◇第三十九話◇夢の世界へと誘われて
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「わぁ…!」
リヴァイ兵長にエスコートされて、ゆっくりと馬車から降りた私は、豪華な装飾で華やかに飾られた洋館に感嘆の声を上げた。
トロスト区の端にひっそりと佇んでいた古い洋館は、すっかり改装されていた。
まるで、お城だ。
私達以外の招待客である貴族達は、昼間から仮装パーティーを楽しんでいると聞いている。
洋館からは、音楽と贅沢な夢の世界の雰囲気が漏れて聞こえている。
他の馬車でやってきたペトラ達も馬車から降りると、私と同じように、魔法にでもかかったみたいに、完璧にお城に変身している古い洋館を見上げて驚いた声を上げた。
そこへ、私達の到着を聞いた貴族の娘達が、お城から飛び出してやってきた。
「お待ちしておりました!!」
可愛らしいドレスを纏った若い娘達は、私達を見ると、瞳をキラキラに輝かせた。
「わぁ…!素敵!皆様、素敵過ぎますわ…!
眠り姫と騎士様…!そして戦士の方達…!私の夢の世界の方々が勢揃い…!!」
「まるで、夢の世界へとトリップしてしまったみたい!!」
「どうしよう、私、もう二度と現実の世界は戻れないわ…!
今夜が永遠に続けばいいのに…!」
彼女達は、友人同士で手を取り合うと、私達を見ながら、キャーキャーと盛り上がり始めた。
すると、調査兵団に招待状を送って来た貴族の娘、エマが、何かに気づいたような顔をした。
そして、私を見て訊ねる。
「あれ?ジャン様の姿が見えないのですけれど…?
後からいらっしゃるのでしょうか?」
「あー…、ごめんなさい。
ジャン、熱を出しちゃって…。」
私が申し訳なさそうに言うと、彼女は目を丸くした。
「え!?熱を…!?大丈夫なのですか!?」
「本人は寝てれば治るって言ってるから、大丈夫だよ。
…たぶん。」
私は言いながら、今朝、ベッドの上で見つけたジャンのことを思い出していた。
なぜか上半身裸でベッドの上にいたジャンは、息苦しそうに眉を顰めて、顔を真っ赤にしていた。
声をかけても返事がなくて、触ると凄く熱かった。
熱を計ると尋常ではない高熱で、すぐに医療兵を呼んで診てもらったら、1日中付きっきりの看病で私の風邪がうつったのだろうと言われた。
申し訳なさと、心配で焦る私に、ジャンも、医療兵も、私がそうだったみたいに寝てれば治ると言った。
でも———。
『私、残るよ。』
『大丈夫です、俺が悪いんで。』
『なんで、ジャンは何も悪くないじゃん。
私が風邪をうつしたのに。』
『自分のことしか考えてなかった罰です。
こうなる運命だったんですよ。』
『運命?何のこと?』
『それより、大好きな騎士が待ってますよ。会いたかったんでしょ。
知ってましたよ、最初からずっと。』
『・・・本当に、いいの?』
『俺、もう寝ますね。知ってると思いますけど、喋るのも結構キツいんで。
どうぞ、楽しんできてください。』
ジャンはそう言うと、ベッドの中に潜り込んで、本当に眠ってしまった。
一応、私の部屋の自慢のベッドは、寝込んでいるジャンに独占させている。
あのベッドには、横になるとどんな人でも一瞬で眠りにつかせ、人間をダメにする魔法がかかっている。
だからきっと、ジャンも、熱で苦しくても、それなりに休めるはずだ。
私も1日で風邪が治ってしまったくらいだし———。
「ジャン様の、眠り姫に仕える強面の執事姿も見たかったのですけれど、
熱があるのなら、仕方がないですね。」
「でも、今夜は、眠り姫と騎士様が見られたので、
それだけで満足ですわ。」
「それから、エレン様とエルド様の戦士姿っ!」
「ミカサ様とペトラ様も美しくて、凛々しくて素敵だわ!」
貴族の娘達は、ずらりと並ぶ憧れの調査兵達を目の前にして、またキラキラと瞳を輝かせ始める。
オルオとグンタが、自分達の名前がなかったことに文句を言い始めれば、彼女達が笑って誤魔化す。
