◇第百五十話◇友情の花火が未来を照らす
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打ち上げられた何千発の花火が、真っ黒に塗りつぶされた夜空を色鮮やかに彩っていく。
隣でただじっと夜空を見上げる友人の眼鏡も、いつも苦しげに唇を噛んでいた兵士達の瞳も、壁の下で感嘆を漏らす民間人達の声にも、花火の色が滲んでいった。
私たちは今、未来への期待と喜び、そして、ここに来るまでに失ってきた多くの大切なものを想う愛で、胸がいっぱいだ。
そして私は、悔しくもなる。
1000年もの時をかけて、私たち人類の心に刻み込まれていった虚偽の安寧が、ただのハッタリだったのだと思い知らされたのだ。
ライナー達への尋問は、まだ始まっていない。
これから、リハビリを経ての身体の回復、体調の様子を見て、医療兵から許可が出てから、私が主軸となって行うことになっている。
きっと、耳を塞ぎたくなるような地獄が、たくさん待っているのだろう。
それでも今はただ、この時を祝おう。
友人がいて、仲間がいて、ほんの一歩だけ、自由に近づいた。今夜を祝おう。
壁を守る駐屯兵達が、今夜はその壁の上で酒を呑で大声で笑っている。普段から、ほとんど毎日のように、壁の向こうからニヤニヤと笑う巨人の姿を嫌というほどに見せられてきた駐屯兵達が、今夜はただ、夜空だけを見上げているのだ。
なんて良い日だろう。
「なまえ、お前も、呑むか…っ?」
不意に、声をかけてきたのは、2つ先輩の駐屯兵だった。
トラオム祭りの時、私の肩にわざとぶつかってきて、ジャンを挑発したあの駐屯兵だ。
彼は真っ赤な顔で、右手に持った酒をグイッと私の前に突き出して、ムスッと口をへの字に曲げている。
呆気に取られて、思わず、隣に座るリコの顔を見てしまった。
同じような顔をしているリコと目が合って、すぐに互いにクスリと笑う。
「いただこうかな、ありがとうございます。」
ニコリと微笑んで、酒を受け取れば、彼はホッとしたように息を吐く。
まるで、それが合図になっていたかのように、気づいたら、私とリコの周りには、駐屯兵やいつの間にかやってきていた調査兵達でいっぱいになっていた。
彼らが抱えて持ってきたお菓子やお酒、つまみが溢れ返り、たくさんの笑顔と泣き顔が、私とリコを包む。
ここに、イアンもミタビもいない。イヴにも二度と会えないのかもしれない。
でも、今日の日は、彼らと過ごした日々の延長線上にある。
ーーーーあの日、もっとこうしていたなら…
後悔は、永遠に消えないだろう。
傷はきっと、一生癒えないのだと思う。
それでも私は、彼らと過ごした日々を後悔したくない。
振り返ることすらできない想い出にはしたくない。
私はいつまでも、彼らと共にあるのだ。
信念と執念と、そして、彼らがあの日に見せた勇気と覚悟を引き継いで、新しい未来を作ろう。
「リヴも、見てるかなぁ。」
願望が、ポロリと漏れた。
私の方をチラリと見て、リコが答える。
「見てるはずだ。
今朝、花火を上げることをリヴにも伝えてきた。
何の反応もなかったが…、きっと見てる。我々の勝利を、リヴは見てるよ。」
リコは、言葉ひとつひとつに気持ちを丁寧に載せるように、ゆっくりと話した。
自分にそう言い聞かせている、というのもあるのだろう。
でも、私はリコの願望を信じたい。
私たちはいつも一緒に、花火を見上げていたから。今夜もきっとそうだと、信じたい。
「うん、約束したんだもんね。」
「あぁ。約束したからな。」
私とリコは、互いに顔を見合わせて柔らかく微笑み合った。
クライマックスに近づいた花火が、大きな音を立ててとめどなく夜空に咲いていく。
「約束したからな、なまえがこの花火代を全額持つと。」
「え!?それ、本気だったの!?」
「私が嘘をつく女だと思っていたのか?信じられんな。
今まで、私がお前に嘘をついたことがあったか?」
「あえりえないよ、無理だよっ。」
「知らん。約束は約束だ。」
「そんなぁ〜〜〜…。」
