◇第三十八話◇雨の罠に囚われる
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「アンタ、ほんとに何やってんすか。」
ベッドから落ちていたのは、なまえだった。
抱き上げたなまえをベッドに降ろしながら、ジャンはまたため息を吐く。
「いなく、なるから…。」
「は?」
「そばにいて…。」
なまえが、ベッド脇に立っているジャンの腰のあたりに縋るように抱き着く。
弱々しい声で、彼女が自分を追いかけてベッドから落ちたことを知った。
渇いた音のようなものが口から零れたのは、なまえの行動の理由が、あまりにも意外過ぎたせいだ。
でも、すぐにリヴァイのことを思い出す。
そして、彼女がそばにいて欲しいのが、誰なのかも理解する。
昔、なまえが熱を出したときに看病をしたのがリヴァイだったと聞いている。
きっとそのときも、こうして、リヴァイを求めたのだろう。
もしかすると、熱で浮かされている彼女は、そのときを繰り返しているつもりなのかもしれない。
「…着替えますよ。」
ジャンは、持ってきた着替えをベッドの上に置くと、なまえのシャツのボタンに手をかけた。
着替えなくてもいいというようなことを言ったなまえだったけれど、今度は否定はしないし、抵抗するような様子もなかった。
俯き気味で視線を下げ、なまえは、ジャンの大きく長い指によって一つ一つ外されていくボタンを、ただ黙って見ていた。
汗ばんだ白い肌が、次第に露わになっていく。
なまえは、ブラジャーをつけていなかった。
今朝、ペトラが着替えをさせるときに、胸を締め付けるのは可哀想だと思ったのかもしれないし、なまえが嫌がったのかもしれない。
どちらにしろ、ボタンが外れて左右に分かれたシャツの合間から、女性らしい胸の膨らみがほんの少しだけ、ジャンの眼前に晒されていた。
全てのボタンを外し終えたジャンは、シャツを脱がすために襟元を握る。
そして、そのまま動きを止めた。
脱がすのに躊躇したわけではない。
ただ———。
「なまえさん、明日の仮装パーティー、どうしても行きたいですか。」
ジャンがそう訊ねると、なまえがゆっくりと顔を上げた。
熱で潤んだ瞳が、縋るようにジャンを見つめる。
「ん…、いきたい…。」
「なら、熱を下げる一番いい方法、教えてあげましょうか。」
「な、に?」
「こうするんです。」
ジャンは、なまえの腰を抱き寄せると、少し前にリヴァイが重ねていたそこに自分の唇を押しつけた。
無防備に開いていた唇の隙間から舌を押し込めば、なまえは、少し苦し気に吐息を漏らした。
そうして、まるで、上書きでもするように、何度も何度も角度を変えては、彼女の唇を貪るようなキスの雨を降らせる。
昨日、雨に打たれて歩くなまえをそのままにしたのは、彼女が本当に風邪を引いてしまえばいいと思ったからだ。
仮装パーティーに、行かせたくなかった。
招待状が届いたそのときから、本当はずっと、どうしても行かせたくなかった。
どうにかして行かさなくていい方法はないかと考えていたときに、雨に打たれて笑っているなまえを見て、正直、チャンスだと思ったのだ。
今朝、なまえを起こしに部屋に来たときも、風邪を引いていればいいと期待をしていたし、本当に高熱で魘されているのを知ったときは、可哀想だとは思いながらも、無意識に口の端が上がった。
苦しんでいるのを見ていられなくて、少しは薬や食事をとって欲しかったけれど、治るほどは与えるつもりもなかった。
だから、必要最低限の食事と水分をとらせるのみにして、なまえが望むままにしてやった。
今だって、熱を下げてやる気なんか、さらさらない。
このまま悪化してしまえばいいと思ってる。
だから、彼女の唇を貪りながら、シャツの裾を引っ張った。
シャツは、彼女の滑らかな肌を、小さな摩擦の抵抗すらなくするりと滑り落ちていく。
肌が外気に晒され、なまえが小さく震えたのが分かった。
「寒い?」
甘く柔らかい唇を貪りながら、訊ねた。
なまえがゆっくりと首を横に振る。
「あつい…。」
彼女も、唇が離れたタイミングで答えた。
「俺も。」
ジャンはそう言うと、自分のシャツのボタンに手をかけた。
なまえのボタンを外したときとは違って、慣れた手つきであっという間に外していく。
そうして、煩わし気にシャツを脱ぎ捨てた。
「今夜はずっと、こうしてよう。」
なまえの頭を撫でるように髪に指を絡ませて、自分に引き寄せながら言った。
「ん。」
なんとなく返事のようなものが聞こえたけれど、なまえがそれを意図して言ったのかは分からない。
だって、さっきから、彼女からは吐息のようなものが漏れていたからだ。
