◇第五十八話◇その日の為の準備が始まる
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談話室で待っていたお客というのは、なまえの両親だった。
〝眠り姫〟の両親で憲兵団のOBでもある彼らは、調査兵でも当然有名だ。
そんな彼らが、談話室のテーブル席で談笑しているから、休憩中の調査兵達は、気になって仕方がない様子でチラチラと見ている。
そこへ、なまえとジャンがやってくると、母親の方がすぐに立ち上がり嬉しそうに手を振った。
それに合わせて、父親も立ち上がり、軽く手をあげた。
「え!?なんでパパとママが?!」
驚いたように言って、なまえは彼らの元へ駆け寄る。
今までなまえの両親が調査兵団の兵舎をプライベートで訪れることはなかった。
だからこそ、余計に、なまえは驚いているようだった。
「あら、私は会いに行くってちゃんと手紙に書いたわよ。」
「書いてないよ!手紙なんて来てな…、あ…。」
「来てたんすね。」
ジャンがため息を吐くと、なまえはヘラヘラと笑って誤魔化した。
どうせ、手紙の存在だけ確認して、中身を読みもしないで放っておいたまま存在すら忘れてしまったのだろう。
「ジャンは、少し前までストヘス区に長期の出張だったらしいな。
それならうちに顔を出せばよかったのに。
ちょうどチェスの相手を探していたんだ。」
「夜遅くまで仕事詰めであっという間の2週間だったんですよ。
ご挨拶をとは考えたんすけど、バタバタさせては逆にご迷惑かと思いまして。
あと、チェスの相手は他をあたってください。」
「相変わらず、つれないな。」
父親が楽しそうにハッハッと笑った。
「それで、急に来てどうしたの。
仕事中は話しかけないでっていつも言ってるでしょ。」
なまえが眉を顰めて、咎めるように彼らに言った。
「手紙にも書いたんだけど、」
母親から、トロスト区へやって来た理由を聞いた後、話題は、滞在中の彼らの寝床の話に変わった。
どうやら、エルヴィンにも先に手紙を送っていたようで、滞在中は、調査兵団兵舎のゲストルームを借りることになっているらしい。
それなら、とジャンが大きな荷物を持ち、なまえと一緒に彼らをゲストルームへ案内することになった。
彼らと一緒に宿舎の廊下を歩けば、たくさんの調査兵達が好奇心旺盛な顔をしてジロジロと見て来た。
その中には、一緒にいる紳士と夫人がなまえの両親だと知らない調査兵もいただろうが、雰囲気から、どちらかの両親だということくらいは察したはずだ。
「あ!そうだ!私、ゲストルームじゃなくて、なまえの部屋に泊まりたいわ。」
パチンと両手を叩いた母親が、目を輝かせて言った。
「え!?ヤだよ!!絶対にダメ!!」
「いいじゃない、娘がどんなところで生活してるのか見てみたいの。」
「見なくていい!!」
「散らかってるから?」
「散らかって…ッ、るけど!!それだけじゃなくて、なんか嫌だ!!」
「だめ~、もう決めちゃったもん。」
楽しみだ、と少女のようにハシャぐ母親の隣で、なまえがぐったりしたような顔で項垂れている。
いつも周りを無邪気に振り回すなまえを振り回す母親が、ジャンには、人類最強の兵士よりも無敵に見えた。
「なら、私はジャンくんの部屋に泊ま———。」
「丁重にお断りします。」
「決断が早い男は好きだよ。」
父親がククッと喉を鳴らす。
そして、だが———、と続けた。
「寝る前にチェスの相手だけでも——。」
「団長とどうぞ。」
「君は本当に良い息子になりそうだ。」
アハハと楽しそうに笑う父親をちらりと見て、ジャンはククッと喉を鳴らした。
一緒に恋バナをしようと女友達のようなことを言われてゲンナリしているなまえは気づかなかったようだ。
