◇百十三話◇待ち続けた想いは報われた
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部屋を飛び出したフレイヤは、そのまま真っ直ぐに逃げることは出来なかった。
扉をノックしようとしていた調査兵とぶつかってしまったのだ。
彼女と同じように、時間を指定されて執務室に呼ばれていたジャンだ。
「あ。」
顔を見合わせて、互いを認識すると、ジャンから小さな声が漏れた。
「…っ、私、謝りませんから…!!」
咄嗟に目を逸らしたフレイヤは、捨て台詞を吐くと今度こそ本当に逃げ去っていく。
彼女の勢いに呆気にとられているジャンが可笑しくて、ミケはフッと鼻を鳴らして笑った。
「とりあえず、中に入らないか。」
「あ…!はい…!失礼します…!」
ミケに促されて、ジャンが恐縮した様子で部屋に入る。
そして、静かに扉を閉め、さっきまでフレイヤが立っていた場所までやって来た。
「悪かったな。鉢合わせないように時間を調整したつもりだったんだが、
思ったよりも話が長くなってしまった。」
ミケが謝罪をすれば、ジャンはすぐに頭を下げて、声を張り上げた。
「今回は、任務外の問題で、ミケさんにまでご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありません!」
すぐに黙り込んでしまったフレイヤとは全く違う反応だ。
正直に話す方が、効率が良いことを理解しているのだろう。
きっと、話もすぐに終わる。
「頭を上げろ。これも俺の仕事だ。構わない。」
もう一度、謝罪をしてから、ジャンが頭を上げる。
顔色が悪い。目の下にはうっすらと隈も残っている。
昨晩、ジャンにかけられた誤解は解いておいたとリヴァイから聞いていたけれど、それでも、何を言われるのか不安で眠れなかったのかもしれない。
自分の声が誰にも届かないことほど、孤独で苦しいことはないものだ。
それを、ジャンは嫌というほどに実感したのだろう。
自分の我儘で冤罪を生み出すことは間違っている。敢えて、ミケからフレイヤに罰を与えることはしないけれど、彼女はこれからその責任を嫌でも負わなければならなくなるはずだ。
間違いを起こしたものに対して、世間の目というものは、とても冷たい。それが、共に切磋琢磨していく仲である仲間の目となれば、尚更厳しくなるもものだ。
でも、今回のことは、素直になれないジャンにとっては、良い経験だったのではないかともミケは考えていた。
おそらく、リヴァイもだ。
「心配しなくていい。お前が罪に問われることはなくなった。」
「え?」
「フレイヤが、お前は何も悪くないと認めた。
すべて自分の勘違いだと言っていた。」
「え!?フレイヤが!?」
まさか彼女が素直に自分の嘘を認めるなんて信じられない————驚いて目を見開いたジャンの顔には、そう書いてある。
だが、ミケにとっては、彼女のその言動は不思議なものではなかった。
部下のことはそれなりに見ているつもりだ。
確かに、フレイヤのやり方は間違っていたかもしれない。だが、彼女がジャンに認めてもらいたいと必死に頑張っていた気持ちには、嘘はなかった。
最初から、フレイヤが、本気でジャンの人生を壊そうとするわけがなかったのだ。
「今後、ジャンがフレイヤとどう付き合っていくかはお前達で決めればいい。
お互いに、もう仲間として、信頼することが出来ないというならそれも仕方ない。
だが、それは他の調査兵達の命にも関わる。お前達のどちらかに分隊を移ってもらう必要が出るが———。」
「必要ありません。俺が、彼女を傷つけたのは事実です。
きちんと謝罪して、もう一度、今度こそ仲間として信頼関係を築けるよう努力していきます。」
「そうか。」
フッと鼻を鳴らしてミケが、満足気に笑みを漏らす。
真っ直ぐな意思も、ぶれない態度も、想定通りだった。
それがどうして、なまえのことになると、後ろ向きになりがちなのか———そこが残念だと、内心思う。
だがそれも、それだけ想いが強い証拠なのだとすれば、仕方のないことなのかもしれない。
「偶々、なまえとリヴァイがそばを通りかかってよかったな。
そうじゃなければ、お前は今頃、誰にも信じてもらえずに背負う必要のない罪に苦しめられるところだった。
正義を掲げ自分達が間違うはずがないと信じてる耳に、冤罪を訴える声を届けるのは、至難の業だ。」
「…そう、ですね。」
ジャンは、拳を握りしめていた。
床を睨みつける姿が、少しだけフレイヤと重なる。違うのは、フレイヤが許せなかったのは、自分が罪を認めることで、ジャンが許せなかったのは、間違いを犯した自分だということだ。
「アイツらには、忘れずに礼を伝えておけ。」
「わかりました。」
ジャンが、なまえに会いに行く勇気を持てるかどうかは分からない。
