◇第五十九話◇寂しがりな君が安心して眠れるように
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普段から夜になると、談話室には、任務を終えて寝るだけになった調査兵達が集まり、お喋りやテーブルゲームに興じている。
それでも、自室でのんびりしたい調査兵もいるため、談話室が人で溢れることはあまりない。
だが、今夜は、中の様子を覗こうとやって来た調査兵達でごった返していた。
入りきらなかった調査兵達もいて、廊下に列を作っている。
彼らのお目当ては、窓際のテーブル席に向かい合って座り、チェスゲームをしているジャンとなまえの父親だ。
なまえの両親が調査兵団の兵舎にやって来たのは、昨日のうちから調査兵達の間で噂になっていた。
今日は、朝からジャンの両親も交えて結婚式場へ出かけたということまで、知れ渡っていたくらいだ。
そして、夜になると、彼らが談話室に現れたとどこからか目撃情報が流れて、調査兵達が野次馬にやって来たというわけである。
今は、なまえの父親のターンらしく、腕を組み、真剣にチェス盤と睨めっこをしている。
その向かいに座るジャンも、この次に回ってくるターンを幾つも想定しているのか、眉を顰めてチェス盤を見ているが、無理やり一緒に連れて来られたらしいなまえは、彼の隣に座り、その肩に頭を乗せて呑気に居眠りをしていた。
話し相手の娘が眠ってしまった母親は、彼女の同期であるナナバとゲルガーを捕まえて、隣のテーブルで、訓練兵時代の懐かしい話で盛り上がっているようだった。
自分達が注目の的になっているということは分かっているはずだが、見られることに慣れているのか、彼らが気にしているような様子はない。
ちょうどその頃、会議を終えて自室へ戻る途中だったリヴァイ班のメンバーが、談話室の前の廊下を通りがかった。
談話室に入りきらなかった大勢の調査兵達が、廊下側の窓から中を覗いている異様な様子に、彼らは思わず足を止めた。
「何の騒ぎだ。」
リヴァイが、訝し気に眉を顰めると、その声に気づいた数名の調査兵達が後ろを振り向いた。
「なまえさん達がご両親を連れて談話室に来たって言うんで。」
「みんなで覗きに来たんです。」
そう言いながら、数名の調査兵達が、リヴァイ班の彼らにも見えるように、場所を譲るように談話室の窓から離れた。
「へぇ。なまえさんのご両親が来てるって噂、本当だったのね。」
「絶対に調査兵には近づくなと言ってあると
なまえさんから聞いたことがあるから、嘘の噂だと思ってたよ。」
「俺も。」
古くからリヴァイ班にいるエルド達は、なまえの両親に会ったことがあったが、エレンとミカサは初めてだった。
好奇心旺盛のエレンを先頭にして、彼らは開いたスペースから窓の向こうを覗き込む。
どうやら、なまえの父親のターンが終わり、ジャンに順番が回ってきたところらしい。
真剣に悩みながら盤面を見ているところへ、なまえの母親がやってくると、ジャンが持っている駒を勝手に置いてしまった。
≪あ"ぁ!?≫
談話室は騒がしく、実際はジャンの声は聞こえなかったけれど、彼の表情や口の動きから、悲鳴が聞こえたような気がした。
余程悔しかったらしく、ジャンは、盤面を指さしながら、なまえの母親に何か文句を言っている。
それに対して、父親が面白そうに笑えば、ジャンが大きなため息を吐いた。
ジャンの表情や態度は、なまえに対してのものとそっくりで、彼が彼女の家族に対して心を許しているのが、見ている人間にも伝わってくる。
そんな彼の肩に頭を乗せて寝ているなまえも含めて、とても良い家族の風景に見えた。
「ジャンって、器用な男だとは思ってましたけど、
彼女の両親ともうまくやれるんですね。若いのに、すごいなぁ。」
ペトラが感心したように言う。
確かにそうだ、とミカサは、全く空気の読めない自分の恋人にチラリと視線を向けた。
エレンは、ジャンがチェスに負けたことが嬉しいらしく、ニヤニヤしている。
ペトラがジャンのことを褒めた声は、都合よく彼の耳には入っていないらしい。
ミカサがため息を吐いた横で、オルオが口を開いた。
「なまえさんが結婚するって、なんか実感わかなかったんすけど
あぁいうの見ると、本当に結婚するんだなぁって思いますね。」
「…そうだな。」
短く言って談話室に背を向けたリヴァイを、オルオが慌てて追いかけた。
