◇第六十六話◇涌いてしまったのは独占欲
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シャワーを終えたジャンが向かったのは自室ではなくて、なまえの部屋だった。
補佐官になってすぐの頃から、就寝までの時間を一緒に過ごしている。
なまえがサボりにサボって溜まった書類仕事を、彼女になんとかやらせるためだ。
少し前までは、仕事という確かな理由がなければ、彼女の部屋に近づくことはなかった。
でも最近は、自然と彼女のいる場所へと足が向く。そして、理由がなくても、就寝までの時間を一緒に過ごしている。
自室で寝ることもあれば、そのまま、彼女を抱きしめて眠ることもある。
もしかすると、今夜からは、抱きしめるだけではないかもしれない————。
期待と不安が入り混じりながら、ジャンはなまえの部屋の扉を、ノックもなしに開いた。
中には、先客がいた。
デスク前で、なまえと一緒に話していたのはリヴァイだった。
彼らは、部屋に入って来たジャンに気づくと、すぐに話を止めて扉の方を向いたが、それぞれの手元にある書類から、仕事の話をしていたのだろうということは容易に想像出来た。
婚約者のいる女が他の男を部屋に連れ込むな、となまえに言ったことがある。
でも、仕事の用事となれば話は別だ。
いちいち目くじらを立てることでもない。
「お疲れ様です、こんな時間まで仕事なんて大変っすね。
今朝提出した書類に不備でもありました?」
「いや、それは問題ねぇ。」
なまえの元へ近づきながら訊ねたジャンに、リヴァイはそう答えながら、彼女の手元から書類を引き抜くように奪い返した。
なまえの仕事なら、漏れなく自分にも関係がある。
それに、わざわざ兵士長であるリヴァイがやってきたことと書類を持っていることから、そう推測したのだけれど、違ったらしい。
それなら何があったのか———その答えは、なまえが教えてくれた。
「明後日、ストヘス区でパーティーがあるらしくて
それに私も参加しなくちゃいけなくなったの。」
「またですか。」
ジャンは、ため息交じりに言う。
なまえがパーティーへの参加を強制させられるのは、珍しいことではない。
元貴族の両親を持っていて、それなりの知識と教養とマナーがあるのも大きいだろうが、単純に、美人のなまえを連れて行けば、華になってくれるからだ。
それだけで、調査兵団のイメージまで華やかになり、出資してくれる額や貴族が増えるのだから、人は見た目だけで物事を判断しがちだということがよく分かる。
だが———。
「でも、その日は確か、分隊の合同訓練ですよ。
ミケさんから、偶には訓練にも参加しろと言われてんのに、どうするんすか?」
「だから、そっちはジャンに任せるよ。
こっちは、リヴァイ兵長がいてくれるから大丈夫。」
「は?」
何を言っているのか、すぐに理解が出来なかった。
だって、なまえの補佐官であるジャンは、殆どの任務を彼女と共にこなしてきたのだ。
それは、パーティーへの同伴も同じだ。
前回の長期出張なんて、離れるのが初めて過ぎて、なまえは寂しさに耐えられずに、寝不足で倒れてしまったくらいだ。
「俺が前日からストヘス区入りして会議に参加してる。
そのまま、エルヴィンとパーティーに参加することになってるから、
なまえの同伴は俺が代わりにしてやれる。問題ねぇ。」
なまえの説明に、リヴァイが補足を入れた。
あぁ、そういうことか———。
彼らが予定している日程の流れは、すぐに頭が理解した。
了解しました、と頭の中で、補佐官の自分が答えている声は聞こえたのだ。
でも、実際にジャンが口にしていたのは、全く違う言葉だった。
「パーティーの同伴は俺がします。」
「え、でも、合同訓練に参加しないとミケ分隊長に怒られちゃうし———。」
「そんなのなまえさんが一緒に出ない時点で同じですよ。」
「なまえが参加出来ねぇことは俺からミケに言ってあるから問題ねぇ。」
「そこは問題なくても、婚約者のいるなまえさんが他の男を同伴して
パーティーに参加するのが大問題ですよ。」
「別に問題ねぇだろ。俺となまえが、兵士長と副兵士長ってのは知られてる。
仕事で来てると誰でも分か———。」
「ダメです。俺が、なまえさんをパーティーに連れて行きます。」
ジャンは、食い気味に意見を押しつけた。
リヴァイが、僅かに眉を顰めた後、なまえの方を見た。
「おい、お前の自慢の補佐官はどこに行きやがった。」
「それが…、私も…よく分かんなくて…。
なんか今日1日中、様子がおかしいんです…。」
「頭に蛆でも涌いてんじゃねぇのか。」
「…もしそうだったら、リヴァイ兵長なら蛆を削げます?」
「…。」
困ったように眉尻を下げるなまえに、リヴァイは途方に暮れたような顔をした。
そして、頑なに、自分がパーティーに参加すると主張するジャンへと視線を向ける。
「…分かった。エルヴィンとミケに伝えておく。
返事は、2人に確認してからだ。」
「どっちにしろ、絶対に俺が行きますから。」
「お前、エレンが乗り移っちまったみてぇだな。」
「は?」
「…まぁ、いい。」
リヴァイは諦めた様に言って、小さく首を横に振った。
そして———。
「なまえ。」
リヴァイは、彼女の名前を呼び捨てで呼んで、耳元に口を近づけた。
なまえも、自然に彼の方へ寄っていく。
彼の口が動いた後に、彼女が真剣に頷いた。
自分には聞かれては困る話なのか———。
そんなことだって、以前からあった。
