◇第三十六話◇甘過ぎるホットミルク
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「ガキじゃないんすから、いい加減にしてくださいよ。」
こちらを向こうともしないなまえに途方に暮れて、ジャンは、ため息を漏らした。
食欲もないらしく、持ってきた朝食には全く口をつけて貰えず、それなら薬を飲ませて寝かせようとしても、なまえは、頑なに口を閉ざしたまま、絶対に頷かない。
それなら仕方がないので、医療兵に言われた通り、せめて水分だけでもとらせようと、ついさっき、食堂の調理場を借りてホットミルクを作って来た。
どうせ、飲みたくないと我儘を言うに決まっているなまえの為に、たっぷりの砂糖と蜂蜜入りだ。
貴重な甘味料なので、もちろん、こっそり拝借した。
危険を冒してまでわざわざ作って来てやったというのに———。
「や…。」
ホットミルクの入ったマグカップを持って、ベッドの縁に座るジャンを、なまえは見もしないままに拒絶する。
そのくせ、さっきから、うわ言のように「キツい。」「眠れない。」を繰り返しているのだ。
(俺にどうしろって言うんだよ。)
ジャンは、もう一度、大きくため息を吐く。
こちらを向かないなまえだが、上下に揺れる肩は彼女が苦しんでいることを教えてくれる。
浅い呼吸はツラそうになるばかりだし、さっき、体温を計ったら、また熱が上がっていた。
意識も朦朧としていて、本当に死んでしまうのではないかと心配になってしまうほどなのだ。
(仕方ねぇな…。)
とにかく、水分だけでもとって寝かせなければならない。
これも、補佐官の仕事のひとつだ。
偽物の恋人ではなく、補佐官として、ジャンは、最終手段に出ることにした。
「なまえさん、身体起こしますよ。」
ジャンは、なまえの腰の下に手を回した。
逃げようとした気配は感じたが、結局、彼女の身体が抵抗を見せることはなかった。
自分の意思で身体を動かす力も残っていないのだろう。
「自分で座るのがキツかったら、俺に寄りかかっていいですよ。」
「ん…。」
ジャンは、なまえの身体をゆっくりと起こすと、ベッドのヘッドボードと彼女の間に枕を挟んだ。
そして、そこに背中を預けて座らせる。
だが、腰の据わっていない赤ん坊のように、なまえの身体はずるずると倒れていく。
自分で座らせることを諦めたジャンは、なまえを自分の胸元に抱き寄せるようにして寄り掛からせた。
それから、作って来たホットミルクを自分の口に流し込む。
なまえがなかなか飲んでくれなかったおかげで、熱々だったホットミルクは、ぬるくなっていたけれど、もう今さら、どちらでもいい。
とにかく、彼女に水分をとらせなければ———。
それだけだった。
口に流し込んだホットミルクは、飲み込むことはせず口に含んだまま、ジャンは、視線を下げる。
なまえは、ジャンの胸元に頬を乗せた後も、苦しそうに浅い息を繰り返していた。
ジャンは、そんな彼女の顎を親指と人差し指で挟むと、強引に上を向かせた。
漸く見えた彼女の顔は、熱のせいで、目の周りまで赤く火照っていて、眉尻が下がり、今にも泣き出してしまいそうに見えた。
ただ、息が苦しいからなのか、口が無防備に半開きになっているのは、とても都合がよかった。
ジャンは、なまえの口に自分の口を押し付けた。
今まで何度も唇を重ねたことがあるが、こんなに唇が熱いのは、もちろん初めてだった。
まるで、世界一柔らかい炎に口づけているようだ。
なまえから驚いたような気配は感じたが、熱で朦朧としている彼女は、ジャンの思い通りだった。
半開きになっている口の中に、ジャンが口に含んだままにしていたホットミルクを流し込む。
なまえの口の端からは、入りきらなかったホットミルクが、当然のように溢れて零れていく。
だが、出来る限りのホットミルクがなまえの口の中に入るように、ジャンが自分の唇を強引に押し付ければ、ほんの少しだったけれど、彼女の喉が上下したのが分かった。
だいぶ零れてしまったが、彼女にホットミルクを飲ませることに成功したようだ。
「コホッ…、コホ…ッ。」
いきなり液体を口の中に流し込まれたなまえは、ジャンの唇が離れると、苦しそうに咳き込んだ。
だが、ジャンは、そんな彼女に休憩を与えない。
