ動いた。
力が入ったのかもしれない。
ひんやりと気持ちのいい冷たい手が、頬に押しつけられて、圧迫感を覚える。
昨日のことって何だろう———。
そう考える前に、頬を押すくらいに強く触れる冷たい手が、私に何かを思い出させようとする。
そして———。
『好き…。』
不意に、記憶に蘇ったのは、切なくかすれる自分の声だった———。
ドレスの裾を踏んでしまわないように視線は常に下を向いていたけれど、少し前を歩くリヴァイ兵長の姿が見えないわけじゃない。
繋いだ手だけに私の熱のすべてが集まっているみたいだった。
先に階段を降りたリヴァイ兵長が、手を握ったままで後ろを振り向く。
そして、私が、最後の一段を降りきるまで見守る。
それがまるで、本当に、夢の世界のお姫様と騎士みたいで、階段を降りきったときには、厳しい訓練を終えた後と同じくらい心臓がドキドキしていて、疲れていたような気がする。
「ありがとうございました…っ。」
逃げるように手を離してから、頭を下げた。
「いや。」
リヴァイ兵長は小さく首を横に振ろうとして、私を見た。
さっき、離したばかりの手が、また私の元へ戻ってくる。
そうして触れたのは、私の頬だった。
「———そうしてると、本当にお姫様みたいだな。」
リヴァイ兵長の切れ長の三白眼が、私を真っすぐに見る。
まるで本当に、お姫様を慕っている騎士みたいに——。
「な…っ、なな、な、何言ってるんですか…っ。」
慌てて目を反らした私は、綺麗に整列された花壇を、少し早足で抜けて、噴水へ向かう。
頬を両手で覆って「あー、恥ずかしい。」と敢えて口にして繰り返した。
触れた頬が熱くて、まるで、まだリヴァイ兵長に触れられているみたいだった。
だから、噴水に辿り着いた私は、縁に腰を降ろすと、青く光る水に手を伸ばした。
触れるとひんやりと冷たくて、凄く気持ちがよかった。
(そういえば、昨日、ジャンの手が冷たくて気持ち良かったな。)
私の熱が下がったのかを確認するために、ジャンが何度か額に触れた。
熱で魘されていて昨日の記憶はぼんやりとしか残っていないけれど、私に触れるジャンの手がとても冷たくて、気持ちが良かったのを覚えてる。
今頃、ジャンは———。
「綺麗だな。」
噴水を流れる水をぼーっと眺めていたら、リヴァイ兵長がそう言いながら、隣に腰を降ろした。
「はい、とても。まるで、夢の世界に迷い込んだみたいです。
このままずっと、今夜が続けばいいのに。」
私はそう言いながら、水面を指の先で撫でた。
波の線が、幾つもの波紋になってユラユラと揺れていく。
それが、洋館から漏れる明かりに反射して、キラキラと輝いてとても綺麗だった。
「あぁ、そうだな。」
リヴァイ兵長が、あっという間に消えてしまう水面の波紋を見下ろしながら言った。
今夜のパーティーには乗り気ではないようだったから、そんなに楽しんでいたのか、ととても意外だった。
それとも、リヴァイ兵長も、この綺麗な噴水に心を奪われたのだろうか。
夢の世界の騎士のように———。
リヴァイ兵長の方を見ていると、彼は、私がしたのと同じように、噴水に手を伸ばし、水を片手ですくった。
華奢で綺麗な手から、青い水がさらさらと流れ落ちていくのがとても幻想邸に見えて、目が離せない。
全てが流れてしまっても、リヴァイ兵長は、濡れてしまっただけの手をじっと見下ろしていた。
そして、しばらくそうした後、彼は、ゆっくりと私の方を向いた。
真剣な目と視線が重なった。
指の隙間から流れてはキラキラと輝く水よりも綺麗な瞳の色から、目が、離せるわけはなくて———。
絡まった視線に囚われて身動きが取れない私の頬に、リヴァイ兵長の手が触れる。
濡れたばかりの手は冷たくて、また、昨日、私に触れたひんやりと気持ちのいい手を思い出した。
「昨日のこと、覚えてるか?」
リヴァイ兵長がそう訊ねたとき、頬に触れている手が少しだけ動いた。
力が入ったのかもしれない。
ひんやりと気持ちのいい冷たい手が、頬に押しつけられて、圧迫感を覚える。
昨日のことって何だろう———。
そう考える前に、頬を押すくらいに強く触れる冷たい手が、私に何かを思い出させようとする。
そして———。
『好き…。』
不意に、記憶に蘇ったのは、切なくかすれる自分の声だった———。