エルヴィンから兵士長であるリヴァイへと伝わった情報が、副兵士長や分隊長で止まることなんてよくあることだ。
それでも、今日はすごく気に入らなかったのだ。
補佐官になってすぐの頃から、就寝までの時間を一緒に過ごしている。
なまえがサボりにサボって溜まった書類仕事を、彼女になんとかやらせるためだ。
少し前までは、仕事という確かな理由がなければ、彼女の部屋に近づくことはなかった。
でも最近は、自然と彼女のいる場所へと足が向く。そして、理由がなくても、就寝までの時間を一緒に過ごしている。
自室で寝ることもあれば、そのまま、彼女を抱きしめて眠ることもある。
もしかすると、今夜からは、抱きしめるだけではないかもしれない————。
期待と不安が入り混じりながら、ジャンはなまえの部屋の扉を、ノックもなしに開いた。
中には、先客がいた。
デスク前で、なまえと一緒に話していたのはリヴァイだった。
彼らは、部屋に入って来たジャンに気づくと、すぐに話を止めて扉の方を向いたが、それぞれの手元にある書類から、仕事の話をしていたのだろうということは容易に想像出来た。
婚約者のいる女が他の男を部屋に連れ込むな、となまえに言ったことがある。
でも、仕事の用事となれば話は別だ。
いちいち目くじらを立てることでもない。
「お疲れ様です、こんな時間まで仕事なんて大変っすね。
今朝提出した書類に不備でもありました?」
「いや、それは問題ねぇ。」
なまえの元へ近づきながら訊ねたジャンに、リヴァイはそう答えながら、彼女の手元から書類を引き抜くように奪い返した。
なまえの仕事なら、漏れなく自分にも関係がある。
それに、わざわざ兵士長であるリヴァイがやってきたことと書類を持っていることから、そう推測したのだけれど、違ったらしい。
それなら何があったのか———その答えは、なまえが教えてくれた。
「明後日、ストヘス区でパーティーがあるらしくて
それに私も参加しなくちゃいけなくなったの。」
「またですか。」
ジャンは、ため息交じりに言う。
なまえがパーティーへの参加を強制させられるのは、珍しいことではない。
元貴族の両親を持っていて、それなりの知識と教養とマナーがあるのも大きいだろうが、単純に、美人のなまえを連れて行けば、華になってくれるからだ。
それだけで、調査兵団のイメージまで華やかになり、出資してくれる額や貴族が増えるのだから、人は見た目だけで物事を判断しがちだということがよく分かる。
だが———。
「でも、その日は確か、分隊の合同訓練ですよ。
ミケさんから、偶には訓練にも参加しろと言われてんのに、どうするんすか?」
「だから、そっちはジャンに任せるよ。
こっちは、リヴァイ兵長がいてくれるから大丈夫。」
「は?」
何を言っているのか、すぐに理解が出来なかった。
だって、なまえの補佐官であるジャンは、殆どの任務を彼女と共にこなしてきたのだ。
それは、パーティーへの同伴も同じだ。
前回の長期出張なんて、離れるのが初めて過ぎて、なまえは寂しさに耐えられずに、寝不足で倒れてしまったくらいだ。
「俺が前日からストヘス区入りして会議に参加してる。
そのまま、エルヴィンとパーティーに参加することになってるから、
なまえの同伴は俺が代わりにしてやれる。問題ねぇ。」
なまえの説明に、リヴァイが補足を入れた。
あぁ、そういうことか———。
彼らが予定している日程の流れは、すぐに頭が理解した。
了解しました、と頭の中で、補佐官の自分が答えている声は聞こえたのだ。
でも、実際にジャンが口にしていたのは、全く違う言葉だった。
「パーティーの同伴は俺がします。」
「え、でも、合同訓練に参加しないとミケ分隊長に怒られちゃうし———。」
「そんなのなまえさんが一緒に出ない時点で同じですよ。」
「なまえが参加出来ねぇことは俺からミケに言ってあるから問題ねぇ。」
「そこは問題なくても、婚約者のいるなまえさんが他の男を同伴して
パーティーに参加するのが大問題ですよ。」
「別に問題ねぇだろ。俺となまえが、兵士長と副兵士長ってのは知られてる。
仕事で来てると誰でも分か———。」
「ダメです。俺が、なまえさんをパーティーに連れて行きます。」
ジャンは、食い気味に意見を押しつけた。
リヴァイが、僅かに眉を顰めた後、なまえの方を見た。
「おい、お前の自慢の補佐官はどこに行きやがった。」
「それが…、私も…よく分かんなくて…。
なんか今日1日中、様子がおかしいんです…。」
「頭に蛆でも涌いてんじゃねぇのか。」
「…もしそうだったら、リヴァイ兵長なら蛆を削げます?」
「…。」
困ったように眉尻を下げるなまえに、リヴァイは途方に暮れたような顔をした。
そして、頑なに、自分がパーティーに参加すると主張するジャンへと視線を向ける。
「…分かった。エルヴィンとミケに伝えておく。
返事は、2人に確認してからだ。」
「どっちにしろ、絶対に俺が行きますから。」
「お前、エレンが乗り移っちまったみてぇだな。」
「は?」
「…まぁ、いい。」
リヴァイは諦めた様に言って、小さく首を横に振った。
そして———。
「なまえ。」
リヴァイは、彼女の名前を呼び捨てで呼んで、耳元に口を近づけた。
なまえも、自然に彼の方へ寄っていく。
彼の口が動いた後に、彼女が真剣に頷いた。
自分には聞かれては困る話なのか———。
そんなことだって、以前からあった。
エルヴィンから兵士長であるリヴァイへと伝わった情報が、副兵士長や分隊長で止まることなんてよくあることだ。
それでも、今日はすごく気に入らなかったのだ。