◇第五十話◇虫除けの赤い痕の効果は絶大
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あの後にそのまま朝まで眠っていた挙句に、このまま一生寝ていたいと馬鹿なことを言っているなまえを叩き起こして、シャワーを浴びせてから食堂に来た割には、まだそれなりの数の調査兵達が残っていた。
空いているテーブルに適当に腰を降ろし、普段のように、どうせ右から左へ聞き流される今日の仕事の予定を、食事をしながらなまえに聞かせる。
ジャンは、努めていつも通りに彼女に接した。
濡れて気持ち悪くなってしまったのは分かるが、まさか下着を脱いで眠っているとは、想像もしていなかった。
でも、下着を履かないで寝ているなまえに気づいたときの驚きも、困惑も戸惑いも、その他諸々の感情も全て、なんとか飲み込んで、普段通りに補佐官として、寝起きの悪い上官を起こすという任務を遂行した自分を褒めてやりたいくらいだ。
「やぁ、おはよう!君達と朝食の時間が重なるなんて珍しいね!」
朝から元気な声と共に、滑り込むようになまえの隣の席に座ったのは、ハンジだった。
その隣には、今日もセットのようにモブリットが一緒だ。
「ハンジさんが毎朝、実験をもう少し早く切り上げてくれれば
私達もなまえと同じ時間に朝食が食べられるんですよ。」
「ハハッ!そういうことか!!」
ハンジが豪快に笑うと、モブリットが疲れた様子でため息を吐いた。
理由は違えど、個性的な上官を持つ彼の苦労を、ジャンは痛いほどに理解出来た。
だから余計に、彼を見ていると、他人の目にはこんなにも不憫に映るのか、と複雑な気持ちになる。
調査兵団名物の上官と補佐官コンビの揃い踏みに、周囲の視線も自然と集まっていた。
その視線のせいかは分からないが、次にやってきたのはコニーだった。
彼は、なまえの後ろを通り過ぎようとして、何かに気づいて立ち止まると、不思議そうに訊ねた。
「あれ?なまえさん、首のところどうしたんすか?」
「首?」
なまえは、自分の首に触れながら、後ろにいるコニーを振り返った。
「ここ。赤くなってますよ。」
コニーが、なまえの左の首元を指さした。
ハンジも気になったようで覗き込んで確認していたが、ジャンは気にしていない様子で、パンをちぎって口に放り込んだ。
見なくても分かっている。
そこには、確かに赤い痣のようなものが出来ているのだ。
「え、嘘。どうしよう、なんだろう。虫刺されかな。」
気づいていなかったらしいなまえは、ショックを受けているようだった。
だから、ジャンは心配ないことを教えてやることにした。
「大丈夫ですよ、ただの虫よけなんで。」
「虫よけ?」
なまえが、ジャンの方を向いて不思議そうに訊ねる。
「昨日、性質の悪そうな虫がいたんで。
これ以上、身の程知らずのクズ虫が湧いて出ないように
虫よけつけといたんですよ。」
ジャンは、斜め前のテーブルに座っている先輩調査兵を睨みつけながら、パンを千切った。
「アハハッ!それはいいアイディアだね!!」
察したらしいハンジが、また豪快な笑い声を上げる。
ビクッと肩を揺らした先輩調査兵は、居心地が悪くなったのか、そそくさと食堂が逃げて行った。
鈍感なコニーですら、ハンジのその発言で理解したようだった。
「あー、キスマークか。」
「え、キスマ————。」
「今日は珍しく遅い時間にジャンが食堂にいると思ったら、
昨日、ヤリ過ぎて疲れて寝坊したんだな。」
不要な理解までしてしまったらしいコニーが、言わなくてもいいことを言う。
でも、もっと言わなくてもいいことを言ってしまったのは、今まで自分が置かれたことのない状況に、唐突に放り出されてパニックになってしまったなまえだった。
「ち…ッ、違…!!」
顔を真っ赤にして、なまえが立ち上がった。
そして、食堂にいる全員に聞こえてしまいそうな大きな声で、自分の身の潔白を訴える。
「ヤッてない!!指だけだったから!!!」
爽やかな朝には似つかわしくない宣言が、大音量で食堂に響き渡った。
シンと静まり返った食堂に、なまえが勢いよく立ち上がったときにバランスを崩した椅子が、倒れた音が虚しく鳴る。
「あ…。」
自分に集まる視線に気づき、なまえは漸く自分の失態を知るが、もう遅い。
