◇第二十七話◇新しい作戦
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貰い損ねた資料があることに気づいたのは、ついさっきだ。
もう宿舎に入ろうとしているところだった。
研究棟に逆戻りしていく頼りになる補佐官の背中を見送りながら、私は宿舎の入口にあるベンチに座って、本を広げた。
一応まだ任務中で、腰の横に積みあがっているのは、これから調べなければならない本の山だ。
でも、私の目が追いかける文字は、どこか遠い世界での嘘みたいな冒険を語っている。
海という大きな湖や、不思議な実、身体がゴムという未知の材質になって伸びたり縮んだり自由自在な少年、動物や自然界のものに変身できる特殊な力を持った人達、目が眩むほどの宝石———。
何度読んだって私をワクワクさせるこのお気に入りの本に書かれているのは、たぶん、王政が禁止してる壁外のことなのだと思う。
でも、実際にそれがあるのかどうかは分からない。
想像の物語かもしれないし、壁外に出れば、それは私達が毎日見ている生活と同じくらい当然のように存在するものなのかもしれない。
私は、それが嘘でも真でも、いつか現実にしたいと願っている。
妄想は楽しい。
でも、私が見なければならない残酷な世界が、妄想とそっくりの世界になったら、それはどんなに素敵だろうって、思うから———。
「なまえさん、今、いいですか?」
声を掛けられて顔を上げた。
ベンチに座っている私を見下ろしているのは、調査兵に入団してまだ1年ほどの若い女兵士だった。
彼女のすぐそばを、腰に立体起動装置をつけている若い兵士達が通り抜けて、宿舎に戻って行く。
どうやら、午前中の訓練が終わったところのようだ。
さすがに、調査兵全員の名前を把握することは出来ていないけれど、彼女はよくジャンに声を掛けているのを見たことがあるから覚えていた。
確か、彼女の名前は、フレイヤ。
大きな瞳と薄く色づいた唇、手で包めてしまいそうなくらいに小さな顔が印象的な、お人形のような容姿で、新兵の入団式の時もとても目立っていた娘だ。
若い男兵士達が、鼻の下を伸ばして彼女の周りを取り囲んでいるのもよく見かける。
私も、とても可愛らしい娘だと思う。
だって、まるで、御伽噺に出てくるお姫様にそっくりなのだ。
綺麗に整えられた巻き髪は、風が吹く度にサラサラと靡いて、甘いいい香りが漂う。
それに、私服も凄く可愛いという噂を聞いたこともある。
立体起動の邪魔になるから、ネックレスはつけられないけれど、兵団服を着ている今も、ピアスやブレスレットで飾っているし、兵団ジャケットの胸元には、可愛らしい花のブローチが咲いていて、裾には目立たない程度の小花柄の刺繍もしてある。
お洒落はよく分からないけれど、彼女が着ていたら可愛く見えるし、兵団服じゃないみたいだ。
だから、わざわざ、変わり者ばかりが集まる調査兵団で命を懸けて恐ろしい巨人と戦わなくても、素敵な王子様がすぐに迎えに来てくれそうなのに———、と彼女を見る度に思うのだ。
でも、彼女は、お姫様ではなく、強く戦うことを選んだ。
私達と同じミケ分隊に所属していて、班は————、たぶん、ゲルガーのところだった気がする。
でも、同じ分隊でも、遂行している任務が全く違うから、仕事で私と関わることはない。
もちろん、歳が離れている彼女とプライベートで親しくしていることもない。
ただ、副兵士長という役職から、ミケ分隊の中での会議で調査兵達の評価を耳にすることも多く、彼女が調査兵になってまだ1年でありながら、とても信頼性の高い実力を持っているということは知っていた。
いつか、お姫様が、宙を舞って、力強く戦う姿を見てみたい。
「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」
私に何の用だろう———。
不思議に思いながらも、開いていた本を閉じながら、フレイヤに訊ねた。
「ジャンさんと婚約したって、嘘ですよね。」
それは、質問ではなかった。
