◇第百九話◇諦める理由を探してる
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ジャンは、納得なんて、出来なかった。
それでも、調査兵団幹部の決定ならば、受け入れなければならない。受け入れるべきなのだろう。
けれど、漸く許可の下りた次回壁外調査への参加を見合わせることが決定したとミケから報告があった翌日、ジャンは、ピリピリとした空気を引きつれながら、部屋を出た。
早朝ということもあってか、廊下にはひんやりと冷たくも気持ちの良い風が流れている。
早起きの調査兵が、窓を開けておいたのだろう。
(どうして…!)
窓の向こうでは、朝日が輝き、チラリと覗く木々は朝露で煌めいているというのに、ジャンの内側では、快晴の空には似つかわしくない感情が渦を巻いている。
昨日から、ずっとだ。
ジャンは、右手に持つ封筒を強く握りしめる。
心地の良い朝の風に吹かれて、書いたばかりの退団届を飛ばされるわけにはいかない。
『どうしてですか!!』
『復帰には時期早々というエルヴィンの判断だ。俺達も同意した。』
『なん、すか…、それ。体よく俺を除け者にしてぇだけでしょ…っ。』
『そういうわけでは———。』
『俺が、邪魔ならそう言えばいいじゃないっすか…っ。
リヴァイ兵長も、なまえ…あの人も、俺の顔を見たくねぇからって…!』
『ジャン。』
『…っ。』
『俺は…俺達は、ジャン・キルシュタインという大切な兵士を失いたくないんだ。
分かってくれ。』
言ってはいけないことを言ったことは分かっていた。
リヴァイもなまえも、任務に私情を挟むような未熟な兵士ではないことくらいよく知っている。
けれど、頭では理解していても、ジャンの心が、納得できなかったのだ。
言い足りない、けれどこれ以上何かを言える立場にはいない。
悔しさに唇を噛むジャンの肩に、ミケが申し訳なさそうに乗せた手はとても大きくて、自分と彼の懐の大きさの違いを突きつけられたようだった。
惨めだった。
すごく。泣きたくなるほどに、惨めだった。
「おはようございます!」
同じ分隊の後輩が、すれ違い様に頭を下げて挨拶をしていく。
それに先輩面をして返す見慣れた光景も、すぐに見られなくなるのか———そう思った途端に胸にこみ上げてきたものが、後悔なのか、もう二度と誰かのために命をかけなくてもよくなることに対しての安堵なのか。自分でも分からなかった。
それでも、調査兵団幹部の決定ならば、受け入れなければならない。受け入れるべきなのだろう。
けれど、漸く許可の下りた次回壁外調査への参加を見合わせることが決定したとミケから報告があった翌日、ジャンは、ピリピリとした空気を引きつれながら、部屋を出た。
早朝ということもあってか、廊下にはひんやりと冷たくも気持ちの良い風が流れている。
早起きの調査兵が、窓を開けておいたのだろう。
(どうして…!)
窓の向こうでは、朝日が輝き、チラリと覗く木々は朝露で煌めいているというのに、ジャンの内側では、快晴の空には似つかわしくない感情が渦を巻いている。
昨日から、ずっとだ。
ジャンは、右手に持つ封筒を強く握りしめる。
心地の良い朝の風に吹かれて、書いたばかりの退団届を飛ばされるわけにはいかない。
『どうしてですか!!』
『復帰には時期早々というエルヴィンの判断だ。俺達も同意した。』
『なん、すか…、それ。体よく俺を除け者にしてぇだけでしょ…っ。』
『そういうわけでは———。』
『俺が、邪魔ならそう言えばいいじゃないっすか…っ。
リヴァイ兵長も、なまえ…あの人も、俺の顔を見たくねぇからって…!』
『ジャン。』
『…っ。』
『俺は…俺達は、ジャン・キルシュタインという大切な兵士を失いたくないんだ。
分かってくれ。』
言ってはいけないことを言ったことは分かっていた。
リヴァイもなまえも、任務に私情を挟むような未熟な兵士ではないことくらいよく知っている。
けれど、頭では理解していても、ジャンの心が、納得できなかったのだ。
言い足りない、けれどこれ以上何かを言える立場にはいない。
悔しさに唇を噛むジャンの肩に、ミケが申し訳なさそうに乗せた手はとても大きくて、自分と彼の懐の大きさの違いを突きつけられたようだった。
惨めだった。
すごく。泣きたくなるほどに、惨めだった。
「おはようございます!」
同じ分隊の後輩が、すれ違い様に頭を下げて挨拶をしていく。
それに先輩面をして返す見慣れた光景も、すぐに見られなくなるのか———そう思った途端に胸にこみ上げてきたものが、後悔なのか、もう二度と誰かのために命をかけなくてもよくなることに対しての安堵なのか。自分でも分からなかった。