◇第百四十八話◇恋人がいるということ
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そっと扉を開いたはずなのに、静かすぎる廊下には、木が軋む音が嫌なほどに大きく響いた。
少し焦りながら、急いで部屋に入ったジャンは、開いたばかりの扉を今度もまた出来る限りそっと閉じた。
昼間、なまえと過ごした時は、白い壁とベッドに光が反射しそうなほど明るかった病室は真っ暗で、夜の闇に沈んでいるようだった。
闇の奥に、一区画だけ淡い光に照らされている場所がある。
窓の向こうの淡い月明かりと、ベッド横の小さな棚に置いてあるランタンの灯りだ。
灯りをすべて消して寝るのが苦手ななまえが、ランタンをつけたままにしていたのだろう。
恋人になった———とは言え、勝手に部屋に忍び込んでいるという背徳感から、ジャンは無意識に忍び足になり、ゆっくり少しずつベッドに近づく。
それでも、自分がいる部屋に誰かが入ってくれば気づくはずだ。何の反応もないということは、なまえは寝ているのだろう。
「…すげー寝てんな。」
ベッドを見下ろしたジャンから、低い声が漏れた。
あまりにも気持ちよさそうに寝気を立てているなまえに、ほんの少しだけ苛立ちを覚えてしまった。
恋人になったという高揚感を抑えきれずに、眠れずにいるのは、どうやらジャンだけだったらしい。
規則正しく上下する胸元と気持ちよさそうな寝息、だらしない寝顔には、不安の欠片も感じられない。
「…ふっ。」
なまえのだらしない寝顔を見ていたら、思わず笑ってしまった。
だって、本当に気の抜けた顔をしているのだ。
こんな残酷で苦しいだけの世界で生きているはずなのに、悩み事なんてなにひとつないみたいな、間抜けな寝顔だ。
きっと、なまえのことだから、やっと気持ちが通じ合ったという安心感で、あっという間に寝てしまったのだろう。
考え方も性格も、本当に彼女とは全く違うのだと改めて感じる。
でも、だからこそ、ジャンはなまえを魅力的に感じ、惹かれるのだろう。なまえもまた、そうなのかもしれない。そう思うと、彼女とは正反対の自分の性格も少しだけ好きになれそうな気がした。
少し焦りながら、急いで部屋に入ったジャンは、開いたばかりの扉を今度もまた出来る限りそっと閉じた。
昼間、なまえと過ごした時は、白い壁とベッドに光が反射しそうなほど明るかった病室は真っ暗で、夜の闇に沈んでいるようだった。
闇の奥に、一区画だけ淡い光に照らされている場所がある。
窓の向こうの淡い月明かりと、ベッド横の小さな棚に置いてあるランタンの灯りだ。
灯りをすべて消して寝るのが苦手ななまえが、ランタンをつけたままにしていたのだろう。
恋人になった———とは言え、勝手に部屋に忍び込んでいるという背徳感から、ジャンは無意識に忍び足になり、ゆっくり少しずつベッドに近づく。
それでも、自分がいる部屋に誰かが入ってくれば気づくはずだ。何の反応もないということは、なまえは寝ているのだろう。
「…すげー寝てんな。」
ベッドを見下ろしたジャンから、低い声が漏れた。
あまりにも気持ちよさそうに寝気を立てているなまえに、ほんの少しだけ苛立ちを覚えてしまった。
恋人になったという高揚感を抑えきれずに、眠れずにいるのは、どうやらジャンだけだったらしい。
規則正しく上下する胸元と気持ちよさそうな寝息、だらしない寝顔には、不安の欠片も感じられない。
「…ふっ。」
なまえのだらしない寝顔を見ていたら、思わず笑ってしまった。
だって、本当に気の抜けた顔をしているのだ。
こんな残酷で苦しいだけの世界で生きているはずなのに、悩み事なんてなにひとつないみたいな、間抜けな寝顔だ。
きっと、なまえのことだから、やっと気持ちが通じ合ったという安心感で、あっという間に寝てしまったのだろう。
考え方も性格も、本当に彼女とは全く違うのだと改めて感じる。
でも、だからこそ、ジャンはなまえを魅力的に感じ、惹かれるのだろう。なまえもまた、そうなのかもしれない。そう思うと、彼女とは正反対の自分の性格も少しだけ好きになれそうな気がした。