けれど、ジャンはしっかりと頭を下げてから、しっかりとした足取りで執務室を後にした。
扉をノックしようとしていた調査兵とぶつかってしまったのだ。
彼女と同じように、時間を指定されて執務室に呼ばれていたジャンだ。
「あ。」
顔を見合わせて、互いを認識すると、ジャンから小さな声が漏れた。
「…っ、私、謝りませんから…!!」
咄嗟に目を逸らしたフレイヤは、捨て台詞を吐くと今度こそ本当に逃げ去っていく。
彼女の勢いに呆気にとられているジャンが可笑しくて、ミケはフッと鼻を鳴らして笑った。
「とりあえず、中に入らないか。」
「あ…!はい…!失礼します…!」
ミケに促されて、ジャンが恐縮した様子で部屋に入る。
そして、静かに扉を閉め、さっきまでフレイヤが立っていた場所までやって来た。
「悪かったな。鉢合わせないように時間を調整したつもりだったんだが、
思ったよりも話が長くなってしまった。」
ミケが謝罪をすれば、ジャンはすぐに頭を下げて、声を張り上げた。
「今回は、任務外の問題で、ミケさんにまでご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありません!」
すぐに黙り込んでしまったフレイヤとは全く違う反応だ。
正直に話す方が、効率が良いことを理解しているのだろう。
きっと、話もすぐに終わる。
「頭を上げろ。これも俺の仕事だ。構わない。」
もう一度、謝罪をしてから、ジャンが頭を上げる。
顔色が悪い。目の下にはうっすらと隈も残っている。
昨晩、ジャンにかけられた誤解は解いておいたとリヴァイから聞いていたけれど、それでも、何を言われるのか不安で眠れなかったのかもしれない。
自分の声が誰にも届かないことほど、孤独で苦しいことはないものだ。
それを、ジャンは嫌というほどに実感したのだろう。
自分の我儘で冤罪を生み出すことは間違っている。敢えて、ミケからフレイヤに罰を与えることはしないけれど、彼女はこれからその責任を嫌でも負わなければならなくなるはずだ。
間違いを起こしたものに対して、世間の目というものは、とても冷たい。それが、共に切磋琢磨していく仲である仲間の目となれば、尚更厳しくなるもものだ。
でも、今回のことは、素直になれないジャンにとっては、良い経験だったのではないかともミケは考えていた。
おそらく、リヴァイもだ。
「心配しなくていい。お前が罪に問われることはなくなった。」
「え?」
「フレイヤが、お前は何も悪くないと認めた。
すべて自分の勘違いだと言っていた。」
「え!?フレイヤが!?」
まさか彼女が素直に自分の嘘を認めるなんて信じられない————驚いて目を見開いたジャンの顔には、そう書いてある。
だが、ミケにとっては、彼女のその言動は不思議なものではなかった。
部下のことはそれなりに見ているつもりだ。
確かに、フレイヤのやり方は間違っていたかもしれない。だが、彼女がジャンに認めてもらいたいと必死に頑張っていた気持ちには、嘘はなかった。
最初から、フレイヤが、本気でジャンの人生を壊そうとするわけがなかったのだ。
「今後、ジャンがフレイヤとどう付き合っていくかはお前達で決めればいい。
お互いに、もう仲間として、信頼することが出来ないというならそれも仕方ない。
だが、それは他の調査兵達の命にも関わる。お前達のどちらかに分隊を移ってもらう必要が出るが———。」
「必要ありません。俺が、彼女を傷つけたのは事実です。
きちんと謝罪して、もう一度、今度こそ仲間として信頼関係を築けるよう努力していきます。」
「そうか。」
フッと鼻を鳴らしてミケが、満足気に笑みを漏らす。
真っ直ぐな意思も、ぶれない態度も、想定通りだった。
それがどうして、なまえのことになると、後ろ向きになりがちなのか———そこが残念だと、内心思う。
だがそれも、それだけ想いが強い証拠なのだとすれば、仕方のないことなのかもしれない。
「偶々、なまえとリヴァイがそばを通りかかってよかったな。
そうじゃなければ、お前は今頃、誰にも信じてもらえずに背負う必要のない罪に苦しめられるところだった。
正義を掲げ自分達が間違うはずがないと信じてる耳に、冤罪を訴える声を届けるのは、至難の業だ。」
「…そう、ですね。」
ジャンは、拳を握りしめていた。
床を睨みつける姿が、少しだけフレイヤと重なる。違うのは、フレイヤが許せなかったのは、自分が罪を認めることで、ジャンが許せなかったのは、間違いを犯した自分だということだ。
「アイツらには、忘れずに礼を伝えておけ。」
「わかりました。」
ジャンが、なまえに会いに行く勇気を持てるかどうかは分からない。
けれど、ジャンはしっかりと頭を下げてから、しっかりとした足取りで執務室を後にした。