「アイツに話すのが怖くなったんじゃねぇのか。」

顔色の悪い私を心配して、自室まで一緒に戻ってくれたリヴァイ兵長は、扉が閉めた途端に、言い逃れのできない指摘をした。
私の表情が強張る。
それは、正しかったからだ。
ジャンが私から逃げていく———そんな悪夢のような未来に怯えて、小刻みに身体が震え、脚が震え、立つのもやっとになる。
———そうなっても、おかしくなかったはずだ。
でも、実際は、そうはならなかった。
確かに、あまりにも残酷な真実は、ジャンを絶望の淵にまで追いつめるだろう。
あと一歩、彼が後ずされば、真っ逆さまに落ちてしまう———そうなったとき、彼の目の前にはきっと私がいる。
そして、彼は、悪夢へと落ちていくことよりも、絶望の淵で、私の手を掴み、残酷な現実に立ち向かう道を選ぶ。
そんな映像が、頭の中に流れているのだ。
これは、私の得意で大好きな妄想だろうか。
いや、きっと違う。
それは、そう遠くない未来の彼の決断だ。
私は、ジャンを、信じている。
だから、私は「大丈夫です。」と力強く頷いた。

「ジャンは、きっと私から逃げません。
　あの日の私の決断もすべて受け止めたうえで、叱ってくれるはずだから。」

はりつけたような笑顔で、ニコリと微笑む。
顔色だって、きっと悪いままだ。
でも、大丈夫。
私には、ジャンがいるから———。