◇第二十四話◇お酒が喋らせる危険な秘密【中編】
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ナナバから今の状況を説明してもらった私は、初めて来たバーのソファ席で、これでもかというほどに身体を小さく丸めていた。
いっそ、このまま消えてしまえたらどんなにいいだろうかと、そんなことばかり考えている。
ここはエルヴィン団長の行きつけのバーで、突然部屋を訪れたハンジさんは、寝ていた私を叩き起こして、結婚祝いの飲み会をしようと誘ってきたらしい。
でも、主役が誘いを右から左へ聞き流して眠ってしまったから、ハンジさんに呼び出されたリヴァイ兵長が、私を抱えてバーまで運んでくれたと聞いて、血の気が引いた。
どうしてリヴァイ兵長なのか———。
ジャンと恋人のフリをしているという事情を知っているナナバとゲルガーは、マズいと思って私を叩き起こそうとしてくれたらしいけれど、うんともすんとも反応がないどころか、リヴァイ兵長に磁石みたいに張りついて、嘘みたいに離れなかったのだそうだ。
睡眠中で欲望の塊になっていた私は、やらかしてしまったのだ。
恥ずかしさと、情けなさと、虚しさと、いろんな感情がごちゃ混ぜになって、泣き喚きたいところだ。
でも、私の気持ちも知らないで、ここが行きつけでもある団長だけではなく、他のメンバーも、雰囲気のいいバーを楽しんでいる。
どうやら、エルドもここはよく来ているらしく、カウンター席でバーテンダーの若い男性と親し気に話している。
カッコつけて慣れた風を装っているのがバレバレのオルオは痛々しいけれど、グンタとペトラも、それなりにバーに馴染んでいる。
お酒が美味しいバーらしく、ナナバとゲルガーは互いのお酒を飲み比べて楽しんでいる。
ハンジさんとモブリットさんも楽しそうにお喋りをしている。
でも、私は、いつも同期のナナバ達と行くような騒がしく飲み明かすような呑み屋の方が好きだし、気が楽だ。
こんなお洒落な場所は、落ち着かないし、居心地が悪い。
それに———。
隣に座るリヴァイ兵長をチラリと見た。
いつも同じような独特な持ち方だけれど、今夜、彼が飲んでいるのは、紅茶ではなくてお酒だ。
それに、持っているのもティーカップではなくて、グラスだ。
黒い服が良く似合うリヴァイ兵長は、お洒落なバーが良く似合っていた。
薄い唇がグラスの縁に触れていて、お酒を流す度に喉が上下に揺れて———。
すごく厭らしく見えてしまって、私は慌てて目を反らした。
お酒を飲むリヴァイ兵長を見たのは初めてなわけじゃない。
こうして、数人の仲間と一緒に飲みに来たことだって何度かある。
でも———。
数日前に、自分のそれと触れようとしているように見えたリヴァイ兵長の唇を思い出して、平常心ではいられなかった。
それに———。
さっきも、バーに来たのなら、私をソファに降ろせばよかったのに、抱えたままでいてくれた。
私が起きたと気づいたなら、そこで降ろすことだって出来たのに、、それでも私を膝の上に乗せていてくれた。
それってもしかして———。
都合のいい期待が、チクチクと私の胸を刺激する。
そしてその度に、私は、帰りたいと願う。
気をつけないと、リヴァイ兵長の気持ちを聞きたくなってしまうから、帰りたい。
気をつけないと、リヴァイ兵長を目で追ってしまうから、帰りたい。
気をつけないと、好きだと言ってしまいそうだから。
だから、帰りたい————。
俯いて、私がため息を吐いたときだった。
「なまえ~?どうしたの~?浮かない顔して~?」
さっき、リヴァイ兵長がそうしたように、今度はハンジさんが私の顔を覗き込んだ。
ハッとして顔を上げた私は、慌てて言い訳をする。
「どうもしないです…!大丈夫です!!問題ありません!!」
必死に誤魔化そうとした私から出て来たのは、自分でもよく分からない返事だった。