最も常識的な事実を述べるような口調で、フレイヤは言った。
可愛らしい顔立ちからは意外なほどに、彼女はとても意志の強い瞳をしていた。
先輩である私の方が、気負いされそうだった。
「…へ?」
思いがけないどころか、聞き間違いだとしか思えなくて、私は間の抜けた声を発することしか出来なかった。
鳩が豆鉄砲を食ったよう、という一文を読んだことがある。
たぶん、今の私は、そんな顔をしているはずだ。
「なまえさんとジャンさんのこと見てたけど、全然そんな風に見えませんでした。」
「え…っと、それは…、仕事とプライベートは分けているっていうか———。」
「嘘です、そんなの。壁外任務中も妄想ばっかりしてるなまえさんが、
そんなこと出来るわけないって、誰だって分かりますよ。
すぐに顔に出るのに、今まで誰にも気づかれなかったなんておかし過ぎます。」
なんとか誤魔化そうとした言い訳すら、フライヤに一刀両断されてしまった。
ぐぅの音も出ないほど、彼女の言っていることが正し過ぎて、私は、呆気なく言い訳を失った。
何も言えなくなった私を見下ろして、フレイヤはさらに続けた。
「私、信じてませんから。」
彼女はキッパリとそう告げて、私の返事を待たずに宿舎に入って行ってしまった。
言いたいことだけ言って立ち去る、というのは、捨て台詞と呼んでいいはずだ。
でも、なぜか私はそれを、宣戦布告のように感じた。
(…よく分かんないけど、ジャンに相談しよう。)
首を傾げながらも、解決策はジャンに決めて、私はまたお気に入りの本を開いた。
それにしても———。
私はどうしていつも、先輩兵士らしく対応してもらえないのだろう。
別に、尊敬してほしいとか、敬って欲しいとかは思ってない。
だって、ただ、巨人から逃げるのが得意で、毎回、運よく壁内に戻って来られているだけだ。
そんなにすごい功績を残して来たわけでもない。
でも、もうすこしなんか———。
妄想ばっかりしてるどうしようもない兵士、その通り過ぎる彼女のイメージする私に、ため息を吐いたときだった。
「はい、これ、持ってきましたよ。」
隣からジャンの声が聞こえてすぐ、古いベンチが軋んだ。
私に書類を渡したジャンは、疲れた———と、長い脚を前に投げ出して、ベンチの背もたれに寄り掛かった。
「ありがと。早かったね。」
「走りましたから。」
「ゆっくりでいいのに。」
「その間、サボる気だったからでしょ。」
「へへ、バレてた~。」
「そういえば、さっき、珍しく分隊のヤツと話してましたね。
何かあったんですか?」
「あ、そうだ。それなんだけどね———。」
ジャンに訊ねられて、フレイヤの宣戦布告を思い出した。
ハンジさんの疑いが晴れた今、後輩の兵士の疑いは、私には大きな問題には感じられなかった。
でも、私達の恋人のフリを信じていない調査兵が存在しているということが分かったということは、ジャンに伝えておいた方が良い。
それに、解決策を考えて欲しいし———。
そう思って、彼女に言われたことをジャンに話した。
すると、ベンチに寄り掛かったまま、青い空を見上げて話を聞いていたジャンが、しばらく何かを考えたように黙り込んだ後、跳ねるように身体を起こした。
そして、私を見てニッと口の端を上げた。
「明日、ちょうど休みですし、デートに連れてってやりますよ。」
「・・・・私の話聞いてた?」
大きく話題の変わってしまったそれに、私は呆れ気味に答えた。
それに、休みの日は部屋にこもって好きなだけ寝て、好きな時に起きて、ダラダラとベッドの上で妄想しながら過ごすのだと決めている。
それなのに、ジャンは当然のような顔で、飄々と答える。
「聞いてましたよ?」
「それなら、デートなんて馬鹿みたいなこと言ってないで
ちゃんと考えて——。」
「だから、デート行きましょうって言ってるんですよ。」
「どこが、だからなの。もうふざけないでよ。」
私は、首を竦めたため息を吐いた。
ふざけてるわけじゃないと言われても、私には冗談にしか聞こえなかったのだ。
でも、どうやらジャンは本当にちゃんと考えていたらしい。