でも、ちょうど今、廊下をすれ違った調査兵は、確かに、リヴァイだった。
〝眠り姫〟の両親で憲兵団のOBでもある彼らは、調査兵でも当然有名だ。
そんな彼らが、談話室のテーブル席で談笑しているから、休憩中の調査兵達は、気になって仕方がない様子でチラチラと見ている。
そこへ、なまえとジャンがやってくると、母親の方がすぐに立ち上がり嬉しそうに手を振った。
それに合わせて、父親も立ち上がり、軽く手をあげた。
「え!?なんでパパとママが?!」
驚いたように言って、なまえは彼らの元へ駆け寄る。
今までなまえの両親が調査兵団の兵舎をプライベートで訪れることはなかった。
だからこそ、余計に、なまえは驚いているようだった。
「あら、私は会いに行くってちゃんと手紙に書いたわよ。」
「書いてないよ!手紙なんて来てな…、あ…。」
「来てたんすね。」
ジャンがため息を吐くと、なまえはヘラヘラと笑って誤魔化した。
どうせ、手紙の存在だけ確認して、中身を読みもしないで放っておいたまま存在すら忘れてしまったのだろう。
「ジャンは、少し前までストヘス区に長期の出張だったらしいな。
それならうちに顔を出せばよかったのに。
ちょうどチェスの相手を探していたんだ。」
「夜遅くまで仕事詰めであっという間の2週間だったんですよ。
ご挨拶をとは考えたんすけど、バタバタさせては逆にご迷惑かと思いまして。
あと、チェスの相手は他をあたってください。」
「相変わらず、つれないな。」
父親が楽しそうにハッハッと笑った。
「それで、急に来てどうしたの。
仕事中は話しかけないでっていつも言ってるでしょ。」
なまえが眉を顰めて、咎めるように彼らに言った。
「手紙にも書いたんだけど、」
母親から、トロスト区へやって来た理由を聞いた後、話題は、滞在中の彼らの寝床の話に変わった。
どうやら、エルヴィンにも先に手紙を送っていたようで、滞在中は、調査兵団兵舎のゲストルームを借りることになっているらしい。
それなら、とジャンが大きな荷物を持ち、なまえと一緒に彼らをゲストルームへ案内することになった。
彼らと一緒に宿舎の廊下を歩けば、たくさんの調査兵達が好奇心旺盛な顔をしてジロジロと見て来た。
その中には、一緒にいる紳士と夫人がなまえの両親だと知らない調査兵もいただろうが、雰囲気から、どちらかの両親だということくらいは察したはずだ。
「あ!そうだ!私、ゲストルームじゃなくて、なまえの部屋に泊まりたいわ。」
パチンと両手を叩いた母親が、目を輝かせて言った。
「え!?ヤだよ!!絶対にダメ!!」
「いいじゃない、娘がどんなところで生活してるのか見てみたいの。」
「見なくていい!!」
「散らかってるから?」
「散らかって…ッ、るけど!!それだけじゃなくて、なんか嫌だ!!」
「だめ~、もう決めちゃったもん。」
楽しみだ、と少女のようにハシャぐ母親の隣で、なまえがぐったりしたような顔で項垂れている。
いつも周りを無邪気に振り回すなまえを振り回す母親が、ジャンには、人類最強の兵士よりも無敵に見えた。
「なら、私はジャンくんの部屋に泊ま———。」
「丁重にお断りします。」
「決断が早い男は好きだよ。」
父親がククッと喉を鳴らす。
そして、だが———、と続けた。
「寝る前にチェスの相手だけでも——。」
「団長とどうぞ。」
「君は本当に良い息子になりそうだ。」
アハハと楽しそうに笑う父親をちらりと見て、ジャンはククッと喉を鳴らした。
一緒に恋バナをしようと女友達のようなことを言われてゲンナリしているなまえは気づかなかったようだ。
でも、ちょうど今、廊下をすれ違った調査兵は、確かに、リヴァイだった。