◇第三十四話◇愚息の憂いと母の愛
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「ジャンの大切なお母さんに嘘を吐いて、ごめんね。」
執務室に戻りながら、なまえが申し訳なさそうに言う。
「嘘ってなんすか?
あ~、俺のことを世界一強い男って言ったことですか?」
ジャンは、意地悪く口の端を上げた。
ほんの一瞬だけ、なまえはハッとした顔をしたけれど、すぐに悪戯っ子のような笑みを浮かべて続ける。
「それは、嘘じゃないよ~。———たぶんね。」
少し早歩きをして、ジャンの斜め前に出たなまえは、後ろを向きながら、含みを持たせるような笑みを浮かべる。
歳上の女性、しかも上官である彼女に対しては、もしかしたら失礼なのかもしれない。
でも、酔っ払いの自分が暴露してしまった本音を本人が知ってるなんて、夢にも思っていない彼女は、とても可愛かった。
「たぶん、っすか。」
「そう、たぶん。」
小さく笑ったジャンに、なまえが、ふふっと嬉しそうに言う。
このまま、彼女が吐いた嘘のことは誤魔化して終わっても構わなかった。
でも、なんとなく気になることが抜けないジャンは、性格柄、曖昧なままには出来ずに、口にしてしまう。
「フリだって正直に言うのかと思ってたんで、意外でした。」
「あぁ…。」
なまえは、小さくそうこぼすと、困ったような笑みを見せました。
「私のせいで、ジャンのお母さんに、嘘を吐かせたくなくて。」
あぁ、そういうことか———。
ジャンは、漸く、納得出来た。
自分が嘘を吐くことで、誰かが不要な嘘を吐かなくてもいいようにするなんて、嘘が嫌いな彼女らしい。
「そっすか。」
自分の母親に対する彼女の優しさを知ったジャンは、無意識に表情が柔らかくなっていた。
すると、ふ、と余計なことを思い出したなまえが、ジャンに訊ねる。
「ねぇ、そういえば、どうして、作って待ってる料理が、オムライスだったんだろう?」
「・・・・さぁ、好きなんじゃないんすか?」
「お母さんが?」
なまえがしきりに首を傾げる。
確かに、それなりに成長した息子が婚約者を初めて実家に連れて来た日に、もてなす料理として、オムライスはなかなか奇抜だ。
彼女が不思議に思うのも仕方がないことだろう。
でも、ジャンとしては、その話題は、今すぐに終わらせたかった。
「それより、早く戻って仕事を始めますよ。」
「え~、今日はなんかもうやる気が———。」
「俺となまえさんが力を合わせれば、あっという間に終わるんでしょう?
それとも————、もしかして、なまえさん、俺の大事な母親に嘘吐いたんすか。」
「ちが…!!」
なまえが焦ったように言う。
単純な彼女を操るのは、本当に簡単だ。
こんなに扱いやすい人間、今まで出逢ったことがない。
「なら、一緒に力を合わせましょうね。」
ニヤリと笑ったジャンに、なまえは観念したように頷いて、引くほど項垂れた。
(罰ゲームみたいになってっけど、そもそも、やらなきゃいけねぇ仕事だからな。)
俯き加減で歩く泣きそうな肩を見下ろしながら、ジャンは首を竦めて苦笑した。
執務室に戻りながら、なまえが申し訳なさそうに言う。
「嘘ってなんすか?
あ~、俺のことを世界一強い男って言ったことですか?」
ジャンは、意地悪く口の端を上げた。
ほんの一瞬だけ、なまえはハッとした顔をしたけれど、すぐに悪戯っ子のような笑みを浮かべて続ける。
「それは、嘘じゃないよ~。———たぶんね。」
少し早歩きをして、ジャンの斜め前に出たなまえは、後ろを向きながら、含みを持たせるような笑みを浮かべる。
歳上の女性、しかも上官である彼女に対しては、もしかしたら失礼なのかもしれない。
でも、酔っ払いの自分が暴露してしまった本音を本人が知ってるなんて、夢にも思っていない彼女は、とても可愛かった。
「たぶん、っすか。」
「そう、たぶん。」
小さく笑ったジャンに、なまえが、ふふっと嬉しそうに言う。
このまま、彼女が吐いた嘘のことは誤魔化して終わっても構わなかった。
でも、なんとなく気になることが抜けないジャンは、性格柄、曖昧なままには出来ずに、口にしてしまう。
「フリだって正直に言うのかと思ってたんで、意外でした。」
「あぁ…。」
なまえは、小さくそうこぼすと、困ったような笑みを見せました。
「私のせいで、ジャンのお母さんに、嘘を吐かせたくなくて。」
あぁ、そういうことか———。
ジャンは、漸く、納得出来た。
自分が嘘を吐くことで、誰かが不要な嘘を吐かなくてもいいようにするなんて、嘘が嫌いな彼女らしい。
「そっすか。」
自分の母親に対する彼女の優しさを知ったジャンは、無意識に表情が柔らかくなっていた。
すると、ふ、と余計なことを思い出したなまえが、ジャンに訊ねる。
「ねぇ、そういえば、どうして、作って待ってる料理が、オムライスだったんだろう?」
「・・・・さぁ、好きなんじゃないんすか?」
「お母さんが?」
なまえがしきりに首を傾げる。
確かに、それなりに成長した息子が婚約者を初めて実家に連れて来た日に、もてなす料理として、オムライスはなかなか奇抜だ。
彼女が不思議に思うのも仕方がないことだろう。
でも、ジャンとしては、その話題は、今すぐに終わらせたかった。
「それより、早く戻って仕事を始めますよ。」
「え~、今日はなんかもうやる気が———。」
「俺となまえさんが力を合わせれば、あっという間に終わるんでしょう?
それとも————、もしかして、なまえさん、俺の大事な母親に嘘吐いたんすか。」
「ちが…!!」
なまえが焦ったように言う。
単純な彼女を操るのは、本当に簡単だ。
こんなに扱いやすい人間、今まで出逢ったことがない。
「なら、一緒に力を合わせましょうね。」
ニヤリと笑ったジャンに、なまえは観念したように頷いて、引くほど項垂れた。
(罰ゲームみたいになってっけど、そもそも、やらなきゃいけねぇ仕事だからな。)
俯き加減で歩く泣きそうな肩を見下ろしながら、ジャンは首を竦めて苦笑した。