すごく楽しそうな彼女達は、光のような速さで、高熱を出して寝込んでいるジャンのことを忘れてしまったようだ。
「さぁ、皆さま、パーティー会場へご案内いたしますので、
こちらへどうぞ。」
彼女達の執事が、私達をお城の中へと誘う。
エレンが、とても自然に腕を出せば、ミカサの細い腕が彼の腕に絡まった。
とても素敵だと思ったのは私だけではなかったみたいで、オルオがそれを真似して、ペトラの名前を呼んだ。
ペトラが、これでもかというほどに可愛い顔を歪めて、ドン引きする。そして、そのまま、オルオを無視して、行ってしまった。
「なら、俺がオルオにエスコートしてもらおうかな。」
エルドがクスクスと笑いながら、オルオの腕に触れる。
「おい、やめろよ!」
「なら俺?」
「クソッ、馬鹿にしやがって!!放しやが…っんが!」
からかわれて本気で怒っているオルオに、グンタまで加わって、彼らは騒がしく洋館へと入っていく。
馬車が動き出した音がして、私は後ろを振り向いた。
馭者に操縦されて、私達を乗せてやって来た馬車が、去っていく。
でも、彼らは、兵舎へ帰るわけじゃない。
パーティーが終わった後にすぐに迎えに来れるように、城の裏に連れていくのだ。
「なまえ、行くぞ。」
リヴァイ兵長に呼ばれて、私は視線を城の方へと戻した。
豪華な装飾で輝くお城へ素敵な戦士達が入っていく。
その後ろで、憧れの騎士が、私を待っていた。
「はいっ!」
ドレスを両手で少し持ち上げた私は、憧れの騎士へ駆け寄る。
「どんなパーティーなんでしょうねっ。楽しみですねっ。」
「そうだな。」
すぐに隣に並んだ私に、リヴァイ兵長が少しだけ微笑んだ気がする。
それは、私が夢を見ているせいだろうか。
それとも、彼は、リヴァイ兵長ではなくて、眠り姫を愛している本物の騎士だからだろうか。
(どっちでもいいか。)
憧れの騎士の隣で頬を緩める。
だって———。
私は今から、夢の世界の住人になるのだ———。
そして、夢の世界を造り上げた彼女達のように、この夢のような夜が永遠に続けばいいと願うのだろう。
だって、隣には、憧れの騎士が本当に存在しているんだもの———。
私の視線を感じたのか、リヴァイ兵長がこちらを見るから、目が合ってしまった。
綺麗な切れ長の三白眼も、いつもとは違う騎士の姿も、素敵すぎて目が眩みそうだった。
素敵なお城に入る前から、ここはもうすでに、夢の世界そのものだった。
リヴァイ兵長にエスコートされて、ゆっくりと馬車から降りた私は、豪華な装飾で華やかに飾られた洋館に感嘆の声を上げた。
トロスト区の端にひっそりと佇んでいた古い洋館は、すっかり改装されていた。
まるで、お城だ。
私達以外の招待客である貴族達は、昼間から仮装パーティーを楽しんでいると聞いている。
洋館からは、音楽と贅沢な夢の世界の雰囲気が漏れて聞こえている。
他の馬車でやってきたペトラ達も馬車から降りると、私と同じように、魔法にでもかかったみたいに、完璧にお城に変身している古い洋館を見上げて驚いた声を上げた。
そこへ、私達の到着を聞いた貴族の娘達が、お城から飛び出してやってきた。
「お待ちしておりました!!」
可愛らしいドレスを纏った若い娘達は、私達を見ると、瞳をキラキラに輝かせた。
「わぁ…!素敵!皆様、素敵過ぎますわ…!
眠り姫と騎士様…!そして戦士の方達…!私の夢の世界の方々が勢揃い…!!」
「まるで、夢の世界へとトリップしてしまったみたい!!」
「どうしよう、私、もう二度と現実の世界は戻れないわ…!
今夜が永遠に続けばいいのに…!」
彼女達は、友人同士で手を取り合うと、私達を見ながら、キャーキャーと盛り上がり始めた。
すると、調査兵団に招待状を送って来た貴族の娘、エマが、何かに気づいたような顔をした。
そして、私を見て訊ねる。
「あれ?ジャン様の姿が見えないのですけれど…?