それにハンジさんが納得するわけもなく、不思議そうに首を傾げた。
「何が大丈夫なの?」
「えっと…、それは…、何でもありません…!」
「だって、大丈夫って言ったよね?」
「それは…、本当に大丈夫ってことです…!」
「何が大丈夫なの?」
「それは…、問題ないってことです…!」
「だから何が?」
「えーっと…、」
私の目は、右へ左へ、泳ぐしかなかった。
必死に頭を回転させたけれど、子供の頃から下手な言い訳でウソがばれる度に両親に叱られていた私に、うまい言い訳が見つかるわけがなかった。
でも、不思議そうに首を傾げているハンジさんの目は、眼鏡の向こうでギラリと光り、私の嘘を見抜こうとしている。
ジャンに忠告されていたから、それが分かるわけじゃない。
長い付き合いだからこそ、彼女の観察眼が他の誰よりも優れていることを知っているのだ。
そして、私が彼女を誤魔化しきれないことも———。
「ねぇ、リヴァイ。
なまえの結婚に問題があるなら、君も気になるよね?」
ハンジさんは、私の隣に座るリヴァイ兵長にまで声を掛けた。
ひたすらお酒を飲んでいたリヴァイ兵長が、ハンジさんの方を向く。
まさか、リヴァイ兵長まで巻き込むとは思っていなかったから、私は、焦った。
どうしよう———。
そう考えていると、リヴァイ兵長が私を見て、目が合った。
ドキッとしてしまったのが、恋心からなのか、焦っているからなのか、もう分からなかった。
それくらい、私は緊張していて、心臓が破裂しそうなくらいにドキドキしていた。
目が合っている時間が凄く長く感じたけれど、実際は数秒間程度だったはずだ。
少し間をあけてから、リヴァイ兵長は、持っていたグラスをテーブルに置いてから、口を開いた。
「お前、本当にアイツに惚れてるのか?」
「それは…。」
はい———。
ハッキリとそう答えなければならないことは、頭の隅でちゃんと分かっていた。
でも、嘘を吐けなかった。
それは、両親からの教えとか、そういうのではなくて、ただ単純に、好きな人に嘘を吐きたくなくて———。
リヴァイ兵長がしたのは、前と同じ質問だった。
殆ど同期で、共に命を懸けて来た仲間として、私の幸せを願ってくれているだけだろうか。
それとも———。
また、いつまでもちゃんと答えなかったら、リヴァイ兵長は私の唇を塞ごうとするのだろうか。
薄くて、綺麗な、その唇で———。
「ハンジさんもリヴァイ兵長も、あんまりなまえをいじめないであげてよ。」
助けてくれたのは、事情を知っているナナバだった。
ハンジさんの腕を掴んで、強引に私から引き剥がすと、隣に腰を降ろした。
そして、私の腰を抱き寄せてから、困ったような笑みを浮かべて続けた。
「結婚が決まってから、マリッジブルーになってるんですよ。
よくあることだろう?
———な?なまえ?」
ナナバが私の顔を覗き込む。
そして、ハンジさんとリヴァイ兵長に見えないように、ウィンクをした。
本当の気持ちを吐露してしまいそうだった私は、強い味方の登場に、心底ホッとした。
そして、不要なくらいに何度も頷いた。
肩から力が抜けて、自然と頬が緩む。
すると、私の隣をナナバに奪われたハンジさんが、向かいのソファに座ってから、ニコリと笑った。
「へぇ、マリッジブルーか~。
ナナバは話を聞いてるんだね~。」
「私達は同期で親友ですからね。」
ナナバは笑顔で答えて、私の手をギュッと握った。
私は不安になりながら、ナナバの手を握り返した。
「それなら、ゲルガーも知ってるのかな?」
「そうですね。アレも知ってますけど、理解してるかどうかは分かりませんね。
女心なんて分からない馬鹿ですから。」
ナナバがアハハと笑うと、ハンジさんもそれに合わせてわざとらしく笑った。
ハンジさんが、信じていないのは分かった。
でも、隣にいるリヴァイ兵長がどんな顔をしたのかは、怖くて見れなかった。