昨日、彼女が婚約者に何をされたのかを、ここにいる全員が知ってしまっていた。
(バカ…。)
ジャンは、千切ったパンを見下ろしてため息を吐いた。
空いているテーブルに適当に腰を降ろし、普段のように、どうせ右から左へ聞き流される今日の仕事の予定を、食事をしながらなまえに聞かせる。
ジャンは、努めていつも通りに彼女に接した。
濡れて気持ち悪くなってしまったのは分かるが、まさか下着を脱いで眠っているとは、想像もしていなかった。
でも、下着を履かないで寝ているなまえに気づいたときの驚きも、困惑も戸惑いも、その他諸々の感情も全て、なんとか飲み込んで、普段通りに補佐官として、寝起きの悪い上官を起こすという任務を遂行した自分を褒めてやりたいくらいだ。
「やぁ、おはよう!君達と朝食の時間が重なるなんて珍しいね!」
朝から元気な声と共に、滑り込むようになまえの隣の席に座ったのは、ハンジだった。
その隣には、今日もセットのようにモブリットが一緒だ。
「ハンジさんが毎朝、実験をもう少し早く切り上げてくれれば
私達もなまえと同じ時間に朝食が食べられるんですよ。」
「ハハッ!そういうことか!!」
ハンジが豪快に笑うと、モブリットが疲れた様子でため息を吐いた。
理由は違えど、個性的な上官を持つ彼の苦労を、ジャンは痛いほどに理解出来た。
だから余計に、彼を見ていると、他人の目にはこんなにも不憫に映るのか、と複雑な気持ちになる。
調査兵団名物の上官と補佐官コンビの揃い踏みに、周囲の視線も自然と集まっていた。
その視線のせいかは分からないが、次にやってきたのはコニーだった。
彼は、なまえの後ろを通り過ぎようとして、何かに気づいて立ち止まると、不思議そうに訊ねた。
「あれ?なまえさん、首のところどうしたんすか?」
「首?」
なまえは、自分の首に触れながら、後ろにいるコニーを振り返った。
「ここ。赤くなってますよ。」
コニーが、なまえの左の首元を指さした。
ハンジも気になったようで覗き込んで確認していたが、ジャンは気にしていない様子で、パンをちぎって口に放り込んだ。
見なくても分かっている。
そこには、確かに赤い痣のようなものが出来ているのだ。
「え、嘘。どうしよう、なんだろう。虫刺されかな。」
気づいていなかったらしいなまえは、ショックを受けているようだった。
だから、ジャンは心配ないことを教えてやることにした。
「大丈夫ですよ、ただの虫よけなんで。」
「虫よけ?」
なまえが、ジャンの方を向いて不思議そうに訊ねる。
「昨日、性質の悪そうな虫がいたんで。
これ以上、身の程知らずのクズ虫が湧いて出ないように
虫よけつけといたんですよ。」
ジャンは、斜め前のテーブルに座っている先輩調査兵を睨みつけながら、パンを千切った。
「アハハッ!それはいいアイディアだね!!」
察したらしいハンジが、また豪快な笑い声を上げる。
ビクッと肩を揺らした先輩調査兵は、居心地が悪くなったのか、そそくさと食堂が逃げて行った。
鈍感なコニーですら、ハンジのその発言で理解したようだった。
「あー、キスマークか。」
「え、キスマ————。」
「今日は珍しく遅い時間にジャンが食堂にいると思ったら、
昨日、ヤリ過ぎて疲れて寝坊したんだな。」
不要な理解までしてしまったらしいコニーが、言わなくてもいいことを言う。
でも、もっと言わなくてもいいことを言ってしまったのは、今まで自分が置かれたことのない状況に、唐突に放り出されてパニックになってしまったなまえだった。
「ち…ッ、違…!!」
顔を真っ赤にして、なまえが立ち上がった。
そして、食堂にいる全員に聞こえてしまいそうな大きな声で、自分の身の潔白を訴える。
「ヤッてない!!指だけだったから!!!」
爽やかな朝には似つかわしくない宣言が、大音量で食堂に響き渡った。
シンと静まり返った食堂に、なまえが勢いよく立ち上がったときにバランスを崩した椅子が、倒れた音が虚しく鳴る。
「あ…。」
自分に集まる視線に気づき、なまえは漸く自分の失態を知るが、もう遅い。
昨日、彼女が婚約者に何をされたのかを、ここにいる全員が知ってしまっていた。
(バカ…。)
ジャンは、千切ったパンを見下ろしてため息を吐いた。