両手で顔を覆って咽び泣く私を見て、リコがカラカラと声を上げて楽しそうに笑った。
隣でただじっと夜空を見上げる友人の眼鏡も、いつも苦しげに唇を噛んでいた兵士達の瞳も、壁の下で感嘆を漏らす民間人達の声にも、花火の色が滲んでいった。
私たちは今、未来への期待と喜び、そして、ここに来るまでに失ってきた多くの大切なものを想う愛で、胸がいっぱいだ。
そして私は、悔しくもなる。
1000年もの時をかけて、私たち人類の心に刻み込まれていった虚偽の安寧が、ただのハッタリだったのだと思い知らされたのだ。
ライナー達への尋問は、まだ始まっていない。
これから、リハビリを経ての身体の回復、体調の様子を見て、医療兵から許可が出てから、私が主軸となって行うことになっている。
きっと、耳を塞ぎたくなるような地獄が、たくさん待っているのだろう。
それでも今はただ、この時を祝おう。
友人がいて、仲間がいて、ほんの一歩だけ、自由に近づいた。今夜を祝おう。
壁を守る駐屯兵達が、今夜はその壁の上で酒を呑で大声で笑っている。普段から、ほとんど毎日のように、壁の向こうからニヤニヤと笑う巨人の姿を嫌というほどに見せられてきた駐屯兵達が、今夜はただ、夜空だけを見上げているのだ。
なんて良い日だろう。
「なまえ、お前も、呑むか…っ?」
不意に、声をかけてきたのは、2つ先輩の駐屯兵だった。
トラオム祭りの時、私の肩にわざとぶつかってきて、ジャンを挑発したあの駐屯兵だ。
彼は真っ赤な顔で、右手に持った酒をグイッと私の前に突き出して、ムスッと口をへの字に曲げている。
呆気に取られて、思わず、隣に座るリコの顔を見てしまった。
同じような顔をしているリコと目が合って、すぐに互いにクスリと笑う。
「いただこうかな、ありがとうございます。」
ニコリと微笑んで、酒を受け取れば、彼はホッとしたように息を吐く。
まるで、それが合図になっていたかのように、気づいたら、私とリコの周りには、駐屯兵やいつの間にかやってきていた調査兵達でいっぱいになっていた。
彼らが抱えて持ってきたお菓子やお酒、つまみが溢れ返り、たくさんの笑顔と泣き顔が、私とリコを包む。
ここに、イアンもミタビもいない。イヴにも二度と会えないのかもしれない。
でも、今日の日は、彼らと過ごした日々の延長線上にある。
ーーーーあの日、もっとこうしていたなら…
後悔は、永遠に消えないだろう。
傷はきっと、一生癒えないのだと思う。
それでも私は、彼らと過ごした日々を後悔したくない。
振り返ることすらできない想い出にはしたくない。
私はいつまでも、彼らと共にあるのだ。
信念と執念と、そして、彼らがあの日に見せた勇気と覚悟を引き継いで、新しい未来を作ろう。
「リヴも、見てるかなぁ。」
願望が、ポロリと漏れた。
私の方をチラリと見て、リコが答える。
「見てるはずだ。
今朝、花火を上げることをリヴにも伝えてきた。
何の反応もなかったが…、きっと見てる。我々の勝利を、リヴは見てるよ。」
リコは、言葉ひとつひとつに気持ちを丁寧に載せるように、ゆっくりと話した。
自分にそう言い聞かせている、というのもあるのだろう。
でも、私はリコの願望を信じたい。
私たちはいつも一緒に、花火を見上げていたから。今夜もきっとそうだと、信じたい。
「うん、約束したんだもんね。」
「あぁ。約束したからな。」
私とリコは、互いに顔を見合わせて柔らかく微笑み合った。
クライマックスに近づいた花火が、大きな音を立ててとめどなく夜空に咲いていく。
「約束したからな、なまえがこの花火代を全額持つと。」
「え!?それ、本気だったの!?」
「私が嘘をつく女だと思っていたのか?信じられんな。
今まで、私がお前に嘘をついたことがあったか?」
「あえりえないよ、無理だよっ。」
「知らん。約束は約束だ。」
「そんなぁ〜〜〜…。」
両手で顔を覆って咽び泣く私を見て、リコがカラカラと声を上げて楽しそうに笑った。
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