◇第百六話◇貴方のいない空っぽの世界で
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兵舎の中央にある庭は、敷地が広いばかりで、憲兵団本部のような豪華さはない。
あるのは、手入れが行き届いた木々と古くなったガーデンテーブル、ベンチだけだ。
非番を庭でのんびりと過ごそうと思った調査兵は多く、あちこちに、見知った顔が談笑を楽しんでいる。
そんな中、私とリヴァイ兵長は、一番端にある大きな木の木陰に並んで座っていた。
『私、ジャンさんにキスされたんです。』
ページをめくる手が、止まらない。
頭の中で、フレイヤの声が鳴り響き続けているから、物語が全然入ってこない。
夢中で本を読んでいるフリをしている私の隣で、リヴァイ兵長は空を見上げていた。
「寝ようかな。」
読みかけの本をパタンと閉じる。
物語の中に逃げようとしたけれどうまくいかなかった私は、逃げ場所を夢の世界へと変えたのだ。
「あぁ、昼寝日和だからな。」
リヴァイ兵長はそう言いながら、私の頭に手を添えた。
優しい手に誘われるまま、私はリヴァイ兵長の肩に頭を乗せた。
そっと、目を閉じる。
このまま、眠ってしまおう。夢が見たい。
私はお姫様で、隣には世界一素敵な騎士がいて、誰よりも愛してくれる。
優しく、守ってくれる。
あぁ、でも———。
どうしてだろう。
瞼を閉じたら、幸せな夢の世界が広がるはずだった。
それなのに、真っ暗になっただけだ。
どうやら、私はもう夢すら見られないらしい。
【あなたは私のすべてよ。】
物語に、そんなセリフがよく登場する。
憧れていたそのセリフが、今では私の胸を締め付ける。
思い知ったのだ。本当に、愛する人は、世界の全てだった。
だから、ジャンのいない世界で、私は空っぽなのだ。
空っぽ、だ。
あるのは、手入れが行き届いた木々と古くなったガーデンテーブル、ベンチだけだ。
非番を庭でのんびりと過ごそうと思った調査兵は多く、あちこちに、見知った顔が談笑を楽しんでいる。
そんな中、私とリヴァイ兵長は、一番端にある大きな木の木陰に並んで座っていた。
『私、ジャンさんにキスされたんです。』
ページをめくる手が、止まらない。
頭の中で、フレイヤの声が鳴り響き続けているから、物語が全然入ってこない。
夢中で本を読んでいるフリをしている私の隣で、リヴァイ兵長は空を見上げていた。
「寝ようかな。」
読みかけの本をパタンと閉じる。
物語の中に逃げようとしたけれどうまくいかなかった私は、逃げ場所を夢の世界へと変えたのだ。
「あぁ、昼寝日和だからな。」
リヴァイ兵長はそう言いながら、私の頭に手を添えた。
優しい手に誘われるまま、私はリヴァイ兵長の肩に頭を乗せた。
そっと、目を閉じる。
このまま、眠ってしまおう。夢が見たい。
私はお姫様で、隣には世界一素敵な騎士がいて、誰よりも愛してくれる。
優しく、守ってくれる。
あぁ、でも———。
どうしてだろう。
瞼を閉じたら、幸せな夢の世界が広がるはずだった。
それなのに、真っ暗になっただけだ。
どうやら、私はもう夢すら見られないらしい。
【あなたは私のすべてよ。】
物語に、そんなセリフがよく登場する。
憧れていたそのセリフが、今では私の胸を締め付ける。
思い知ったのだ。本当に、愛する人は、世界の全てだった。
だから、ジャンのいない世界で、私は空っぽなのだ。
空っぽ、だ。