◇第三十七話◇悪夢に魘される眠り姫は彼を求める
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団長執務室からなまえの部屋に戻るジャンの足は、無意識に速くなっていた。
ジャンを呼びに来たのは、団長の右腕であるアルミンだった。
次回の壁外調査の件で、どうしても確認したいことがあるから来てほしいという団長からの呼び出しを伝えに来たのだ。
高熱で寝込んでいるなまえを置いていくのは心配だったが、すぐに終わると言うことだったから、それから急いで団長執務室へ向かった。
だが、結局、幾つかの確認と特殊任務の細かな変更点を決めるのに1時間以上かかってしまった。
正直、話し合いの最中もずっと、なまえの様子が気になって仕方なかった。
1時間ずっと眠っていることはなかったから、きっと、1度は起きたはずだ。
汗もたくさんかいているだろうし、タオルで拭いてやりたいし、寒がっているかもしれない。
それに、そろそろ、着替えをさせてやりたい。
(ペトラさん、今日は帰って来ねぇってさっきアルミンが言ってたしな…。)
意識が朦朧として、ひとりで座ることも出来ないなまえが、自分で着替えが出来るとは思えない。
今朝は、運よくペトラを見つけることが出来たが、今夜はどうするか。
こんな時に限って、ナナバも壁外任務で兵舎にはいないし、そもそも彼女の気持ちを知っている以上、着替えをお願いするのは、酷なことなのではないかとも思う。
それなら———。
「あ!おい!!」
どうしようかと頭を悩ませながらなまえの部屋へ向かっていたジャンが見つけたのは、サシャだった。
訓練帰りのようで、重たい足を引きずるようにして疲れた様子で廊下を歩きながらこちらに向かってきている。
役職付きや精鋭兵の多くが部屋を構えるフロアで、精鋭兵の彼女に会えるのは、当然のことだったのかもしれないが、ジャンにとっては、ラッキーだった。
「なんですか?」
サシャは、ジャンを見つけると、ひどく面倒くさそうに目を細めた。
逃げるつもりの気持ちが出ている腰は、既に引き気味だ。
「なまえさんが熱出して寝込んでんだよ。」
「え、大丈夫なんですか?」
「ただの風邪だ。馬鹿なだけだからそれは大丈夫。」
「よく分かりませんが、あなた、上官に対して本当にクソ口が悪いですね。」
「いいんだよ、あの人には。
で、今から俺とあの人の部屋に行って、着替えをさせてやってくれないか。」
「えー、なんで、私がそんなことしないといけないんですかぁ。」
サシャが、心底嫌そうに言う。
だが、ジャンは彼女の意見を聞くつもりはなかった。
だから、嫌がられようが、それでも無理やり連れて行くつもりだったのだ。
まさか、サシャに痛いところを突かれるなんて、夢にも思っていなかったのである。
「そもそも、婚約者のジャンがいるのに、どうして他人に頼むんですか。
あなたがすればいいでしょ。」
「それは——。」
「まさか…、婚約までしておいて、まだ…とか言わないですよね?」
サシャが、疑いの眼差しを向けてくる。
いつものからかうようなニヤけ顔であれば、言い返すことが出来たかもしれない。
でも、どちらかというと今の彼女は———。
「キモいんですけど。」
サシャが、顔を引いて、ジャンを排泄物でも見るような目を向ける。
その蔑んだような目は、ジャンのつま先から頭の先までを何度も往復した。
「…そんなわけねぇだろ。
思わず襲っちまったら可哀想だと思っただけだ。」
「それはそれで最低ですね。
熱を出し苦しんでる恋人の裸見て欲情するなんて、鬼畜です。クソ野郎です。
死ねばいいのに。」
「そこまで言うかよ。」
ジャンは不機嫌に眉を顰めた。
結局、サシャになまえの着替えを頼むことは出来なかった。
スキップしながら食堂へ向かうサシャの背中を眺めながら、ジャンはため息をついて首の後ろを掻いた。