後からいらっしゃるのでしょうか?」
「あー…、ごめんなさい。
ジャン、熱を出しちゃって…。」
私が申し訳なさそうに言うと、彼女は目を丸くした。
「え!?熱を…!?大丈夫なのですか!?」
「本人は寝てれば治るって言ってるから、大丈夫だよ。
…たぶん。」
私は言いながら、今朝、ベッドの上で見つけたジャンのことを思い出していた。
なぜか上半身裸でベッドの上にいたジャンは、息苦しそうに眉を顰めて、顔を真っ赤にしていた。
声をかけても返事がなくて、触ると凄く熱かった。
熱を計ると尋常ではない高熱で、すぐに医療兵を呼んで診てもらったら、1日中付きっきりの看病で私の風邪がうつったのだろうと言われた。
申し訳なさと、心配で焦る私に、ジャンも、医療兵も、私がそうだったみたいに寝てれば治ると言った。
でも———。
『私、残るよ。』
『大丈夫です、俺が悪いんで。』
『なんで、ジャンは何も悪くないじゃん。
私が風邪をうつしたのに。』
『自分のことしか考えてなかった罰です。
こうなる運命だったんですよ。』
『運命?何のこと?』
『それより、大好きな騎士が待ってますよ。会いたかったんでしょ。
知ってましたよ、最初からずっと。』
『・・・本当に、いいの?』
『俺、もう寝ますね。知ってると思いますけど、喋るのも結構キツいんで。
どうぞ、楽しんできてください。』
ジャンはそう言うと、ベッドの中に潜り込んで、本当に眠ってしまった。
一応、私の部屋の自慢のベッドは、寝込んでいるジャンに独占させている。
あのベッドには、横になるとどんな人でも一瞬で眠りにつかせ、人間をダメにする魔法がかかっている。
だからきっと、ジャンも、熱で苦しくても、それなりに休めるはずだ。
私も1日で風邪が治ってしまったくらいだし———。
「ジャン様の、眠り姫に仕える強面の執事姿も見たかったのですけれど、
熱があるのなら、仕方がないですね。」
「でも、今夜は、眠り姫と騎士様が見られたので、
それだけで満足ですわ。」
「それから、エレン様とエルド様の戦士姿っ!」
「ミカサ様とペトラ様も美しくて、凛々しくて素敵だわ!」
貴族の娘達は、ずらりと並ぶ憧れの調査兵達を目の前にして、またキラキラと瞳を輝かせ始める。
オルオとグンタが、自分達の名前がなかったことに文句を言い始めれば、彼女達が笑って誤魔化す。
すごく楽しそうな彼女達は、光のような速さで、高熱を出して寝込んでいるジャンのことを忘れてしまったようだ。
「さぁ、皆さま、パーティー会場へご案内いたしますので、
こちらへどうぞ。」
彼女達の執事が、私達をお城の中へと誘う。
エレンが、とても自然に腕を出せば、ミカサの細い腕が彼の腕に絡まった。
とても素敵だと思ったのは私だけではなかったみたいで、オルオがそれを真似して、ペトラの名前を呼んだ。
ペトラが、これでもかというほどに可愛い顔を歪めて、ドン引きする。そして、そのまま、オルオを無視して、行ってしまった。
「なら、俺がオルオにエスコートしてもらおうかな。」
エルドがクスクスと笑いながら、オルオの腕に触れる。
「おい、やめろよ!」
「なら俺?」
「クソッ、馬鹿にしやがって!!放しやが…っんが!」
からかわれて本気で怒っているオルオに、グンタまで加わって、彼らは騒がしく洋館へと入っていく。
馬車が動き出した音がして、私は後ろを振り向いた。
馭者に操縦されて、私達を乗せてやって来た馬車が、去っていく。
でも、彼らは、兵舎へ帰るわけじゃない。
パーティーが終わった後にすぐに迎えに来れるように、城の裏に連れていくのだ。
「なまえ、行くぞ。」
リヴァイ兵長に呼ばれて、私は視線を城の方へと戻した。
豪華な装飾で輝くお城へ素敵な戦士達が入っていく。
その後ろで、憧れの騎士が、私を待っていた。
「はいっ!」
ドレスを両手で少し持ち上げた私は、憧れの騎士へ駆け寄る。
「どんなパーティーなんでしょうねっ。楽しみですねっ。」
「そうだな。」
すぐに隣に並んだ私に、リヴァイ兵長が少しだけ微笑んだ気がする。
それは、私が夢を見ているせいだろうか。
それとも、彼は、リヴァイ兵長ではなくて、眠り姫を愛している本物の騎士だからだろうか。
(どっちでもいいか。)
憧れの騎士の隣で頬を緩める。
だって———。
私は今から、夢の世界の住人になるのだ———。
そして、夢の世界を造り上げた彼女達のように、この夢のような夜が永遠に続けばいいと願うのだろう。
だって、隣には、憧れの騎士が本当に存在しているんだもの———。
私の視線を感じたのか、リヴァイ兵長がこちらを見るから、目が合ってしまった。
綺麗な切れ長の三白眼も、いつもとは違う騎士の姿も、素敵すぎて目が眩みそうだった。
素敵なお城に入る前から、ここはもうすでに、夢の世界そのものだった。