(どうにかして、信じてもらわなくちゃ———。)
ナナバの手をギュッと握りしめながら、私はどうすればいいかを必死に考えた。
そして、ひとつ、決意をした———。
いっそ、このまま消えてしまえたらどんなにいいだろうかと、そんなことばかり考えている。
ここはエルヴィン団長の行きつけのバーで、突然部屋を訪れたハンジさんは、寝ていた私を叩き起こして、結婚祝いの飲み会をしようと誘ってきたらしい。
でも、主役が誘いを右から左へ聞き流して眠ってしまったから、ハンジさんに呼び出されたリヴァイ兵長が、私を抱えてバーまで運んでくれたと聞いて、血の気が引いた。
どうしてリヴァイ兵長なのか———。
ジャンと恋人のフリをしているという事情を知っているナナバとゲルガーは、マズいと思って私を叩き起こそうとしてくれたらしいけれど、うんともすんとも反応がないどころか、リヴァイ兵長に磁石みたいに張りついて、嘘みたいに離れなかったのだそうだ。
睡眠中で欲望の塊になっていた私は、やらかしてしまったのだ。
恥ずかしさと、情けなさと、虚しさと、いろんな感情がごちゃ混ぜになって、泣き喚きたいところだ。
でも、私の気持ちも知らないで、ここが行きつけでもある団長だけではなく、他のメンバーも、雰囲気のいいバーを楽しんでいる。
どうやら、エルドもここはよく来ているらしく、カウンター席でバーテンダーの若い男性と親し気に話している。
カッコつけて慣れた風を装っているのがバレバレのオルオは痛々しいけれど、グンタとペトラも、それなりにバーに馴染んでいる。
お酒が美味しいバーらしく、ナナバとゲルガーは互いのお酒を飲み比べて楽しんでいる。
ハンジさんとモブリットさんも楽しそうにお喋りをしている。
でも、私は、いつも同期のナナバ達と行くような騒がしく飲み明かすような呑み屋の方が好きだし、気が楽だ。
こんなお洒落な場所は、落ち着かないし、居心地が悪い。
それに———。
隣に座るリヴァイ兵長をチラリと見た。
いつも同じような独特な持ち方だけれど、今夜、彼が飲んでいるのは、紅茶ではなくてお酒だ。
それに、持っているのもティーカップではなくて、グラスだ。
黒い服が良く似合うリヴァイ兵長は、お洒落なバーが良く似合っていた。
薄い唇がグラスの縁に触れていて、お酒を流す度に喉が上下に揺れて———。
すごく厭らしく見えてしまって、私は慌てて目を反らした。
お酒を飲むリヴァイ兵長を見たのは初めてなわけじゃない。
こうして、数人の仲間と一緒に飲みに来たことだって何度かある。
でも———。
数日前に、自分のそれと触れようとしているように見えたリヴァイ兵長の唇を思い出して、平常心ではいられなかった。
それに———。
さっきも、バーに来たのなら、私をソファに降ろせばよかったのに、抱えたままでいてくれた。
私が起きたと気づいたなら、そこで降ろすことだって出来たのに、、それでも私を膝の上に乗せていてくれた。
それってもしかして———。
都合のいい期待が、チクチクと私の胸を刺激する。
そしてその度に、私は、帰りたいと願う。
気をつけないと、リヴァイ兵長の気持ちを聞きたくなってしまうから、帰りたい。
気をつけないと、リヴァイ兵長を目で追ってしまうから、帰りたい。
気をつけないと、好きだと言ってしまいそうだから。
だから、帰りたい————。
俯いて、私がため息を吐いたときだった。
「なまえ~?どうしたの~?浮かない顔して~?」
さっき、リヴァイ兵長がそうしたように、今度はハンジさんが私の顔を覗き込んだ。
ハッとして顔を上げた私は、慌てて言い訳をする。
「どうもしないです…!大丈夫です!!問題ありません!!」
必死に誤魔化そうとした私から出て来たのは、自分でもよく分からない返事だった。
それにハンジさんが納得するわけもなく、不思議そうに首を傾げた。
「何が大丈夫なの?」
「えっと…、それは…、何でもありません…!」
