◇第七十二話◇嫉妬が醜くさせる
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シャワーを浴び終えて部屋に帰った私が扉を開けると、先に戻っていたらしいジャンが、デスクの椅子に座っていた。
その隣にはステラが立っていて、2人で書類を覗き込みながら話をしている。
彼女もシャワーを浴び終わっているのか、少し前に憲兵団本部の正面玄関前で会った時に着ていたブラウンのドレスから、光沢のあるシルクのロングワンピースのパジャマに着替えていた。
デスクに置いてあるランタンが、彼女の為のスポットライトに見えるくらいに、キラキラと輝いて見えた。
「おかえりなさい。遅かったっすね。」
ジャンが、書類から顔を上げて私の方を向く。
それと同時に、ステラも私の方へと視線を向けた。
「戻ってくる途中に、エレンとミカサに会って少し話してたの。」
「アイツらも来てるんですか?」
「巨人化を掌握してるところを確認する為に、
ナイル師団長が呼んだんだって。アルミンも来てるらしいけど、
団長のとこらしくて会えなかった。」
「へぇ。」
話が終わったタイミングで、ステラが、ジャンの手元から書類をサッと取り上げた。
「じゃ、私は戻るわ。見てくれて、ありがとう。」
「あぁ、その内容ならマルコも知ってるから、
また何か気になることがあればアイツに訊いてみてくれ。」
「そうするわ。おやすみ。
———それじゃ、お邪魔しました。」
おやすみなさい、と軽く私に頭を下げて、ステラは部屋を出て行った。
パタンと閉まった扉をぼんやりと眺めていると、ふわりと包むように大きな腕が、私の胸の前にまわった。
背中にあたる大きくて硬い胸板が温かくて、尖ってしまいそうだった心が、柔らかく溶けていく。
「何処に行っても、髪はかわかさないんすね。」
「だって、何処に行ってもジャンがいるから。」
「俺がいなくなっちまったら、なまえさん、何も出来ませんね。」
私を後ろから抱きしめたまま、ジャンがクスクスと笑う。
いつものように、からかっているだけなのかもしれない。
でも、まるで、もうすぐいなくなってしまう予定みたいに聞こえてしまった。
私じゃなくて、今度からは彼女のそばにずっといるんだって———。
「でも、私が望む限り、ジャンは私のものだって言ったから。」
私は、胸の前にまわったジャンの腕をギュッと握りしめる。
違うのだ。
ジャンが望めば、私はこの手を離すつもりでいる。
それは、私がどんなにジャンを望んでいたとしても、だ。
もしも、どうしても離れたくないと私が手を伸ばしてしまったら、この腕を切り落としていい。
気持ちを伝えないのは、不安だからとか、自信がないからとか、それだけじゃない。
ちゃんと、ジャンが私から離れられるようにしてあげたいからなのだ。
ジャンを好きだというこの気持ちは、ジャンを縛ってしまいそうな気がして———。
あぁ、でも———。
他の誰かのものにならないで———。
「はい、約束します。」
ジャンが、私を抱きしめ直してギュッとする。
安心してしまう。
信じてしまう。
恋人達が交わす甘い戯言みたいな、確約もなにもない口約束を———。
その隣にはステラが立っていて、2人で書類を覗き込みながら話をしている。
彼女もシャワーを浴び終わっているのか、少し前に憲兵団本部の正面玄関前で会った時に着ていたブラウンのドレスから、光沢のあるシルクのロングワンピースのパジャマに着替えていた。
デスクに置いてあるランタンが、彼女の為のスポットライトに見えるくらいに、キラキラと輝いて見えた。
「おかえりなさい。遅かったっすね。」
ジャンが、書類から顔を上げて私の方を向く。
それと同時に、ステラも私の方へと視線を向けた。
「戻ってくる途中に、エレンとミカサに会って少し話してたの。」
「アイツらも来てるんですか?」
「巨人化を掌握してるところを確認する為に、
ナイル師団長が呼んだんだって。アルミンも来てるらしいけど、
団長のとこらしくて会えなかった。」
「へぇ。」
話が終わったタイミングで、ステラが、ジャンの手元から書類をサッと取り上げた。
「じゃ、私は戻るわ。見てくれて、ありがとう。」
「あぁ、その内容ならマルコも知ってるから、
また何か気になることがあればアイツに訊いてみてくれ。」
「そうするわ。おやすみ。
———それじゃ、お邪魔しました。」
おやすみなさい、と軽く私に頭を下げて、ステラは部屋を出て行った。
パタンと閉まった扉をぼんやりと眺めていると、ふわりと包むように大きな腕が、私の胸の前にまわった。
背中にあたる大きくて硬い胸板が温かくて、尖ってしまいそうだった心が、柔らかく溶けていく。
「何処に行っても、髪はかわかさないんすね。」
「だって、何処に行ってもジャンがいるから。」
「俺がいなくなっちまったら、なまえさん、何も出来ませんね。」
私を後ろから抱きしめたまま、ジャンがクスクスと笑う。
いつものように、からかっているだけなのかもしれない。
でも、まるで、もうすぐいなくなってしまう予定みたいに聞こえてしまった。
私じゃなくて、今度からは彼女のそばにずっといるんだって———。
「でも、私が望む限り、ジャンは私のものだって言ったから。」
私は、胸の前にまわったジャンの腕をギュッと握りしめる。
違うのだ。
ジャンが望めば、私はこの手を離すつもりでいる。
それは、私がどんなにジャンを望んでいたとしても、だ。
もしも、どうしても離れたくないと私が手を伸ばしてしまったら、この腕を切り落としていい。
気持ちを伝えないのは、不安だからとか、自信がないからとか、それだけじゃない。
ちゃんと、ジャンが私から離れられるようにしてあげたいからなのだ。
ジャンを好きだというこの気持ちは、ジャンを縛ってしまいそうな気がして———。
あぁ、でも———。
他の誰かのものにならないで———。
「はい、約束します。」
ジャンが、私を抱きしめ直してギュッとする。
安心してしまう。
信じてしまう。
恋人達が交わす甘い戯言みたいな、確約もなにもない口約束を———。