「なまえさんの熱、一晩かけて、俺にうつして。」
「ん。」
また、よく分からない返事のようなものが聞こえた。
でも正直、どちらだっていい。
ジャンは、なまえの頭を支えたままで、背中からそっとベッドに寝かせた。
別に、これ以上をしようとは思っていない。
だから、パジャマのズボンは脱がしたりしない。
ただ、なまえがこのまま寝込んでくれればいいのだ。
自分の腕の中で、熱に魘されて苦しみ続ければいい。
だって、知っているのだ。
彼女が、仮装パーティーをどうして、あんなにも楽しみにしていたのか。
何がそんなに、彼女の心を躍らせていたのか。
だから————。
『兵長、仮装パーティーの衣装リストはこれらしいです。』
『どうでもいい。俺は出たりなんか——。』
『なまえさんは眠り姫のお姫様ドレスなんですね。』
『そうなんだ~。リヴァイ兵長は?』
『騎士っす!そして、俺達が、騎士に仕える戦士で——。』
『リヴァイ兵長の騎士!!すごい、すごい!!本物の騎士が見れるの!?』
『本物ではないっす、仮装なんで。兵長は人類最強の兵——。』
『リヴァイ兵長、楽しみですねっ。』
『…仕方ねぇ、エルヴィン。出てやってもいい。』
招待状が届いた日、リヴァイ班のメンバーと一緒に団長執務室へ呼び出されたときのことを思い出して、ジャンは眉を歪めた。
なまえの腰を抱き寄せれば、柔らかい胸の感触が、自分の胸下辺りに押しつけられた。
彼女の小さな突起が、ジャンの胸元を擦れていく。
ジャンは、彼女をさらに抱き寄せた。
そして、ひたすらに、我儘で身勝手なキスの雨を降らせ続ける。
だって、知っているから。
なまえは、仮装パーティーに出たかったわけじゃない。
ただ、夢の中にしか存在しないはずだった憧れの騎士に会いたかっただけだ。
調査兵団とエルヴィンの為なら、どんな残酷なことにでも手を染めることのできるリヴァイは、きっと、どんなに嫌だったとしても、結果的には仮装パーティーには参加しただろう。
でも、仮装パーティーのその日、リヴァイは、彼女の為だけに騎士になる。
そんな場所に、誰が行かせるものか———。
だから———。
(このまま、裸で寝て、悪化してしまえばいい。)
まるで呪いのように、心の中でそればかりを繰り返して、なまえの唇を貪った。
彼女の身体は、ひどく熱かった。
あぁ、もしかしたら、自分の身体も凄く熱いのかもしれない。
彼女が、まるで暖をとるように、抱きついてくるから————。
ベッドから落ちていたのは、なまえだった。
抱き上げたなまえをベッドに降ろしながら、ジャンはまたため息を吐く。
「いなく、なるから…。」
「は?」
「そばにいて…。」
なまえが、ベッド脇に立っているジャンの腰のあたりに縋るように抱き着く。
弱々しい声で、彼女が自分を追いかけてベッドから落ちたことを知った。
渇いた音のようなものが口から零れたのは、なまえの行動の理由が、あまりにも意外過ぎたせいだ。
でも、すぐにリヴァイのことを思い出す。
そして、彼女がそばにいて欲しいのが、誰なのかも理解する。
昔、なまえが熱を出したときに看病をしたのがリヴァイだったと聞いている。
きっとそのときも、こうして、リヴァイを求めたのだろう。
もしかすると、熱で浮かされている彼女は、そのときを繰り返しているつもりなのかもしれない。
「…着替えますよ。」
ジャンは、持ってきた着替えをベッドの上に置くと、なまえのシャツのボタンに手をかけた。
着替えなくてもいいというようなことを言ったなまえだったけれど、今度は否定はしないし、抵抗するような様子もなかった。
俯き気味で視線を下げ、なまえは、ジャンの大きく長い指によって一つ一つ外されていくボタンを、ただ黙って見ていた。
汗ばんだ白い肌が、次第に露わになっていく。
なまえは、ブラジャーをつけていなかった。
今朝、ペトラが着替えをさせるときに、胸を締め付けるのは可哀想だと思ったのかもしれないし、なまえが嫌がったのかもしれない。
どちらにしろ、ボタンが外れて左右に分かれたシャツの合間から、女性らしい胸の膨らみがほんの少しだけ、ジャンの眼前に晒されていた。
全てのボタンを外し終えたジャンは、シャツを脱がすために襟元を握る。
そして、そのまま動きを止めた。
脱がすのに躊躇したわけではない。
ただ———。
「なまえさん、明日の仮装パーティー、どうしても行きたいですか。」
ジャンがそう訊ねると、なまえがゆっくりと顔を上げた。
熱で潤んだ瞳が、縋るようにジャンを見つめる。
「ん…、いきたい…。」
「なら、熱を下げる一番いい方法、教えてあげましょうか。」
「な、に?」
「こうするんです。」
ジャンは、なまえの腰を抱き寄せると、少し前にリヴァイが重ねていたそこに自分の唇を押しつけた。
