◇第三十一話◇友人と眠り姫が織りなす幸せ
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調査兵団の兵舎にある大会議室には、四角く囲うように長机が並べられ、調査兵の幹部達が続々と集まって来ていた。
彼らは、自分の席に腰を降ろすと、会議資料を開いて確認を始めたり、隣の席の同僚と小声で雑談を始めたりして、各々が思い思いに過ごしながら、会議の開始時間を待つ。
団長の書記官を務めるアルミンは、一番中央に置かれた大きな椅子の隣に座り、筆記用具を取り出しながら、資料の再確認をしていた。
今回の会議の議題は、次回の壁外調査及びそれに伴う壁外任務の作戦について、だ。
壁外調査が終わって、レポートの提出やらが漸く落ち着いたばかりで、もう次の壁外調査のことを考えなければならないのかと、気が滅入りそうになる。
一体、自分達はいつまで、壁の外を未知の世界として認識し、この狭い鳥籠に囚われ続けなければならないのか———。
そんなことを考えていると、鳥籠の中でフワフワと空を飛びながら夢を見ているなまえが会議室に入って来た。
今日は、壁外調査が終わって最初の会議であって、なまえとジャンが婚約したという噂が光の速さで調査兵団の兵舎内に広まってから初めての会議でもある。
先に会議室に集まっていた幹部達は、資料を読むフリ、会話をしているフリをしながら、チラリチラリと彼らに目をやっていた。
噂は事実だと認めた彼らが、恋人同士なのだと認識してしまうと、どうしても気になってしまう。
実際、数日前に、寝ぼけるなまえとそれに激怒するジャンのやり取りを見ているアルミンも、少しだけドキドキしていた。
なまえは、いつものように、資料のすべてを補佐官のジャンに預けて、空いた両手を、大きな欠伸を隠すために使っている。
朝一からの会議が多いとは言え、朝食すら食べる時間がないほどの早朝から始まるというわけではない。
でも、なまえはいつも、殆ど寝ているような状態で会議室にやってきて、席についた途端に、長机に突っ伏して寝始めるのだ。
例に漏れず、今日もそうだった。
そして、その隣の席に腰を下ろしたジャンは、いつものことだと気にもしない様子で、資料を読み始めた。
なんてことはない。
いつもの彼らだ。
恋人であることをずっと隠していて、漸く公認となったのだから、彼らが気をつけていたとしても、少しくらいは態度に出てしまうのではないかと思っていたのだが、そのあたりは、公私混同しないタイプなのか———。
ふ、とそんなことを思ったアルミンだったが、すぐに考えを改める。
団長はまだやって来ていないとはいえ、他の上官達の目がある中で、本気で熟睡してしまえるなまえが、仕事とプライベートを分けているとは思えない。
いつもと変わらない彼らが、恋人として一緒にいるときの彼らなのだろう。
そう思えば、アルミンもとてもしっくり来た。
同じような結論に至ったらしい他の幹部達も、彼らへ好奇の視線を向けるのをやめた。
(なんか、静かな気がするな。)
ふ、とアルミンは、何かが物足りないことに気がついた。
会議資料もそっちのけで、その違和感の元を探す。
そして、しばらく考えてから気がついた。
リヴァイが、いないのだ。
副兵士長のなまえの席は、ちょうどリヴァイと真向かいだ。
いつもなら、早速居眠りを始めるなまえに、リヴァイが眉を顰め、時には叱ったりもしているのだけれど、いつも早めに席についている彼の姿が、今日はない。
数日前から、リヴァイ班は、ハンジ班と一緒にエレンの巨人化の力をさらに強力なものにできないか、と新しい実験を始めているのだ。
(エレンの実験、うまくいけばいいな。)
エルヴィンが、会議室に現れて、アルミンの公私混同の思考は停止された。
アルミンを含め、調査兵団の幹部達は一度に立ち上がり、敬礼ポーズで出迎えた。
そんな中、まだ居眠りしているなまえだけが、ジャンに肩を揺さぶられる。
