◇第五十八話◇その日の為の準備が始まる
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翌日、ジャンとなまえは、彼女の母親に連れられて、ウォール・ローゼの結婚式場へやって来ていた。
結婚するのは1年後でも、結婚式の準備は早めに始めておいた方が安心だから、と予約を入れていたらしい。
とりあえず今日は、そこで結婚式を決めるわけではなく話を聞くだけだからと言われて、なまえとジャンも、わざわざトロスト区までやって来た両親の願いを断り切れずに受け入れるしかなかった。
彼女の母親に声をかけられたジャンの両親まで一緒だと知ったのは、今朝、兵舎を出たところで久しぶりに会ったときで、目が飛び出そうになるほどに驚いたというオマケつきだ。
「どう?」
なまえの母親が声をかけると、白いカーテンの向こうからなまえの苦しそうなうめき声が聞こえて来た。
一体、何が起こっているのか、男のジャンには想像もつかないが、女性陣は心当たりがあるらしく、母親同士で顔を見合わせてクスりと笑った。
どうやら、母親達は気が合っているらしい。
父親同士も、ここに来るまでの駅馬車の中で、若い頃にしていたという狩りの話で盛り上がっていた。
とても楽しそうな雰囲気の中、ジャンだけは、待合スペースのソファに腰かけて、ため息を飲み込むのに必死だ。
昨日こそは、なまえからもう一度あのセリフを聞き出すつもりだったのだ。
そして、漸く身体を重ねられるはずだったのに———。
「お待たせ致しました。」
ため息を吐きかけたジャンは、その声に反応して顔を上げた。
白いカーテンの端を僅かに開けて出て来たのは、式場でドレスを担当しているプランナーの女性だ。
「笑わないでよ、変でも笑わな——。」
「とってもお似合いでしたよ。」
白いカーテンの向こうから聞こえてくる情けない声に、女性はクスリと笑った。
そして、なまえに許可をとってから、カーテンに手をかける。
まるで、物語の幕が開くように、ゆっくり、ゆっくりと時間をかけて、白いカーテンが開いていく。
開かれたその向こうにいたのは、純白のウェディングドレスに身を包んだお姫様だった。
なまえは、恥ずかしそうに頬を染めて少し俯き加減にしていたけれど、本当に綺麗だった。
想像を超えた美しさに、ジャンは、息を呑んだ。
母親達からも、うっとりとした吐息が漏れ、なまえの父親は感動したらしくもう目を潤ませていたし、ジャンの父親は頬を赤く染めていた。
「なんでみんな黙っちゃうの。誰かひとりくらい何か言ってよ。」
なまえは、恥ずかしさを誤魔化すように言って、頬を膨らませた。
すると、気を利かせたプランナーの女性が、ジャンに声をかける。
「新郎様、どうですか?」
「あ…綺麗、だと、思います。」
「途切れ途切れ過ぎる。」
なまえがムッと眉を顰めた。
でも、ちゃんと声が出なかったのだ。
ドキドキしすぎて、なまえが綺麗すぎて———。
昨日の夜、彼女を抱けなかったのはとても残念だったけれど、こんなに綺麗な花嫁を見られるのなら、その方がよかったと思えるくらい。
あぁ、いつかきっと、彼女は、本当に、世界で一番美しい花嫁になるのだろう。
そのとき、彼女の隣で鼻の下を伸ばして笑っているのは、誰だろうか。
こんなに綺麗な花嫁の隣に、自分が立っているという状況は、どうしても想像出来なかった。
「さぁ、次はマーメイドドレスにしましょう!」
「ねぇ、黄色のドレスも可愛いと思いません?」
「いいわね、それも着ましょう!!」
楽しそうに盛り上がっている母親達に絶望したような顔をして目を見開いたなまえは、その日、彼女達の着せ替え人形だった。
