◇第百三十七話◇守りたい人と守るべき想い(2)
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『その人がいるだけで、強くなれる気がする。』
なまえとジャン、どちらの命を守るべきか———。
迷いが生まれたリヴァイの脳裏に蘇ってきたのは、いつかのなまえの声だった。
『すべてがキラキラ輝いて、まるで、起きてるのに、夢の世界にいるような気分になれる。
ううん…夢の世界なんかよりもずっと楽しくて、幸せ。———。』
なまえは、ジャンを想う気持ちをそんな風に語っていた。
いつもふわふわと笑って楽しそうに夢を語っていた彼女が、本当に心から幸せそうに、愛おしそうに、現実を『夢の世界よりも幸せ』だとハッキリと告げたのだ。
今回の壁外調査での作戦が決まったとき、悩みに悩んだ結果、なまえはジャンにすべてを話すと決めた。
それは、作戦を理解しておくことによって、危険リスク軽減を考えてのことだろう。
ライナーとベルトルトが人類史上最悪の仇であり、友人を殺さなければならないかもしれないと知ったときのジャンの心の心配が消えることはなかった。
それでも、なまえはジャンの命を選んだのだ。
その後、ジャンが補佐官の仕事を継続できそうにないと判断されると、なまえは呆気なく彼の壁外調査への参加を却下した。
それもまた、ジャンの命を思っての決断に違いはない。
いつだってジャンがなまえを守ろうと考えているように、なまえもまた、彼のそばにいることで愛する人の命を必ず守ろうと誓っていたのだ。
忙しい仕事の合間を縫いながらも、彼女が休みなく狂ったように訓練をしていたのはきっとすべてジャンの為だった。
自分が守ってやれないのなら、ジャンを危険な場所へ連れて行くことは絶対にしない———なまえに対するリヴァイの想いと同じだ。
そんなこと、随分と前から分かっていた。
(俺は…っ。)
正直、どちらかしか助けられないというのならば、なまえを助けたい。
申し訳ないけれど、ジャンを見捨てることを選ぶ。
なまえのいない世界なんて地獄なのだ。なまえがいなくなってしまった途端に、世界はどれほど恐ろしい世界になり果てるのだろう。
それはきっと、どんな残酷な現実も敵わないほどの暗闇だ。
そんな世界ではほんの一瞬だって生き永らえたいとは思えない。
けれど、ジャンが死んだら、なまえはその地獄よりも辛い世界で生きていることに苦しみ続けることになるのだろうか。
自分の代わりに愛する人が死んだ———優しい彼女がどれほど傷つくか、容易に想像がつく。
なまえはもう十分に苦しんできた。これ以上の苦しみは、彼女には必要ないはずだ。
(でも…!)
そうだ。傷ついたなまえのそばで支えてやればいい。
せめて生きてさえいれば、なんとかなる。
もしもなまえが、愛する人の死を一生乗り越えられなかったとしても、そばにいてほんの一瞬くらいは幸せだと思わせることは出来るはずだ。
だから————。
『私は————。』
なまえの代わりに死んでくれ———そう伝えれば、ジャンは喜んで頷くのだろう。
けれど、そうはさせないと彼女が叫ぶかのように、脳裏に蘇り続けるなまえの声がリヴァイを引き留める。
今回の作戦で104期の調査兵達を自分に任せて欲しいと頼み込んだ彼女に、エルヴィンは、それは友人を殺さなければならない任務から彼らを外してやりたいからなのかと訊ねたときだった。
あのとき、会議に参加していた幹部は皆、友人としての彼らの心を守る為のなまえなりの判断だと考えたのだ。
けれどなまえは、それに同意しつつも真意は別にあるのだと言った。
むしろ彼女は、今回の作戦で、その想いを特に大切にしているようだった。
彼女が経験した様々なことが、彼女の〝最も大切にしなければならないもの〟を決定づけたのだろう。
それが今の彼女を作っている。
その意志こそが、なまえなのだ。
リヴァイは、ブレードを握る手に力を込めた。
もう決めた。
いつだったか、エレンに『悔いが残らない方を選べ』と助言したことがある。
自分の下した決断がどんな結末を見せることになるのか、そんなことは誰にも分からない。
それでも、人生は選択の連続だ。
いつだって、調査兵に出来るのは悔いが残らない方を選ぶことくらいだった。
「なまえ…、俺はきっと死ぬまで後悔するんだと思う。」
腕を掴むジャンの手を振りほどき、リヴァイはブレードを振りあげる。
ジャンを選んでも、なまえを選んでも、訪れるのは悲劇だけだ。
だからリヴァイは、愛する人の〝想い〟を選んだ。
「ダメー----!!」
頭上から聞こえる甲高い悲鳴がどこか遠くから響くように感じる。
けれど、それが誰のものだったのかを理解する暇はなかった。
リヴァイが迷っていたのは、たぶんほんの数秒だ。
