◇第四十話◇騎士の手に惹かれる噴水の逢瀬
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私に負けず劣らずの妄想好きの貴族の娘達の話は、終わりを迎えそうになかった。
リヴァイ兵長は、相変わらず、不機嫌そうな顔をして紅茶を楽しんでいたし、エレン達も美味しい料理に舌鼓を打ちつつ、食事を終えたら探検をしようと計画を練っているようだった。
風邪が治ってすぐだからなのか、あまり食欲がなかった私は、適当な理由をつけてその輪から早々に抜け出して、行く宛てもなく廊下を彷徨っていた。
そういえば———。
『バルコニーから見える景色もとても素敵ですよ。
騎士様が眠り姫を攫いに来たお城をイメージして、庭園を作ったんです。』
つい数分前、エマが興奮気味に教えてくれた話を思い出して、近くの扉からバルコニーに出た。
そこは、綺麗な装飾彫りをされた白い石造りの柵で囲われていて、ちょっとしたガーデンテーブルを置いてお喋りやお茶を楽しめるほどの広さがあった。
私は、白い石造りの柵に手を添えて、庭園を見下ろした。
庭園には、色とりどりの美しい花達が、とても綺麗に整然と並べられていた。
さすが、お城の花壇というイメージそのものだった。
でも、何よりも私の目と心を奪ったのは、庭園の中央で、美しい花壇を見守るように存在する噴水だ。
下から勢いよく湧き上がり水飛沫を上げるその様は、まるでこの世界で最も大きな花が咲き誇っているかのようだった。
この洋館から漏れた部屋の明かりが、その噴水を照らすから、まるでスポットライトを浴びているようで、その美しさを際立たせていた。
「わぁ…!」
思わず、私からは感嘆の声が上がる。
バルコニーには、階段があって、そこから庭園に直接降りれるようになっていた。
「なまえ、どこへ行くつもりだ。」
早速、庭園へ向かおうとして、私は後ろから声をかけられた。
振り返ると、リヴァイ兵長が、バルコニーの入口で、少し眉を顰めて訝し気にして立っていた。
「リヴァイ兵長もこっちに来て、見てくださいよ!」
「あ?」
満面の笑みの私が、興奮気味に手招きをすると、リヴァイ兵長は訝し気な眉をさらに深く顰めた。
それでも、仕方なくという様子でバルコニーに入ってくると、私の隣にまでやってくる。
「ほら!!凄いでしょう!!お城の庭園ですよ!!」
お花も綺麗なんですけど、噴水がとっても美しくって!!
この世のものとは思えないんです!!」
柵から身を乗り出して、私は興奮気味に伝えた。
この感動を誰かと一緒に共有したかったのだ。
リヴァイ兵長も、庭園を見ると、私が何をしようとしていたのかを理解したようだった。
「これを見に行こうとしてたのか。」
「はい!もっと近くで見たくなって、
その階段から降りようとしてたところなんですよっ。」
私が、満面の笑みで伝えれば、訝し気にしていたリヴァイ兵長の眉間の皴が解けると同時に、クスリと笑われた。
「へぇ、そりゃいいな。」
「でしょう!!リヴァイ兵長も一緒に行きますか?!」
「あぁ、邪魔じゃねぇなら。」
「まさか!リヴァイ兵長が一緒なら、綺麗な景色がもっと綺麗になります!!
よし、そうと決まれば、早く行きましょう!!」
興奮しすぎた私は、余計なことまで口走ってしまったことに気づきもしないで、階段へと走り出そうとした。
でも———。
「待て。」
リヴァイ兵長に腕を掴まれて、私は振り返る。
私の腕を掴んでいたリヴァイ兵長の手は離れたけれど、私をじっと見る彼の目は、離れて行かなかった。
「どうしました?」
私が首を傾げると、リヴァイ兵長は何かを言いかけた後に、一度口を閉じて、もう一度、言い直した。
「———その格好じゃ、危ねぇだろ。
お前は昔からそそっかしいんだ。
絶対に裾を踏んで転げ落ちるに決まってる。」
リヴァイ兵長に指摘されて、私は自分の足元を見下ろした。
ハイヒールを履いている足は、プリンセスラインのドレスに包まれて見えない。
絶対に、絶対に———、ではないけれど、確かにこの格好で階段を降りるのなら、気をつけないといけないなとは思う。
でも———。
「こうすれば大丈夫ですよ。」
ドレスの裾を踏んでしまわないように、私はドレスを両手で摘まみ上げた。
それでも、私の幾つもの過去の失敗を知っているリヴァイ兵長は、信頼してくれなかった。
「ほら、来い。俺が、お前の手を握っててやるから。」
リヴァイ兵長が、私の前に手を差し伸べる。
まるで、王子様が、お姫様をエスコートするみたいに———。
「おい、早く掴め。
——それとも、俺の手は掴めねぇか?」
躊躇う私に、リヴァイ兵長が言う。
私は、慌てて首を横に振った。
ただ驚いて、そして、緊張してしまったのだ。
だって、これはまさに、私が夢の中で思い描いていたお姫様と騎士の初めての逢瀬と全く同じだったから———。
「それじゃ…、お言葉に甘えて。」
私はそう言うと、おずおずと、手を伸ばした。
そして、ゆっくりと、躊躇いがちに、リヴァイ兵長の手に私の手が重なる。
お互いに今夜は白いグローブをつけているから、布に滑るような感触だった。
でも、1枚の布越しに、確かにリヴァイ兵長の熱を感じる。
それにドキッとしてしまったのはきっと、私だけだ。