無防備に開いていた唇の隙間から舌を押し込めば、なまえは、少し苦し気に吐息を漏らした。
そうして、まるで、上書きでもするように、何度も何度も角度を変えては、彼女の唇を貪るようなキスの雨を降らせる。
昨日、雨に打たれて歩くなまえをそのままにしたのは、彼女が本当に風邪を引いてしまえばいいと思ったからだ。
仮装パーティーに、行かせたくなかった。
招待状が届いたそのときから、本当はずっと、どうしても行かせたくなかった。
どうにかして行かさなくていい方法はないかと考えていたときに、雨に打たれて笑っているなまえを見て、正直、チャンスだと思ったのだ。
今朝、なまえを起こしに部屋に来たときも、風邪を引いていればいいと期待をしていたし、本当に高熱で魘されているのを知ったときは、可哀想だとは思いながらも、無意識に口の端が上がった。
苦しんでいるのを見ていられなくて、少しは薬や食事をとって欲しかったけれど、治るほどは与えるつもりもなかった。
だから、必要最低限の食事と水分をとらせるのみにして、なまえが望むままにしてやった。
今だって、熱を下げてやる気なんか、さらさらない。
このまま悪化してしまえばいいと思ってる。
だから、彼女の唇を貪りながら、シャツの裾を引っ張った。
シャツは、彼女の滑らかな肌を、小さな摩擦の抵抗すらなくするりと滑り落ちていく。
肌が外気に晒され、なまえが小さく震えたのが分かった。
「寒い?」
甘く柔らかい唇を貪りながら、訊ねた。
なまえがゆっくりと首を横に振る。
「あつい…。」
彼女も、唇が離れたタイミングで答えた。
「俺も。」
ジャンはそう言うと、自分のシャツのボタンに手をかけた。
なまえのボタンを外したときとは違って、慣れた手つきであっという間に外していく。
そうして、煩わし気にシャツを脱ぎ捨てた。
「今夜はずっと、こうしてよう。」
なまえの頭を撫でるように髪に指を絡ませて、自分に引き寄せながら言った。
「ん。」
なんとなく返事のようなものが聞こえたけれど、なまえがそれを意図して言ったのかは分からない。
だって、さっきから、彼女からは吐息のようなものが漏れていたからだ。
「なまえさんの熱、一晩かけて、俺にうつして。」
「ん。」
また、よく分からない返事のようなものが聞こえた。
でも正直、どちらだっていい。
ジャンは、なまえの頭を支えたままで、背中からそっとベッドに寝かせた。
別に、これ以上をしようとは思っていない。
だから、パジャマのズボンは脱がしたりしない。
ただ、なまえがこのまま寝込んでくれればいいのだ。
自分の腕の中で、熱に魘されて苦しみ続ければいい。
だって、知っているのだ。
彼女が、仮装パーティーをどうして、あんなにも楽しみにしていたのか。
何がそんなに、彼女の心を躍らせていたのか。
だから————。
『兵長、仮装パーティーの衣装リストはこれらしいです。』
『どうでもいい。俺は出たりなんか——。』
『なまえさんは眠り姫のお姫様ドレスなんですね。』
『そうなんだ~。リヴァイ兵長は?』
『騎士っす!そして、俺達が、騎士に仕える戦士で——。』
『リヴァイ兵長の騎士!!すごい、すごい!!本物の騎士が見れるの!?』
『本物ではないっす、仮装なんで。兵長は人類最強の兵——。』
『リヴァイ兵長、楽しみですねっ。』
『…仕方ねぇ、エルヴィン。出てやってもいい。』
招待状が届いた日、リヴァイ班のメンバーと一緒に団長執務室へ呼び出されたときのことを思い出して、ジャンは眉を歪めた。
なまえの腰を抱き寄せれば、柔らかい胸の感触が、自分の胸下辺りに押しつけられた。
彼女の小さな突起が、ジャンの胸元を擦れていく。
ジャンは、彼女をさらに抱き寄せた。
そして、ひたすらに、我儘で身勝手なキスの雨を降らせ続ける。
だって、知っているから。
なまえは、仮装パーティーに出たかったわけじゃない。
ただ、夢の中にしか存在しないはずだった憧れの騎士に会いたかっただけだ。
調査兵団とエルヴィンの為なら、どんな残酷なことにでも手を染めることのできるリヴァイは、きっと、どんなに嫌だったとしても、結果的には仮装パーティーには参加しただろう。
でも、仮装パーティーのその日、リヴァイは、彼女の為だけに騎士になる。
そんな場所に、誰が行かせるものか———。
だから———。
(このまま、裸で寝て、悪化してしまえばいい。)
まるで呪いのように、心の中でそればかりを繰り返して、なまえの唇を貪った。
彼女の身体は、ひどく熱かった。
あぁ、もしかしたら、自分の身体も凄く熱いのかもしれない。
彼女が、まるで暖をとるように、抱きついてくるから————。