サシャの挑発に乗ってしまった。
長い付き合いは、こういうところが面倒くさい。
あぁ、本当に——。
参った。
ジャンを呼びに来たのは、団長の右腕であるアルミンだった。
次回の壁外調査の件で、どうしても確認したいことがあるから来てほしいという団長からの呼び出しを伝えに来たのだ。
高熱で寝込んでいるなまえを置いていくのは心配だったが、すぐに終わると言うことだったから、それから急いで団長執務室へ向かった。
だが、結局、幾つかの確認と特殊任務の細かな変更点を決めるのに1時間以上かかってしまった。
正直、話し合いの最中もずっと、なまえの様子が気になって仕方なかった。
1時間ずっと眠っていることはなかったから、きっと、1度は起きたはずだ。
汗もたくさんかいているだろうし、タオルで拭いてやりたいし、寒がっているかもしれない。
それに、そろそろ、着替えをさせてやりたい。
(ペトラさん、今日は帰って来ねぇってさっきアルミンが言ってたしな…。)
意識が朦朧として、ひとりで座ることも出来ないなまえが、自分で着替えが出来るとは思えない。
今朝は、運よくペトラを見つけることが出来たが、今夜はどうするか。
こんな時に限って、ナナバも壁外任務で兵舎にはいないし、そもそも彼女の気持ちを知っている以上、着替えをお願いするのは、酷なことなのではないかとも思う。
それなら———。
「あ!おい!!」
どうしようかと頭を悩ませながらなまえの部屋へ向かっていたジャンが見つけたのは、サシャだった。
訓練帰りのようで、重たい足を引きずるようにして疲れた様子で廊下を歩きながらこちらに向かってきている。
役職付きや精鋭兵の多くが部屋を構えるフロアで、精鋭兵の彼女に会えるのは、当然のことだったのかもしれないが、ジャンにとっては、ラッキーだった。
「なんですか?」
サシャは、ジャンを見つけると、ひどく面倒くさそうに目を細めた。
逃げるつもりの気持ちが出ている腰は、既に引き気味だ。
「なまえさんが熱出して寝込んでんだよ。」
「え、大丈夫なんですか?」
「ただの風邪だ。馬鹿なだけだからそれは大丈夫。」
「よく分かりませんが、あなた、上官に対して本当にクソ口が悪いですね。」
「いいんだよ、あの人には。
で、今から俺とあの人の部屋に行って、着替えをさせてやってくれないか。」
「えー、なんで、私がそんなことしないといけないんですかぁ。」
サシャが、心底嫌そうに言う。
だが、ジャンは彼女の意見を聞くつもりはなかった。
だから、嫌がられようが、それでも無理やり連れて行くつもりだったのだ。
まさか、サシャに痛いところを突かれるなんて、夢にも思っていなかったのである。
「そもそも、婚約者のジャンがいるのに、どうして他人に頼むんですか。
あなたがすればいいでしょ。」
「それは——。」
「まさか…、婚約までしておいて、まだ…とか言わないですよね?」
サシャが、疑いの眼差しを向けてくる。
いつものからかうようなニヤけ顔であれば、言い返すことが出来たかもしれない。
でも、どちらかというと今の彼女は———。
「キモいんですけど。」
サシャが、顔を引いて、ジャンを排泄物でも見るような目を向ける。
その蔑んだような目は、ジャンのつま先から頭の先までを何度も往復した。
「…そんなわけねぇだろ。
思わず襲っちまったら可哀想だと思っただけだ。」
「それはそれで最低ですね。
熱を出し苦しんでる恋人の裸見て欲情するなんて、鬼畜です。クソ野郎です。
死ねばいいのに。」
「そこまで言うかよ。」
ジャンは不機嫌に眉を顰めた。
結局、サシャになまえの着替えを頼むことは出来なかった。
スキップしながら食堂へ向かうサシャの背中を眺めながら、ジャンはため息をついて首の後ろを掻いた。
サシャの挑発に乗ってしまった。
長い付き合いは、こういうところが面倒くさい。
あぁ、本当に——。
参った。