◇第六十話◇変わらない貴方の目と変わってしまった私の気持ち
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時々、2人が乱れるシーツが擦れる音がする以外は、私達が必死に噛みつき合うときに漏らす切羽詰まったような呼吸音が聞こえるだけの部屋で、今までのは抑えていたのだと思い知ったキスは、お互いの唾液を交換し合うみたいだった。
腰の上に馬乗りになってキスに夢中になっているのが私のせいで、ジャンを襲っているような気分だった。
あぁ、でもそれは、そこまで遠くはないかもしれない。
だって、初めてを貰って欲しいのは、私の方だから———。
両手で私の後頭部を押さえるジャンの口は、何度も角度を変えては、吐息を漏らす唇を覆って、ほんの小さな隙間も奪っていく。
でも、ジャンの長い舌に絡まれた舌のように、逃げようともしないで、必死にジャンの長い髪に指を絡めている私は、このまま命ごと奪って欲しいと思っていたのかもしれない。
だって、そしたらもう、大好きな人達を失わずに済むし、私の最後の記憶は、ジャンに求められた今で終わる。
あぁ、それってもしかして、夢の世界へ逃げるよりずっと、幸せなんじゃないだろうか。
そんなことを意識のどこか遠いところでぼんやりと考えていれば、ゆっくりと唇が離れた。
でも、私達の間には、キスの名残の銀色の糸が繋がったままだ。
「キスだけで、すげぇエロい顔してる。ヘンタイ。」
ジャンは、意地悪く言いながら、馬乗りになる私の口元を拭った。
途端に、2人を繋いでいた銀色の糸は消えて見えなくなる。
だからもう一度、キスをしたくなったのはきっと、私だけだ。
「ジャンもだよ。男の人みたいな、顔してる。」
私は、ジャンの唇を指でなぞった。
薄くもないけど、分厚くもない。
あぁ、でも、私よりは大きいかな。
熱っぽく見上げてくるジャンの瞳は、切れ長で吊ってるから、不機嫌に見えがちで、後輩達は少し彼のことが怖いらしい。
本当はすごく繊細で、優しいのを今は知っているけれど、個性的な104期の中にいた彼の第一印象は、生意気な一匹狼だった。
時々、食堂や談話室でエレンと取っ組み合いの喧嘩をしているときなんて本当に少年って感じで、同期のナナバ達と一緒に「可愛いね。」なんて言いながら笑いながら見てたのを、今でも覚えてる。
「俺、男ですよ。」
唇をなぞっていた指が、髭に触れるよりも前に、私の手首を、ジャンが掴んで止めた。
真っすぐに私を見るジャンの瞳は、相変わらず切れ長で吊り気味で、不機嫌に見える。
髭が生えても、4年前よりも身長が伸びても、筋肉がついても、ジャンはジャンだ。
何も変わらない。
ジャンが私の歳を追い越すことなんてありえないし、歳の差が縮まることもない。
でも———。
「知ってるよ。だからもう一回…、さっきみたいな、キスして。」
私のおねだりを受け入れるように、ジャンが掴んだ手首を引き寄せる。
すぐに唇が重なった。
また、苦しいのに、離れがたくなるキスが始まる。
噛みつき合っては、まるでひとつに溶け合ってしまおうとしているみたいに、互いの唾液を混ぜる。
どっちがどっちのものか分からなくなって、私達はまるで、ひとりの人間になったみたいだ。
いっそこのまま、ひとつに———。
なんて思わない。
この10年で悲鳴を上げても消えないくらいに刻まれてきた私の苦しみまで、ジャンに背負わせるわけにはいかないから。
でも、今だけ、私はジャンに甘えたい。
補佐官じゃなくて、男になったジャンに、私は女として、彼に甘えたい。
甘やかされたい。
なにがなんだか分からなくなるまで、トロトロに溶かされたいと願ってる。
たぶん、そう。
ジャンが、変わったんじゃない。
私の、彼を見る目が、気持ちが、変わったのだ————。
腰の上に馬乗りになってキスに夢中になっているのが私のせいで、ジャンを襲っているような気分だった。
あぁ、でもそれは、そこまで遠くはないかもしれない。
だって、初めてを貰って欲しいのは、私の方だから———。
両手で私の後頭部を押さえるジャンの口は、何度も角度を変えては、吐息を漏らす唇を覆って、ほんの小さな隙間も奪っていく。
でも、ジャンの長い舌に絡まれた舌のように、逃げようともしないで、必死にジャンの長い髪に指を絡めている私は、このまま命ごと奪って欲しいと思っていたのかもしれない。
だって、そしたらもう、大好きな人達を失わずに済むし、私の最後の記憶は、ジャンに求められた今で終わる。
あぁ、それってもしかして、夢の世界へ逃げるよりずっと、幸せなんじゃないだろうか。
そんなことを意識のどこか遠いところでぼんやりと考えていれば、ゆっくりと唇が離れた。
でも、私達の間には、キスの名残の銀色の糸が繋がったままだ。
「キスだけで、すげぇエロい顔してる。ヘンタイ。」
ジャンは、意地悪く言いながら、馬乗りになる私の口元を拭った。
途端に、2人を繋いでいた銀色の糸は消えて見えなくなる。
だからもう一度、キスをしたくなったのはきっと、私だけだ。
「ジャンもだよ。男の人みたいな、顔してる。」
私は、ジャンの唇を指でなぞった。
薄くもないけど、分厚くもない。
あぁ、でも、私よりは大きいかな。
熱っぽく見上げてくるジャンの瞳は、切れ長で吊ってるから、不機嫌に見えがちで、後輩達は少し彼のことが怖いらしい。
本当はすごく繊細で、優しいのを今は知っているけれど、個性的な104期の中にいた彼の第一印象は、生意気な一匹狼だった。
時々、食堂や談話室でエレンと取っ組み合いの喧嘩をしているときなんて本当に少年って感じで、同期のナナバ達と一緒に「可愛いね。」なんて言いながら笑いながら見てたのを、今でも覚えてる。
「俺、男ですよ。」
唇をなぞっていた指が、髭に触れるよりも前に、私の手首を、ジャンが掴んで止めた。
真っすぐに私を見るジャンの瞳は、相変わらず切れ長で吊り気味で、不機嫌に見える。
髭が生えても、4年前よりも身長が伸びても、筋肉がついても、ジャンはジャンだ。
何も変わらない。
ジャンが私の歳を追い越すことなんてありえないし、歳の差が縮まることもない。
でも———。
「知ってるよ。だからもう一回…、さっきみたいな、キスして。」
私のおねだりを受け入れるように、ジャンが掴んだ手首を引き寄せる。
すぐに唇が重なった。
また、苦しいのに、離れがたくなるキスが始まる。
噛みつき合っては、まるでひとつに溶け合ってしまおうとしているみたいに、互いの唾液を混ぜる。
どっちがどっちのものか分からなくなって、私達はまるで、ひとりの人間になったみたいだ。
いっそこのまま、ひとつに———。
なんて思わない。
この10年で悲鳴を上げても消えないくらいに刻まれてきた私の苦しみまで、ジャンに背負わせるわけにはいかないから。
でも、今だけ、私はジャンに甘えたい。
補佐官じゃなくて、男になったジャンに、私は女として、彼に甘えたい。
甘やかされたい。
なにがなんだか分からなくなるまで、トロトロに溶かされたいと願ってる。
たぶん、そう。
ジャンが、変わったんじゃない。
私の、彼を見る目が、気持ちが、変わったのだ————。