調査兵団の幹部達が帰ってきたのは、それから3日後のことだった。
思いの外、早く帰れそうだというエルヴィンからの手紙を部下から受け取ったその足で、アルミンは幹部達の帰りを出迎える為に兵舎の門へと向かう。

「な？」

隣を歩くジャンが、自慢気に口の端を上げた。
見かけによらず負けず嫌いなアルミンは、なんだかすごく悔しくて、気づかないフリをして門へと急ぐ。
アルミン達が門へ到着するのと、幹部達が兵舎へ入ってくるのはほとんど同時だった。
団長のエルヴィンを先頭にして、兵士長のリヴァイ、その隣に副兵士長のなまえ、そのすぐ後ろに分隊長のハンジやミケ達が続く。
歴戦の兵士達がそれぞれの愛馬に跨り、続々と門をくぐってくるその光景は、まさに圧巻だった。
出迎えの補佐官達や、幹部組の帰還を知ってやってきた調査兵達も、思わず息を呑み、声を失くしてしまったほどだ。
いつもは、のほほんとしていて、部下たちにまで〝眠り姫〟と揶揄されるなまえさえも、凛々しく見えていた。
でもそれも、彼女がジャンの姿を見つけた途端に、一瞬の幻と化してしまう。

「ジャン！」

なまえは、ジャンを見つけると嬉しそうに名前を叫んだ。
そして、そのままの勢いで、愛馬から飛び降りてしまう。
それに気づいたリヴァイが、いつものように彼女を叱る。

「あ、おい、なまえ！お前、今からまだ会議が———。」
「もう無理ですーーー！！今日は休憩すると決めましたーーー！」
「勝手に決めんな！」

背中から聞こえてくるリヴァイの怒りの声も気にしない様子で、なまえが嬉しそうに駆けていく。
そして、補佐で婚約者のジャンに飛びついた。
それは、長い間、引き離されていた恋人たちの感動の再会だった。

「まぁ、いいじゃないか。帰りの日程を早められたのは
　なまえが頑張ってくれたおかげなんだ。」

苦笑を漏らしながらも、エルヴィンからも許可が下りれば、幹部組も仕方がないという顔になる。
それは、心から納得はしていない様子で眉間に皴を寄せるリヴァイも同じだった。
嬉しそうに、彼の胸に頬を寄せる彼女を前にして、文句を言える幹部組は誰もいないようだ。

「・・・これからもそれが続けば、許してやってもいい。」
「えー、それは無理だよ～、なまえだよ～。」
「仕事をしてほしいときには、ジャンと引き離して、
　アイツにまた手紙を送ってもらえばいい。」

ミケの発言に、幹部組が大笑いをしているそばで、なまえは、早速、ジャンに抱えられて寝ていた。

「・・・・え、寝たの？」
「・・・・おやすみって言ったと思ったら、突然寝た。」

隣で起こった現象に驚いたアルミンに、呆気にとられた様子でジャンも答える。
そして、幹部組と一緒に楽しそうに笑った。