「あと、ごふん~…。」
団長の登場に緊張感が走る空気の中で、間の抜けた声がとてもよく響いた。
どうしようもない顔をしてため息を吐いたのは、エルヴィンではなく、ジャンだ。
「申し訳ありません。後で叱っておきます。」
「あぁ、それは助かるよ。私の言葉は右から左へすり抜けていくようだから。」
団長の苦笑に、ジャンは何とも言えない表情で返すしかないようだった。
会議が始まれば、流石になまえも起きて、真面目に議題について頭を回転させているようだった。
だが、それが続いたのも10分程度だ。
次第に、不規則にコクリコクリと頭を落とし始め始める。
時々、ジャンがなまえの耳元に口を近づけて、寝たらダメだと言っているようだったが、それでも彼女の眠気は消えないようだった。
結局、会議中、他の幹部達が真剣に話し合うなか、なまえだけは眠気と戦い続けていた。
「どうして君はいつも、会議中に居眠りをしているんだ。」
会議が終わってから、なまえは、いつものようにエルヴィンに引き留められてお説教を受けていた。
「寝てないからです。」
「会議に眠気を引きずらないように、しっかり睡眠をとるようにしなさい。
体調管理も兵士として大切なことだと常々言っているはずだ。」
「会議前以外は、どの兵士よりもしっかりと睡眠をとってる自信があります。」
「どうして会議前だけ、いつも寝ていないんだ。
いつもと同じように眠ればいいだけだろう。」
「会議前は、会議資料を作らないといけないですよね?」
「なんだって?」
「会議の資料を作らなくちゃいけないから、眠れないんです。
私を寝かさないのは、エルヴィン団長ですよ?罪な男ですね。
さすが、色男です。」
ふふっと笑った彼女は、まだ寝ぼけていたのかもしれない。
でも、その隣で、ジャンは顔色を真っ青にしていて、エルヴィンは、額に青筋を立てていた。
もちろん、この後、会議前日の夜まで会議資料も作らずに、しっかりと睡眠をとり過ぎているなまえは、エルヴィンから滾々と説教を受ける羽目になってしまった。
そして、説教を受けながら、また居眠りをしていた。
彼らは、自分の席に腰を降ろすと、会議資料を開いて確認を始めたり、隣の席の同僚と小声で雑談を始めたりして、各々が思い思いに過ごしながら、会議の開始時間を待つ。
団長の書記官を務めるアルミンは、一番中央に置かれた大きな椅子の隣に座り、筆記用具を取り出しながら、資料の再確認をしていた。
今回の会議の議題は、次回の壁外調査及びそれに伴う壁外任務の作戦について、だ。
壁外調査が終わって、レポートの提出やらが漸く落ち着いたばかりで、もう次の壁外調査のことを考えなければならないのかと、気が滅入りそうになる。
一体、自分達はいつまで、壁の外を未知の世界として認識し、この狭い鳥籠に囚われ続けなければならないのか———。
そんなことを考えていると、鳥籠の中でフワフワと空を飛びながら夢を見ているなまえが会議室に入って来た。
今日は、壁外調査が終わって最初の会議であって、なまえとジャンが婚約したという噂が光の速さで調査兵団の兵舎内に広まってから初めての会議でもある。
先に会議室に集まっていた幹部達は、資料を読むフリ、会話をしているフリをしながら、チラリチラリと彼らに目をやっていた。
噂は事実だと認めた彼らが、恋人同士なのだと認識してしまうと、どうしても気になってしまう。
実際、数日前に、寝ぼけるなまえとそれに激怒するジャンのやり取りを見ているアルミンも、少しだけドキドキしていた。
なまえは、いつものように、資料のすべてを補佐官のジャンに預けて、空いた両手を、大きな欠伸を隠すために使っている。
朝一からの会議が多いとは言え、朝食すら食べる時間がないほどの早朝から始まるというわけではない。
でも、なまえはいつも、殆ど寝ているような状態で会議室にやってきて、席についた途端に、長机に突っ伏して寝始めるのだ。
