◇第七十六話◇残酷な世界に打ちあがる花火が姫を守ってくれますように
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『浴衣か。なかなか似合うじゃないか。』
『ありがとう。着るのが難しくって、間に合わないかと思っちゃったよ。』
『ギリギリだ。ほら、ここに座れ。もうすぐ花火上がるぞ。』
『ふふ、楽しみ。トラオム祭りの花火、大好きなの。』
『あぁ、知ってる。
だから今年もお姫様の為に特等席を用意しておいてやったんだ。
感謝しな。』
『もちろん。あっ、上がった!
———綺麗だね。まるで、夢の世界にいるみたい。』
昔は、毎年楽しみにしていたトラオム祭りだけれど、ジャンの言う通り、ここ数年は、リヴァイ兵長が持ってくる大量の書類に追われるツラい日だった。
でも今年は、年下の偽物婚約者のおかげで、夢のような時間を過ごせるかもしれない。
とても久しぶりに、私は夜空に上がる花火を、心から綺麗だと思えるだろうか———。
ただひとつわかるのは、遠い、遠い日の淡く優しい記憶は、いつまでも私から消えることはないということだけ。