現実味を帯びて来た同僚の結婚の話題で盛り上がりながら、ペトラ達もその後ろをついて歩く。
静かな廊下を歩く彼らには、談話室の楽しそうな声がいつまでも聞こえていた。
それでも、自室でのんびりしたい調査兵もいるため、談話室が人で溢れることはあまりない。
だが、今夜は、中の様子を覗こうとやって来た調査兵達でごった返していた。
入りきらなかった調査兵達もいて、廊下に列を作っている。
彼らのお目当ては、窓際のテーブル席に向かい合って座り、チェスゲームをしているジャンとなまえの父親だ。
なまえの両親が調査兵団の兵舎にやって来たのは、昨日のうちから調査兵達の間で噂になっていた。
今日は、朝からジャンの両親も交えて結婚式場へ出かけたということまで、知れ渡っていたくらいだ。
そして、夜になると、彼らが談話室に現れたとどこからか目撃情報が流れて、調査兵達が野次馬にやって来たというわけである。
今は、なまえの父親のターンらしく、腕を組み、真剣にチェス盤と睨めっこをしている。
その向かいに座るジャンも、この次に回ってくるターンを幾つも想定しているのか、眉を顰めてチェス盤を見ているが、無理やり一緒に連れて来られたらしいなまえは、彼の隣に座り、その肩に頭を乗せて呑気に居眠りをしていた。
話し相手の娘が眠ってしまった母親は、彼女の同期であるナナバとゲルガーを捕まえて、隣のテーブルで、訓練兵時代の懐かしい話で盛り上がっているようだった。
自分達が注目の的になっているということは分かっているはずだが、見られることに慣れているのか、彼らが気にしているような様子はない。
ちょうどその頃、会議を終えて自室へ戻る途中だったリヴァイ班のメンバーが、談話室の前の廊下を通りがかった。
談話室に入りきらなかった大勢の調査兵達が、廊下側の窓から中を覗いている異様な様子に、彼らは思わず足を止めた。
「何の騒ぎだ。」
リヴァイが、訝し気に眉を顰めると、その声に気づいた数名の調査兵達が後ろを振り向いた。
「なまえさん達がご両親を連れて談話室に来たって言うんで。」
「みんなで覗きに来たんです。」
そう言いながら、数名の調査兵達が、リヴァイ班の彼らにも見えるように、場所を譲るように談話室の窓から離れた。
「へぇ。なまえさんのご両親が来てるって噂、本当だったのね。」
「絶対に調査兵には近づくなと言ってあると
なまえさんから聞いたことがあるから、嘘の噂だと思ってたよ。」
「俺も。」
古くからリヴァイ班にいるエルド達は、なまえの両親に会ったことがあったが、エレンとミカサは初めてだった。
好奇心旺盛のエレンを先頭にして、彼らは開いたスペースから窓の向こうを覗き込む。
どうやら、なまえの父親のターンが終わり、ジャンに順番が回ってきたところらしい。
真剣に悩みながら盤面を見ているところへ、なまえの母親がやってくると、ジャンが持っている駒を勝手に置いてしまった。
≪あ"ぁ!?≫
談話室は騒がしく、実際はジャンの声は聞こえなかったけれど、彼の表情や口の動きから、悲鳴が聞こえたような気がした。
余程悔しかったらしく、ジャンは、盤面を指さしながら、なまえの母親に何か文句を言っている。
それに対して、父親が面白そうに笑えば、ジャンが大きなため息を吐いた。
ジャンの表情や態度は、なまえに対してのものとそっくりで、彼が彼女の家族に対して心を許しているのが、見ている人間にも伝わってくる。
そんな彼の肩に頭を乗せて寝ているなまえも含めて、とても良い家族の風景に見えた。
「ジャンって、器用な男だとは思ってましたけど、
彼女の両親ともうまくやれるんですね。若いのに、すごいなぁ。」
ペトラが感心したように言う。
確かにそうだ、とミカサは、全く空気の読めない自分の恋人にチラリと視線を向けた。
エレンは、ジャンがチェスに負けたことが嬉しいらしく、ニヤニヤしている。
ペトラがジャンのことを褒めた声は、都合よく彼の耳には入っていないらしい。
ミカサがため息を吐いた横で、オルオが口を開いた。
「なまえさんが結婚するって、なんか実感わかなかったんすけど
あぁいうの見ると、本当に結婚するんだなぁって思いますね。」
「…そうだな。」
短く言って談話室に背を向けたリヴァイを、オルオが慌てて追いかけた。
現実味を帯びて来た同僚の結婚の話題で盛り上がりながら、ペトラ達もその後ろをついて歩く。
静かな廊下を歩く彼らには、談話室の楽しそうな声がいつまでも聞こえていた。