◇第二十二話◇姫はまだ誰のものでもない
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ジャンは、気持ち良さそうに寝ているなまえにブランケットをかけてやりながら、さっき、ハンジから聞いた昔の話を思い出していた。
潔癖症のリヴァイが、酒を呑んだ後に風呂にも入っていない酔っ払いを、自分のベッドに入れてやるのも信じられないことだ。
それが、一緒に寝るなんて、少なからず好意がなければ無理に決まっている。
そして、それを、巨人だけに限らず人間も観察するのが趣味のハンジが気づいていないわけがないのだ。
それに、リヴァイは、パーソナルスペースに、簡単に他人を入れる男じゃないことくらい皆が知っている。
だから、あのときのあれは絶対に、空気を読めない馬鹿じゃない。
「どうして、リヴァイ兵長と恋人じゃないんすか?」
頬にかかった横髪を耳にかけてやりながら、ジャンは眠るなまえに訊ねた。
でも、ぐっすり眠っているなまえから返ってくるのは、規則的な寝息だけだ。
眠っているなまえからの返事なんて、期待もしていないし、答えが欲しいとも思っていない。
ただ、なまえがリヴァイに片想いをしていることは確実で、リヴァイもなまえに少なからず好意があるのなら、2人が恋人という関係になった方がよかったのではないかと、そう思っただけなのだ。
もしも、そうなっていたとしても、誰かがとやかく言うこともないはずだ。
自分がなまえに出逢うよりもずっと前に、2人が恋人になっていてもおかしくはなかった———。
ハンジの話を聞きながら、そんなことを考えていた。
だって、正直、人類最強の兵士と〝眠り姫〟なら、とてもお似合いだ。
それこそ、なまえがよく妄想している、騎士とお姫様の物語みたいじゃないか。
それに、あの勇敢で誰よりも強い騎士のモデルはきっと、彼だろうから———。
リヴァイが、自分の出生のことを気にしているのなら、それこそ大間違いだ。
なまえもなまえの両親も、そんなことは気にしない。
彼女を誰よりも愛しさえするのなら———。
(もっと早く兵長が攫ってくれてたら、
俺と恋人のフリをする必要もなかったし、
なまえさんが背負う呪いも、もっと軽くなってたかもしれねぇのに。)
何の穢れも知らないような柔らかい頬を撫でながら、そんなことを考えていたら、無意識に指に力が入ってしまった。
少しだけ眉を顰めて、なまえが寝返りを打って反対の方を向く。そして、そのついでにとばかりに、ブランケットを蹴り飛ばした。
「なんでいつもそうなっちまうんですか。」
ため息を吐きながら、苦笑いを零して、ジャンは、もう一度、なまえにブランケットをかけてやる。
彼女の呪いを解いてくれるのなら、誰でもよかった。
いや、違う。その役はリヴァイなのだと思っていた。
でも、実際は———。
「なまえさん、ハンジさんが俺達のこと完全に怪しんでますよ。
気合い入れて恋人のフリしねぇと、きっとすぐバレちまいますよ。」
壁を向いて眠っているなまえの耳元に口を近づけたジャンは、警告を出した。
なまえが小さく唸りながら、ブランケットを掴んで口元まで隠す。
「うーん、わかってるぅ…。」
絶対に分かっていない返事だ。
だから、ジャンは、もう一度、彼女の耳元で続ける。
「なまえさんの恋人は誰ですか?」
「ん~~~…。」
「ほら、ちゃんと答えてください。
じゃないと、おはようのキスして、
大好きな夢から引っ張り出してやりますからね。」
「ん~~~~。
———じゃあ…、リヴァイさんが、いい…。」
面倒くさそうに眉を顰めたなまえが、寝ぼけながら答えた。
想像通りの答えに、苦笑も出ない。
「馬鹿、違ぇだろ。」
小さな声で吐き出すように言ってから、ジャンはなまえの頬に唇を落とした。
微かに聞こえる寝息は規則的なままで、頬へのキスくらいでは、大好きな夢の邪魔にはならなかったらしい。
無防備すぎる彼女の今後が心配になる。
「正解は、」
身体を起こしたジャンは、眠るなまえに教えてやろうとしたけれど、すぐに考えを改めた。
息を吐いて、ゆっくりと立ち上がる。
今夜は、殆ど移動で、駅馬車に座っていただけなのに、ひどく疲れた。
自分の分の旅行バッグを持ったジャンは、首の後ろに手をやって、凝り固まった肩をほぐしながら、扉へ向かう。
そして、〝眠り姫〟の部屋から出るために、扉を開いた。
踏み出そうとした足を止めたジャンは、一度振り返り、ベッドで眠る彼女へ視線を這わした。
気持ちよさそうに眠る彼女は今頃、どんな夢を見ているのだろう。
そこでは、彼女は、呪いから解き放たれて、失ってきたいろんなものや、大切な人達と一緒に笑っているのだろう。
そして、隣には、大好きな騎士がいるのかもしれない。
でも、それはただの夢。現実は違う。
いつまでも、夢を見ているわけにはいかないのだ。
