◇百十三話◇待ち続けた想いは報われた
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ジャンが出て行って30分程経った頃、ミケが今日の会議で出た新しい資料を眺めていると、また扉を叩く音が聞こえた。
自身を名乗る声を聞いて、ミケはすぐに部屋に入るように促す。
「失礼します。頼まれていた書類が出来上がりましたので、ご確認を———。」
「ちょうどよかった、ルル。お前に頼みたいことがあったんだ。」
早速、デスクの上に書類を提出しようとしていたルルの手が止まり、眉がピクリと上がる。
「————何でしょうか。」
くっきりと縁取られたルルの瞳が、上がった眉と一緒に僅かに歪む。
任務中は、後ろで一つに結んでいる長い髪からは、甘いフルーツの香りが漂っている。
彼女と出逢って、巨人よりも美人に睨まれる方が怖いということを、ミケが知ったのはもうずっと昔のことだ。
最近ではすっかり慣れてしまって、むしろ、ルルが笑顔で他の男と話しているところを見る方がずっと怖い。
「フレイヤのことを気にかけてやって欲しい。」
「フレイヤですか?」
「あぁ。実は———。」
ミケは、リヴァイから聞いた話と、今日のフレイヤとジャンの様子を、かいつまんで説明した。
元々、無口なミケは、言葉数が少ない。
過去の恋人達には、言葉が足りないとよく怒られていた。本人も、気を付けようとその度に思うのだけれど、すぐに変わることも出来なければ、それがミケという男なので、そもそも変わる変わらないという問題ですらないのだ。
今回も、何をどうしてほしいとまで、ミケが詳しく説明することはなかった。
ただ、事実を淡々と告げただけだ。
静かに話を聞き終わると、ルルは大きなため息を吐いた。
「それで、フレイヤの立場が悪くなる可能性があるのを心配したミケさんは、
勝手に私の名前を伝えて、何かあれば頼れと言ったんですか?」
想定内であることが嬉しくて、ミケは返事をする代わりにフッと鼻を鳴らして笑う。
いつだって、ルルは自分の言葉の真意を理解してくれる。
だから、安心してそばにいられる。補佐官がついているのはなまえくらいだが、ミケにとってもルルはとても大切な補佐だ。
「お前がいてくれて、助かる。」
「そのおかげで、私は大変ですよ。
提出期限間近の書類を押し付けては、助かる助かると言ってばかりいないで、
少しは私を労わって頂けると嬉しいんですけどね。」
「そうだな。今度、飯でも奢ろう。次の非番の日をあけておいてくれ。」
ルルを食事に誘ったのは初めてだった。
でも、いつか今までの礼も込めて、食事に誘いたいとずっと考えていたのだ。
だが、想定外だったらしいルルは、印象的なアーモンド形の瞳を大きく見開いて固まってしまった。
(呆然とすると、こんな顔になるのか。)
彼女の表情を眺めながら、そんなことを考えていると、ルルがふっと顔の筋肉を緩めた。
「絶対ですよ。約束ですからね。」
念を押すように言うルルは、これでもかという程に頬を緩めている。
女心には疎いミケは、ルルが自分にしてくれるように、彼女の言葉の真意を読めたことは皆無に近い。
けれど、今の彼女の表情を見れば、食事に誘われたことに対して好意的に受け取ってくれたことは分かる。
むしろ、とても嬉しいのだということが伝わってきて、ミケの頬も無意識に緩んでいた。
自身を名乗る声を聞いて、ミケはすぐに部屋に入るように促す。
「失礼します。頼まれていた書類が出来上がりましたので、ご確認を———。」
「ちょうどよかった、ルル。お前に頼みたいことがあったんだ。」
早速、デスクの上に書類を提出しようとしていたルルの手が止まり、眉がピクリと上がる。
「————何でしょうか。」
くっきりと縁取られたルルの瞳が、上がった眉と一緒に僅かに歪む。
任務中は、後ろで一つに結んでいる長い髪からは、甘いフルーツの香りが漂っている。
彼女と出逢って、巨人よりも美人に睨まれる方が怖いということを、ミケが知ったのはもうずっと昔のことだ。
最近ではすっかり慣れてしまって、むしろ、ルルが笑顔で他の男と話しているところを見る方がずっと怖い。
「フレイヤのことを気にかけてやって欲しい。」
「フレイヤですか?」
「あぁ。実は———。」
ミケは、リヴァイから聞いた話と、今日のフレイヤとジャンの様子を、かいつまんで説明した。
元々、無口なミケは、言葉数が少ない。
過去の恋人達には、言葉が足りないとよく怒られていた。本人も、気を付けようとその度に思うのだけれど、すぐに変わることも出来なければ、それがミケという男なので、そもそも変わる変わらないという問題ですらないのだ。
今回も、何をどうしてほしいとまで、ミケが詳しく説明することはなかった。
ただ、事実を淡々と告げただけだ。
静かに話を聞き終わると、ルルは大きなため息を吐いた。
「それで、フレイヤの立場が悪くなる可能性があるのを心配したミケさんは、
勝手に私の名前を伝えて、何かあれば頼れと言ったんですか?」
想定内であることが嬉しくて、ミケは返事をする代わりにフッと鼻を鳴らして笑う。
いつだって、ルルは自分の言葉の真意を理解してくれる。
だから、安心してそばにいられる。補佐官がついているのはなまえくらいだが、ミケにとってもルルはとても大切な補佐だ。
「お前がいてくれて、助かる。」
「そのおかげで、私は大変ですよ。
提出期限間近の書類を押し付けては、助かる助かると言ってばかりいないで、
少しは私を労わって頂けると嬉しいんですけどね。」
「そうだな。今度、飯でも奢ろう。次の非番の日をあけておいてくれ。」
ルルを食事に誘ったのは初めてだった。
でも、いつか今までの礼も込めて、食事に誘いたいとずっと考えていたのだ。
だが、想定外だったらしいルルは、印象的なアーモンド形の瞳を大きく見開いて固まってしまった。
(呆然とすると、こんな顔になるのか。)
彼女の表情を眺めながら、そんなことを考えていると、ルルがふっと顔の筋肉を緩めた。
「絶対ですよ。約束ですからね。」
念を押すように言うルルは、これでもかという程に頬を緩めている。
女心には疎いミケは、ルルが自分にしてくれるように、彼女の言葉の真意を読めたことは皆無に近い。
けれど、今の彼女の表情を見れば、食事に誘われたことに対して好意的に受け取ってくれたことは分かる。
むしろ、とても嬉しいのだということが伝わってきて、ミケの頬も無意識に緩んでいた。