◇第五十三話◇寂しいだけの夢ならまだいい
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真夜中、私はまた目を覚ましてしまって、ベッドに腰かけてぼんやりとしていた。
眠りが浅くて、最近、楽しい夢も見られていないし、疲れも取れない。
『俺と離れるの寂しいっすか。』
『そんなわけないでしょ。
ナイル師団長とザックレー総統に迷惑かけないように
会議も調査もしっかり遂行してくるんだよ。』
ストヘス区へ立つ日の朝、意地悪く口の端を上げたジャンに、私は上官らしくそう答えた。
あのとき、あの気持ちにもあの言葉にも、嘘はなかった。
寂しいなんて思うはずがなかったし、それよりも、ジャンにはジャンの任務をしっかりと遂行して欲しいと願っていた。
でも———。
『俺は寂しいっすけどね。
2週間もなまえさんに会えないなんて。』
冗談か本気かも分からない顔で、ジャンがそう言ったとき、私は何と答えたんだっけ。
気にも留めていなかったから、よく覚えていない。
でも、たぶん、どうせ世話の焼ける上官から離れられて清々するんだろとか、そんな憎まれ口を叩いた気がする。
そしたらきっと、ジャンはいつものように『バレたか。』って悪戯っ子みたいな顔をしたのだ。
最近、凄く大人に見えるジャンだけれど、彼のそういう子供みたいな顔が好きだ。
だから、わざと、彼がそういう顔をするように仕向けることもある。
そのときも、きっとそうだった。
でも、今なら、私はたぶん、違う返事をする。
たとえば———。
「私も、寂しい。
本当はすごく…、寂しい…。」
引き留めたくて、仕方がなかったくらい———。
ストヘス区にいるジャンに聞こえないのに、聞こえたってどうにもならないのに、私は何を言っているのだろう。
今頃、ジャンは夢の中だ。
どんな夢を見ていて、誰と一緒にいるのか。
「寝よう。」
せめて、夢の中で会えますように———。
私は、ベッドの中に潜り込んで、強く目を瞑る。
でも今夜も、私は、夢の中でさえジャンに会えない。
そして、真っ暗闇の中で彷徨う少女の夢を見るのだ。
愛を求めて、救いを求めて、独りきりで彷徨う少女の夢を———。
それはまるで、私の心の悲鳴を具現化したような虚しい世界だった。
眠りが浅くて、最近、楽しい夢も見られていないし、疲れも取れない。
『俺と離れるの寂しいっすか。』
『そんなわけないでしょ。
ナイル師団長とザックレー総統に迷惑かけないように
会議も調査もしっかり遂行してくるんだよ。』
ストヘス区へ立つ日の朝、意地悪く口の端を上げたジャンに、私は上官らしくそう答えた。
あのとき、あの気持ちにもあの言葉にも、嘘はなかった。
寂しいなんて思うはずがなかったし、それよりも、ジャンにはジャンの任務をしっかりと遂行して欲しいと願っていた。
でも———。
『俺は寂しいっすけどね。
2週間もなまえさんに会えないなんて。』
冗談か本気かも分からない顔で、ジャンがそう言ったとき、私は何と答えたんだっけ。
気にも留めていなかったから、よく覚えていない。
でも、たぶん、どうせ世話の焼ける上官から離れられて清々するんだろとか、そんな憎まれ口を叩いた気がする。
そしたらきっと、ジャンはいつものように『バレたか。』って悪戯っ子みたいな顔をしたのだ。
最近、凄く大人に見えるジャンだけれど、彼のそういう子供みたいな顔が好きだ。
だから、わざと、彼がそういう顔をするように仕向けることもある。
そのときも、きっとそうだった。
でも、今なら、私はたぶん、違う返事をする。
たとえば———。
「私も、寂しい。
本当はすごく…、寂しい…。」
引き留めたくて、仕方がなかったくらい———。
ストヘス区にいるジャンに聞こえないのに、聞こえたってどうにもならないのに、私は何を言っているのだろう。
今頃、ジャンは夢の中だ。
どんな夢を見ていて、誰と一緒にいるのか。
「寝よう。」
せめて、夢の中で会えますように———。
私は、ベッドの中に潜り込んで、強く目を瞑る。
でも今夜も、私は、夢の中でさえジャンに会えない。
そして、真っ暗闇の中で彷徨う少女の夢を見るのだ。
愛を求めて、救いを求めて、独りきりで彷徨う少女の夢を———。
それはまるで、私の心の悲鳴を具現化したような虚しい世界だった。