「だって、大丈夫って言ったよね?」
「それは…、本当に大丈夫ってことです…!」
「何が大丈夫なの?」
「それは…、問題ないってことです…!」
「だから何が?」
「えーっと…、」
私の目は、右へ左へ、泳ぐしかなかった。
必死に頭を回転させたけれど、子供の頃から下手な言い訳でウソがばれる度に両親に叱られていた私に、うまい言い訳が見つかるわけがなかった。
でも、不思議そうに首を傾げているハンジさんの目は、眼鏡の向こうでギラリと光り、私の嘘を見抜こうとしている。
ジャンに忠告されていたから、それが分かるわけじゃない。
長い付き合いだからこそ、彼女の観察眼が他の誰よりも優れていることを知っているのだ。
そして、私が彼女を誤魔化しきれないことも———。
「ねぇ、リヴァイ。
なまえの結婚に問題があるなら、君も気になるよね?」
ハンジさんは、私の隣に座るリヴァイ兵長にまで声を掛けた。
ひたすらお酒を飲んでいたリヴァイ兵長が、ハンジさんの方を向く。
まさか、リヴァイ兵長まで巻き込むとは思っていなかったから、私は、焦った。
どうしよう———。
そう考えていると、リヴァイ兵長が私を見て、目が合った。
ドキッとしてしまったのが、恋心からなのか、焦っているからなのか、もう分からなかった。
それくらい、私は緊張していて、心臓が破裂しそうなくらいにドキドキしていた。
目が合っている時間が凄く長く感じたけれど、実際は数秒間程度だったはずだ。
少し間をあけてから、リヴァイ兵長は、持っていたグラスをテーブルに置いてから、口を開いた。
「お前、本当にアイツに惚れてるのか?」
「それは…。」
はい———。
ハッキリとそう答えなければならないことは、頭の隅でちゃんと分かっていた。
でも、嘘を吐けなかった。
それは、両親からの教えとか、そういうのではなくて、ただ単純に、好きな人に嘘を吐きたくなくて———。
リヴァイ兵長がしたのは、前と同じ質問だった。
殆ど同期で、共に命を懸けて来た仲間として、私の幸せを願ってくれているだけだろうか。
それとも———。
また、いつまでもちゃんと答えなかったら、リヴァイ兵長は私の唇を塞ごうとするのだろうか。
薄くて、綺麗な、その唇で———。
「ハンジさんもリヴァイ兵長も、あんまりなまえをいじめないであげてよ。」
助けてくれたのは、事情を知っているナナバだった。
ハンジさんの腕を掴んで、強引に私から引き剥がすと、隣に腰を降ろした。
そして、私の腰を抱き寄せてから、困ったような笑みを浮かべて続けた。
「結婚が決まってから、マリッジブルーになってるんですよ。
よくあることだろう?
———な?なまえ?」
ナナバが私の顔を覗き込む。
そして、ハンジさんとリヴァイ兵長に見えないように、ウィンクをした。
本当の気持ちを吐露してしまいそうだった私は、強い味方の登場に、心底ホッとした。
そして、不要なくらいに何度も頷いた。
肩から力が抜けて、自然と頬が緩む。
すると、私の隣をナナバに奪われたハンジさんが、向かいのソファに座ってから、ニコリと笑った。
「へぇ、マリッジブルーか~。
ナナバは話を聞いてるんだね~。」
「私達は同期で親友ですからね。」
ナナバは笑顔で答えて、私の手をギュッと握った。
私は不安になりながら、ナナバの手を握り返した。
「それなら、ゲルガーも知ってるのかな?」
「そうですね。アレも知ってますけど、理解してるかどうかは分かりませんね。
女心なんて分からない馬鹿ですから。」
ナナバがアハハと笑うと、ハンジさんもそれに合わせてわざとらしく笑った。
ハンジさんが、信じていないのは分かった。
でも、隣にいるリヴァイ兵長がどんな顔をしたのかは、怖くて見れなかった。
(どうにかして、信じてもらわなくちゃ———。)
ナナバの手をギュッと握りしめながら、私はどうすればいいかを必死に考えた。
そして、ひとつ、決意をした———。