なぜなら、自分達は、この残酷な世界で生きているのだから。
だから、さっきの質問の答えは、誰にも教えてやる気はない。
絶対に———。
あぁ、正解は——————。
潔癖症のリヴァイが、酒を呑んだ後に風呂にも入っていない酔っ払いを、自分のベッドに入れてやるのも信じられないことだ。
それが、一緒に寝るなんて、少なからず好意がなければ無理に決まっている。
そして、それを、巨人だけに限らず人間も観察するのが趣味のハンジが気づいていないわけがないのだ。
それに、リヴァイは、パーソナルスペースに、簡単に他人を入れる男じゃないことくらい皆が知っている。
だから、あのときのあれは絶対に、空気を読めない馬鹿じゃない。
「どうして、リヴァイ兵長と恋人じゃないんすか?」
頬にかかった横髪を耳にかけてやりながら、ジャンは眠るなまえに訊ねた。
でも、ぐっすり眠っているなまえから返ってくるのは、規則的な寝息だけだ。
眠っているなまえからの返事なんて、期待もしていないし、答えが欲しいとも思っていない。
ただ、なまえがリヴァイに片想いをしていることは確実で、リヴァイもなまえに少なからず好意があるのなら、2人が恋人という関係になった方がよかったのではないかと、そう思っただけなのだ。
もしも、そうなっていたとしても、誰かがとやかく言うこともないはずだ。
自分がなまえに出逢うよりもずっと前に、2人が恋人になっていてもおかしくはなかった———。
ハンジの話を聞きながら、そんなことを考えていた。
だって、正直、人類最強の兵士と〝眠り姫〟なら、とてもお似合いだ。
それこそ、なまえがよく妄想している、騎士とお姫様の物語みたいじゃないか。
それに、あの勇敢で誰よりも強い騎士のモデルはきっと、彼だろうから———。
リヴァイが、自分の出生のことを気にしているのなら、それこそ大間違いだ。
なまえもなまえの両親も、そんなことは気にしない。
彼女を誰よりも愛しさえするのなら———。
(もっと早く兵長が攫ってくれてたら、
俺と恋人のフリをする必要もなかったし、
なまえさんが背負う呪いも、もっと軽くなってたかもしれねぇのに。)
何の穢れも知らないような柔らかい頬を撫でながら、そんなことを考えていたら、無意識に指に力が入ってしまった。
少しだけ眉を顰めて、なまえが寝返りを打って反対の方を向く。そして、そのついでにとばかりに、ブランケットを蹴り飛ばした。
「なんでいつもそうなっちまうんですか。」
ため息を吐きながら、苦笑いを零して、ジャンは、もう一度、なまえにブランケットをかけてやる。
彼女の呪いを解いてくれるのなら、誰でもよかった。
いや、違う。その役はリヴァイなのだと思っていた。
でも、実際は———。
「なまえさん、ハンジさんが俺達のこと完全に怪しんでますよ。
気合い入れて恋人のフリしねぇと、きっとすぐバレちまいますよ。」
壁を向いて眠っているなまえの耳元に口を近づけたジャンは、警告を出した。
なまえが小さく唸りながら、ブランケットを掴んで口元まで隠す。
「うーん、わかってるぅ…。」
絶対に分かっていない返事だ。
だから、ジャンは、もう一度、彼女の耳元で続ける。
「なまえさんの恋人は誰ですか?」
「ん~~~…。」
「ほら、ちゃんと答えてください。
じゃないと、おはようのキスして、
大好きな夢から引っ張り出してやりますからね。」
「ん~~~~。
———じゃあ…、リヴァイさんが、いい…。」
面倒くさそうに眉を顰めたなまえが、寝ぼけながら答えた。
想像通りの答えに、苦笑も出ない。
「馬鹿、違ぇだろ。」
小さな声で吐き出すように言ってから、ジャンはなまえの頬に唇を落とした。
微かに聞こえる寝息は規則的なままで、頬へのキスくらいでは、大好きな夢の邪魔にはならなかったらしい。
無防備すぎる彼女の今後が心配になる。
「正解は、」
身体を起こしたジャンは、眠るなまえに教えてやろうとしたけれど、すぐに考えを改めた。
息を吐いて、ゆっくりと立ち上がる。
今夜は、殆ど移動で、駅馬車に座っていただけなのに、ひどく疲れた。
自分の分の旅行バッグを持ったジャンは、首の後ろに手をやって、凝り固まった肩をほぐしながら、扉へ向かう。
そして、〝眠り姫〟の部屋から出るために、扉を開いた。
踏み出そうとした足を止めたジャンは、一度振り返り、ベッドで眠る彼女へ視線を這わした。
気持ちよさそうに眠る彼女は今頃、どんな夢を見ているのだろう。
そこでは、彼女は、呪いから解き放たれて、失ってきたいろんなものや、大切な人達と一緒に笑っているのだろう。
そして、隣には、大好きな騎士がいるのかもしれない。
でも、それはただの夢。現実は違う。
いつまでも、夢を見ているわけにはいかないのだ。
なぜなら、自分達は、この残酷な世界で生きているのだから。
だから、さっきの質問の答えは、誰にも教えてやる気はない。
絶対に———。
あぁ、正解は——————。