こんな真夜中に私の部屋を訪れたのは、リヴァイ兵長だった。
確かに、いつ寝ているのだろうと心配になるくらいに忙しくしている人だし、目の下の隈も深い。
でも、私の部屋にやってくるなんて思いもしないから、驚いてしまった。

「思った通りだ。」

驚いて目を見開く私を見て、リヴァイ兵長が言った。

「え？」
「お前の目の下の隈、どんどん濃くなってきてた。」

リヴァイ兵長の手が、私の顔に伸びる。
そして、目の下を親指で少し強めに押した。

「え！？」
「どうせ、眠れなかったんだろ。
　———仕方ねぇから、お前の話し相手になってやる。」

リヴァイ兵長の言葉で、彼がここへ来た理由を知った。
そして、彼の優しさも——。

『まるで、公務に悩んで眠れずにいるお姫様を心配して
　会いに来てくれた騎士様みたい。』

少し前の私なら、そんなことを妄想しながら、胸をときめかせていたに違いない。
こんな真夜中に、私服姿のリヴァイ兵長に会えるなんて、嬉し過ぎて、だらしなく頬を緩めていたはずだ。
それなのに、私は、やってきたのがリヴァイ兵長だと知ったとき、残念だと思ってしまった。
他の誰を期待していたというのか。
私は、誰に、この扉の向こうに立ってほしかったのだろう。
まさか、ジャンなはずがない。
だって、彼は本当の恋人ではないし、必ずお別れが来る人だ。
好きになっちゃ、いけない。
まさかまだ、手遅れになんてなっていないはず————。

「どうした、顔色が悪ぃぞ。寝不足で体調も悪くなったのか。」

リヴァイ兵長が、心配して私の顔を覗き込んだ。
端正で綺麗で、私がずっと憧れていた人が、すぐ目の前にいる。
そして、私の為だけに会いに来てくれた。
それに、寂しい夜は、人肌が恋しくなるものだ。
私の手は、まるで、運命にひきよせられるようにリヴァイ兵長に伸びる。
リヴァイ兵長の胸へと、この手が届くまであと少しだ。
きっと、その暖かくて力強い腕に抱きしめて貰えたら、私はもう寂しくない。
だって、私は今もまだ、リヴァイ兵長に恋してる。
好きで、好きで、仕方がない。
大好きだ。
他の、誰よりも———。