例に漏れず、今日もそうだった。
そして、その隣の席に腰を下ろしたジャンは、いつものことだと気にもしない様子で、資料を読み始めた。
なんてことはない。
いつもの彼らだ。
恋人であることをずっと隠していて、漸く公認となったのだから、彼らが気をつけていたとしても、少しくらいは態度に出てしまうのではないかと思っていたのだが、そのあたりは、公私混同しないタイプなのか———。
ふ、とそんなことを思ったアルミンだったが、すぐに考えを改める。
団長はまだやって来ていないとはいえ、他の上官達の目がある中で、本気で熟睡してしまえるなまえが、仕事とプライベートを分けているとは思えない。
いつもと変わらない彼らが、恋人として一緒にいるときの彼らなのだろう。
そう思えば、アルミンもとてもしっくり来た。
同じような結論に至ったらしい他の幹部達も、彼らへ好奇の視線を向けるのをやめた。
(なんか、静かな気がするな。)
ふ、とアルミンは、何かが物足りないことに気がついた。
会議資料もそっちのけで、その違和感の元を探す。
そして、しばらく考えてから気がついた。
リヴァイが、いないのだ。
副兵士長のなまえの席は、ちょうどリヴァイと真向かいだ。
いつもなら、早速居眠りを始めるなまえに、リヴァイが眉を顰め、時には叱ったりもしているのだけれど、いつも早めに席についている彼の姿が、今日はない。
数日前から、リヴァイ班は、ハンジ班と一緒にエレンの巨人化の力をさらに強力なものにできないか、と新しい実験を始めているのだ。
(エレンの実験、うまくいけばいいな。)
エルヴィンが、会議室に現れて、アルミンの公私混同の思考は停止された。
アルミンを含め、調査兵団の幹部達は一度に立ち上がり、敬礼ポーズで出迎えた。
そんな中、まだ居眠りしているなまえだけが、ジャンに肩を揺さぶられる。
「あと、ごふん~…。」
団長の登場に緊張感が走る空気の中で、間の抜けた声がとてもよく響いた。
どうしようもない顔をしてため息を吐いたのは、エルヴィンではなく、ジャンだ。
「申し訳ありません。後で叱っておきます。」
「あぁ、それは助かるよ。私の言葉は右から左へすり抜けていくようだから。」
団長の苦笑に、ジャンは何とも言えない表情で返すしかないようだった。
会議が始まれば、流石になまえも起きて、真面目に議題について頭を回転させているようだった。
だが、それが続いたのも10分程度だ。
次第に、不規則にコクリコクリと頭を落とし始め始める。
時々、ジャンがなまえの耳元に口を近づけて、寝たらダメだと言っているようだったが、それでも彼女の眠気は消えないようだった。
結局、会議中、他の幹部達が真剣に話し合うなか、なまえだけは眠気と戦い続けていた。
「どうして君はいつも、会議中に居眠りをしているんだ。」
会議が終わってから、なまえは、いつものようにエルヴィンに引き留められてお説教を受けていた。
「寝てないからです。」
「会議に眠気を引きずらないように、しっかり睡眠をとるようにしなさい。
体調管理も兵士として大切なことだと常々言っているはずだ。」
「会議前以外は、どの兵士よりもしっかりと睡眠をとってる自信があります。」
「どうして会議前だけ、いつも寝ていないんだ。
いつもと同じように眠ればいいだけだろう。」
「会議前は、会議資料を作らないといけないですよね?」
「なんだって?」
「会議の資料を作らなくちゃいけないから、眠れないんです。
私を寝かさないのは、エルヴィン団長ですよ?罪な男ですね。
さすが、色男です。」
ふふっと笑った彼女は、まだ寝ぼけていたのかもしれない。
でも、その隣で、ジャンは顔色を真っ青にしていて、エルヴィンは、額に青筋を立てていた。
もちろん、この後、会議前日の夜まで会議資料も作らずに、しっかりと睡眠をとり過ぎているなまえは、エルヴィンから滾々と説教を受ける羽目になってしまった。
そして、説教を受けながら、また居眠りをしていた。