リヴァイ兵長は、すぐに私の手をギュッと握って、夢の世界へと降りる為の階段へと歩き出した。
リヴァイ兵長は、相変わらず、不機嫌そうな顔をして紅茶を楽しんでいたし、エレン達も美味しい料理に舌鼓を打ちつつ、食事を終えたら探検をしようと計画を練っているようだった。
風邪が治ってすぐだからなのか、あまり食欲がなかった私は、適当な理由をつけてその輪から早々に抜け出して、行く宛てもなく廊下を彷徨っていた。
そういえば———。
『バルコニーから見える景色もとても素敵ですよ。
騎士様が眠り姫を攫いに来たお城をイメージして、庭園を作ったんです。』
つい数分前、エマが興奮気味に教えてくれた話を思い出して、近くの扉からバルコニーに出た。
そこは、綺麗な装飾彫りをされた白い石造りの柵で囲われていて、ちょっとしたガーデンテーブルを置いてお喋りやお茶を楽しめるほどの広さがあった。
私は、白い石造りの柵に手を添えて、庭園を見下ろした。
庭園には、色とりどりの美しい花達が、とても綺麗に整然と並べられていた。
さすが、お城の花壇というイメージそのものだった。
でも、何よりも私の目と心を奪ったのは、庭園の中央で、美しい花壇を見守るように存在する噴水だ。
下から勢いよく湧き上がり水飛沫を上げるその様は、まるでこの世界で最も大きな花が咲き誇っているかのようだった。
この洋館から漏れた部屋の明かりが、その噴水を照らすから、まるでスポットライトを浴びているようで、その美しさを際立たせていた。
「わぁ…!」
思わず、私からは感嘆の声が上がる。
バルコニーには、階段があって、そこから庭園に直接降りれるようになっていた。
「なまえ、どこへ行くつもりだ。」
早速、庭園へ向かおうとして、私は後ろから声をかけられた。
振り返ると、リヴァイ兵長が、バルコニーの入口で、少し眉を顰めて訝し気にして立っていた。
「リヴァイ兵長もこっちに来て、見てくださいよ!」
「あ?」
満面の笑みの私が、興奮気味に手招きをすると、リヴァイ兵長は訝し気な眉をさらに深く顰めた。
それでも、仕方なくという様子でバルコニーに入ってくると、私の隣にまでやってくる。
「ほら!!凄いでしょう!!お城の庭園ですよ!!」
お花も綺麗なんですけど、噴水がとっても美しくって!!
この世のものとは思えないんです!!」
柵から身を乗り出して、私は興奮気味に伝えた。
この感動を誰かと一緒に共有したかったのだ。
リヴァイ兵長も、庭園を見ると、私が何をしようとしていたのかを理解したようだった。
「これを見に行こうとしてたのか。」
「はい!もっと近くで見たくなって、
その階段から降りようとしてたところなんですよっ。」
私が、満面の笑みで伝えれば、訝し気にしていたリヴァイ兵長の眉間の皴が解けると同時に、クスリと笑われた。
「へぇ、そりゃいいな。」
「でしょう!!リヴァイ兵長も一緒に行きますか?!」
「あぁ、邪魔じゃねぇなら。」
「まさか!リヴァイ兵長が一緒なら、綺麗な景色がもっと綺麗になります!!
よし、そうと決まれば、早く行きましょう!!」
興奮しすぎた私は、余計なことまで口走ってしまったことに気づきもしないで、階段へと走り出そうとした。
でも———。
「待て。」
リヴァイ兵長に腕を掴まれて、私は振り返る。
私の腕を掴んでいたリヴァイ兵長の手は離れたけれど、私をじっと見る彼の目は、離れて行かなかった。
「どうしました?」
私が首を傾げると、リヴァイ兵長は何かを言いかけた後に、一度口を閉じて、もう一度、言い直した。
「———その格好じゃ、危ねぇだろ。
お前は昔からそそっかしいんだ。
絶対に裾を踏んで転げ落ちるに決まってる。」
リヴァイ兵長に指摘されて、私は自分の足元を見下ろした。
ハイヒールを履いている足は、プリンセスラインのドレスに包まれて見えない。
絶対に、絶対に———、ではないけれど、確かにこの格好で階段を降りるのなら、気をつけないといけないなとは思う。
でも———。
「こうすれば大丈夫ですよ。」
ドレスの裾を踏んでしまわないように、私はドレスを両手で摘まみ上げた。
それでも、私の幾つもの過去の失敗を知っているリヴァイ兵長は、信頼してくれなかった。
「ほら、来い。俺が、お前の手を握っててやるから。」
リヴァイ兵長が、私の前に手を差し伸べる。
まるで、王子様が、お姫様をエスコートするみたいに———。
「おい、早く掴め。
——それとも、俺の手は掴めねぇか?」
躊躇う私に、リヴァイ兵長が言う。
私は、慌てて首を横に振った。
ただ驚いて、そして、緊張してしまったのだ。
だって、これはまさに、私が夢の中で思い描いていたお姫様と騎士の初めての逢瀬と全く同じだったから———。
「それじゃ…、お言葉に甘えて。」
私はそう言うと、おずおずと、手を伸ばした。
そして、ゆっくりと、躊躇いがちに、リヴァイ兵長の手に私の手が重なる。
お互いに今夜は白いグローブをつけているから、布に滑るような感触だった。
でも、1枚の布越しに、確かにリヴァイ兵長の熱を感じる。
それにドキッとしてしまったのはきっと、私だけだ。
リヴァイ兵長は、すぐに私の手をギュッと握って、夢の世界へと降りる為の階段へと歩き出した。