そしてそれよりも短いほんの一瞬で、ジャンとなまえを固く繋いでいた縄が、リヴァイによって断ち切られた。
なまえとジャン、どちらの命を守るべきか———。
迷いが生まれたリヴァイの脳裏に蘇ってきたのは、いつかのなまえの声だった。
『すべてがキラキラ輝いて、まるで、起きてるのに、夢の世界にいるような気分になれる。
ううん…夢の世界なんかよりもずっと楽しくて、幸せ。———。』
なまえは、ジャンを想う気持ちをそんな風に語っていた。
いつもふわふわと笑って楽しそうに夢を語っていた彼女が、本当に心から幸せそうに、愛おしそうに、現実を『夢の世界よりも幸せ』だとハッキリと告げたのだ。
今回の壁外調査での作戦が決まったとき、悩みに悩んだ結果、なまえはジャンにすべてを話すと決めた。
それは、作戦を理解しておくことによって、危険リスク軽減を考えてのことだろう。
ライナーとベルトルトが人類史上最悪の仇であり、友人を殺さなければならないかもしれないと知ったときのジャンの心の心配が消えることはなかった。
それでも、なまえはジャンの命を選んだのだ。
その後、ジャンが補佐官の仕事を継続できそうにないと判断されると、なまえは呆気なく彼の壁外調査への参加を却下した。
それもまた、ジャンの命を思っての決断に違いはない。
いつだってジャンがなまえを守ろうと考えているように、なまえもまた、彼のそばにいることで愛する人の命を必ず守ろうと誓っていたのだ。
忙しい仕事の合間を縫いながらも、彼女が休みなく狂ったように訓練をしていたのはきっとすべてジャンの為だった。
自分が守ってやれないのなら、ジャンを危険な場所へ連れて行くことは絶対にしない———なまえに対するリヴァイの想いと同じだ。
そんなこと、随分と前から分かっていた。
(俺は…っ。)
正直、どちらかしか助けられないというのならば、なまえを助けたい。
申し訳ないけれど、ジャンを見捨てることを選ぶ。
なまえのいない世界なんて地獄なのだ。なまえがいなくなってしまった途端に、世界はどれほど恐ろしい世界になり果てるのだろう。
それはきっと、どんな残酷な現実も敵わないほどの暗闇だ。
そんな世界ではほんの一瞬だって生き永らえたいとは思えない。
けれど、ジャンが死んだら、なまえはその地獄よりも辛い世界で生きていることに苦しみ続けることになるのだろうか。
自分の代わりに愛する人が死んだ———優しい彼女がどれほど傷つくか、容易に想像がつく。
なまえはもう十分に苦しんできた。これ以上の苦しみは、彼女には必要ないはずだ。
(でも…!)
そうだ。傷ついたなまえのそばで支えてやればいい。
せめて生きてさえいれば、なんとかなる。
もしもなまえが、愛する人の死を一生乗り越えられなかったとしても、そばにいてほんの一瞬くらいは幸せだと思わせることは出来るはずだ。
だから————。
『私は————。』
なまえの代わりに死んでくれ———そう伝えれば、ジャンは喜んで頷くのだろう。
けれど、そうはさせないと彼女が叫ぶかのように、脳裏に蘇り続けるなまえの声がリヴァイを引き留める。
今回の作戦で104期の調査兵達を自分に任せて欲しいと頼み込んだ彼女に、エルヴィンは、それは友人を殺さなければならない任務から彼らを外してやりたいからなのかと訊ねたときだった。
あのとき、会議に参加していた幹部は皆、友人としての彼らの心を守る為のなまえなりの判断だと考えたのだ。
けれどなまえは、それに同意しつつも真意は別にあるのだと言った。
むしろ彼女は、今回の作戦で、その想いを特に大切にしているようだった。
彼女が経験した様々なことが、彼女の〝最も大切にしなければならないもの〟を決定づけたのだろう。
それが今の彼女を作っている。
その意志こそが、なまえなのだ。
リヴァイは、ブレードを握る手に力を込めた。
もう決めた。
いつだったか、エレンに『悔いが残らない方を選べ』と助言したことがある。
自分の下した決断がどんな結末を見せることになるのか、そんなことは誰にも分からない。
それでも、人生は選択の連続だ。
いつだって、調査兵に出来るのは悔いが残らない方を選ぶことくらいだった。
「なまえ…、俺はきっと死ぬまで後悔するんだと思う。」
腕を掴むジャンの手を振りほどき、リヴァイはブレードを振りあげる。
ジャンを選んでも、なまえを選んでも、訪れるのは悲劇だけだ。
だからリヴァイは、愛する人の〝想い〟を選んだ。
「ダメー----!!」
頭上から聞こえる甲高い悲鳴がどこか遠くから響くように感じる。
けれど、それが誰のものだったのかを理解する暇はなかった。
リヴァイが迷っていたのは、たぶんほんの数秒だ。
そしてそれよりも短いほんの一瞬で、ジャンとなまえを固く繋いでいた縄が、リヴァイによって断ち切られた。