数えきれないくらいのドレスを試着させられて、夕方に兵舎に戻って来たときには、1日中訓練の日の方がだいぶマシなくらいにゲッソリしていた。
結婚するのは1年後でも、結婚式の準備は早めに始めておいた方が安心だから、と予約を入れていたらしい。
とりあえず今日は、そこで結婚式を決めるわけではなく話を聞くだけだからと言われて、なまえとジャンも、わざわざトロスト区までやって来た両親の願いを断り切れずに受け入れるしかなかった。
彼女の母親に声をかけられたジャンの両親まで一緒だと知ったのは、今朝、兵舎を出たところで久しぶりに会ったときで、目が飛び出そうになるほどに驚いたというオマケつきだ。
「どう?」
なまえの母親が声をかけると、白いカーテンの向こうからなまえの苦しそうなうめき声が聞こえて来た。
一体、何が起こっているのか、男のジャンには想像もつかないが、女性陣は心当たりがあるらしく、母親同士で顔を見合わせてクスりと笑った。
どうやら、母親達は気が合っているらしい。
父親同士も、ここに来るまでの駅馬車の中で、若い頃にしていたという狩りの話で盛り上がっていた。
とても楽しそうな雰囲気の中、ジャンだけは、待合スペースのソファに腰かけて、ため息を飲み込むのに必死だ。
昨日こそは、なまえからもう一度あのセリフを聞き出すつもりだったのだ。
そして、漸く身体を重ねられるはずだったのに———。
「お待たせ致しました。」
ため息を吐きかけたジャンは、その声に反応して顔を上げた。
白いカーテンの端を僅かに開けて出て来たのは、式場でドレスを担当しているプランナーの女性だ。
「笑わないでよ、変でも笑わな——。」
「とってもお似合いでしたよ。」
白いカーテンの向こうから聞こえてくる情けない声に、女性はクスリと笑った。
そして、なまえに許可をとってから、カーテンに手をかける。
まるで、物語の幕が開くように、ゆっくり、ゆっくりと時間をかけて、白いカーテンが開いていく。
開かれたその向こうにいたのは、純白のウェディングドレスに身を包んだお姫様だった。
なまえは、恥ずかしそうに頬を染めて少し俯き加減にしていたけれど、本当に綺麗だった。
想像を超えた美しさに、ジャンは、息を呑んだ。
母親達からも、うっとりとした吐息が漏れ、なまえの父親は感動したらしくもう目を潤ませていたし、ジャンの父親は頬を赤く染めていた。
「なんでみんな黙っちゃうの。誰かひとりくらい何か言ってよ。」
なまえは、恥ずかしさを誤魔化すように言って、頬を膨らませた。
すると、気を利かせたプランナーの女性が、ジャンに声をかける。
「新郎様、どうですか?」
「あ…綺麗、だと、思います。」
「途切れ途切れ過ぎる。」
なまえがムッと眉を顰めた。
でも、ちゃんと声が出なかったのだ。
ドキドキしすぎて、なまえが綺麗すぎて———。
昨日の夜、彼女を抱けなかったのはとても残念だったけれど、こんなに綺麗な花嫁を見られるのなら、その方がよかったと思えるくらい。
あぁ、いつかきっと、彼女は、本当に、世界で一番美しい花嫁になるのだろう。
そのとき、彼女の隣で鼻の下を伸ばして笑っているのは、誰だろうか。
こんなに綺麗な花嫁の隣に、自分が立っているという状況は、どうしても想像出来なかった。
「さぁ、次はマーメイドドレスにしましょう!」
「ねぇ、黄色のドレスも可愛いと思いません?」
「いいわね、それも着ましょう!!」
楽しそうに盛り上がっている母親達に絶望したような顔をして目を見開いたなまえは、その日、彼女達の着せ替え人形だった。
数えきれないくらいのドレスを試着させられて、夕方に兵舎に戻って来たときには、1日中訓練の日の方がだいぶマシなくらいにゲッソリしていた。