またすぐにホットミルクを自分の口に含むと、同じ要領で、なまえの口にそれを流し込んだ。
こちらを向こうともしないなまえに途方に暮れて、ジャンは、ため息を漏らした。
食欲もないらしく、持ってきた朝食には全く口をつけて貰えず、それなら薬を飲ませて寝かせようとしても、なまえは、頑なに口を閉ざしたまま、絶対に頷かない。
それなら仕方がないので、医療兵に言われた通り、せめて水分だけでもとらせようと、ついさっき、食堂の調理場を借りてホットミルクを作って来た。
どうせ、飲みたくないと我儘を言うに決まっているなまえの為に、たっぷりの砂糖と蜂蜜入りだ。
貴重な甘味料なので、もちろん、こっそり拝借した。
危険を冒してまでわざわざ作って来てやったというのに———。
「や…。」
ホットミルクの入ったマグカップを持って、ベッドの縁に座るジャンを、なまえは見もしないままに拒絶する。
そのくせ、さっきから、うわ言のように「キツい。」「眠れない。」を繰り返しているのだ。
(俺にどうしろって言うんだよ。)
ジャンは、もう一度、大きくため息を吐く。
こちらを向かないなまえだが、上下に揺れる肩は彼女が苦しんでいることを教えてくれる。
浅い呼吸はツラそうになるばかりだし、さっき、体温を計ったら、また熱が上がっていた。
意識も朦朧としていて、本当に死んでしまうのではないかと心配になってしまうほどなのだ。
(仕方ねぇな…。)
とにかく、水分だけでもとって寝かせなければならない。
これも、補佐官の仕事のひとつだ。
偽物の恋人ではなく、補佐官として、ジャンは、最終手段に出ることにした。
「なまえさん、身体起こしますよ。」
ジャンは、なまえの腰の下に手を回した。
逃げようとした気配は感じたが、結局、彼女の身体が抵抗を見せることはなかった。
自分の意思で身体を動かす力も残っていないのだろう。
「自分で座るのがキツかったら、俺に寄りかかっていいですよ。」
「ん…。」
ジャンは、なまえの身体をゆっくりと起こすと、ベッドのヘッドボードと彼女の間に枕を挟んだ。
そして、そこに背中を預けて座らせる。
だが、腰の据わっていない赤ん坊のように、なまえの身体はずるずると倒れていく。
自分で座らせることを諦めたジャンは、なまえを自分の胸元に抱き寄せるようにして寄り掛からせた。
それから、作って来たホットミルクを自分の口に流し込む。
なまえがなかなか飲んでくれなかったおかげで、熱々だったホットミルクは、ぬるくなっていたけれど、もう今さら、どちらでもいい。
とにかく、彼女に水分をとらせなければ———。
それだけだった。
口に流し込んだホットミルクは、飲み込むことはせず口に含んだまま、ジャンは、視線を下げる。
なまえは、ジャンの胸元に頬を乗せた後も、苦しそうに浅い息を繰り返していた。
ジャンは、そんな彼女の顎を親指と人差し指で挟むと、強引に上を向かせた。
漸く見えた彼女の顔は、熱のせいで、目の周りまで赤く火照っていて、眉尻が下がり、今にも泣き出してしまいそうに見えた。
ただ、息が苦しいからなのか、口が無防備に半開きになっているのは、とても都合がよかった。
ジャンは、なまえの口に自分の口を押し付けた。
今まで何度も唇を重ねたことがあるが、こんなに唇が熱いのは、もちろん初めてだった。
まるで、世界一柔らかい炎に口づけているようだ。
なまえから驚いたような気配は感じたが、熱で朦朧としている彼女は、ジャンの思い通りだった。
半開きになっている口の中に、ジャンが口に含んだままにしていたホットミルクを流し込む。
なまえの口の端からは、入りきらなかったホットミルクが、当然のように溢れて零れていく。
だが、出来る限りのホットミルクがなまえの口の中に入るように、ジャンが自分の唇を強引に押し付ければ、ほんの少しだったけれど、彼女の喉が上下したのが分かった。
だいぶ零れてしまったが、彼女にホットミルクを飲ませることに成功したようだ。
「コホッ…、コホ…ッ。」
いきなり液体を口の中に流し込まれたなまえは、ジャンの唇が離れると、苦しそうに咳き込んだ。
だが、ジャンは、そんな彼女に休憩を与えない。
またすぐにホットミルクを自分の口に含むと、同じ要領で、なまえの口にそれを流し込んだ。