「ずっと隠れて付き合ってた2人が、やっと公認になったら
今まで出来なかったデートがしたいと思うものでしょ。」
「…だから、デートって言ったの?」
「あとは、せっかく休みが重なってんのに、
それぞれで過ごしてたら、さらに怪しまれますからね。」
「そっか。ちゃんと考えてたんだね。
ごめんね、ふざけてるだけだと思った。」
私が謝れば、今度は、ジャンが首を竦めて、ため気を吐いた。
それから———。
「誰に見られてもいいような、最高のデートにしましょうね。」
私の横の髪を梳かすように撫でながら、ジャンの流し目が私を見下ろす。
だから彼は———。
「やっぱりふざけてるじゃんか。」
クスッと笑って、私は立ちあがった。
宿舎に入れば、すぐにジャンが何冊も積み上げられた本を抱えて隣に並んだ。
「少しは自分も持とうと思わないんすか?」
「ねぇ、ベンチに座ってて思ったんだけどね。」
「どうせまたくだらないことでも思いついたんでしょ。」
「今日は天気もいいし、風も気持ちいいし、良いお昼寝日和——。」
「お昼寝日和じゃありません。これ終わらせねぇと、デートどころじゃねぇっすよ。」
「お昼寝した~い。」
「そんな暇ありません。」
「ちぇ。」
口を尖らせて小さく舌打ちをした後、私は大きな欠伸を漏らした。
隣で、ジャンが大きなため息を吐いていた。
もう宿舎に入ろうとしているところだった。
研究棟に逆戻りしていく頼りになる補佐官の背中を見送りながら、私は宿舎の入口にあるベンチに座って、本を広げた。
一応まだ任務中で、腰の横に積みあがっているのは、これから調べなければならない本の山だ。
でも、私の目が追いかける文字は、どこか遠い世界での嘘みたいな冒険を語っている。
海という大きな湖や、不思議な実、身体がゴムという未知の材質になって伸びたり縮んだり自由自在な少年、動物や自然界のものに変身できる特殊な力を持った人達、目が眩むほどの宝石———。
何度読んだって私をワクワクさせるこのお気に入りの本に書かれているのは、たぶん、王政が禁止してる壁外のことなのだと思う。
でも、実際にそれがあるのかどうかは分からない。
想像の物語かもしれないし、壁外に出れば、それは私達が毎日見ている生活と同じくらい当然のように存在するものなのかもしれない。
私は、それが嘘でも真でも、いつか現実にしたいと願っている。
妄想は楽しい。
でも、私が見なければならない残酷な世界が、妄想とそっくりの世界になったら、それはどんなに素敵だろうって、思うから———。
「なまえさん、今、いいですか?」
声を掛けられて顔を上げた。
ベンチに座っている私を見下ろしているのは、調査兵に入団してまだ1年ほどの若い女兵士だった。
彼女のすぐそばを、腰に立体起動装置をつけている若い兵士達が通り抜けて、宿舎に戻って行く。
どうやら、午前中の訓練が終わったところのようだ。
さすがに、調査兵全員の名前を把握することは出来ていないけれど、彼女はよくジャンに声を掛けているのを見たことがあるから覚えていた。
確か、彼女の名前は、フレイヤ。
大きな瞳と薄く色づいた唇、手で包めてしまいそうなくらいに小さな顔が印象的な、お人形のような容姿で、新兵の入団式の時もとても目立っていた娘だ。
若い男兵士達が、鼻の下を伸ばして彼女の周りを取り囲んでいるのもよく見かける。
私も、とても可愛らしい娘だと思う。
だって、まるで、御伽噺に出てくるお姫様にそっくりなのだ。
綺麗に整えられた巻き髪は、風が吹く度にサラサラと靡いて、甘いいい香りが漂う。
それに、私服も凄く可愛いという噂を聞いたこともある。
立体起動の邪魔になるから、ネックレスはつけられないけれど、兵団服を着ている今も、ピアスやブレスレットで飾っているし、兵団ジャケットの胸元には、可愛らしい花のブローチが咲いていて、裾には目立たない程度の小花柄の刺繍もしてある。
お洒落はよく分からないけれど、彼女が着ていたら可愛く見えるし、兵団服じゃないみたいだ。
だから、わざわざ、変わり者ばかりが集まる調査兵団で命を懸けて恐ろしい巨人と戦わなくても、素敵な王子様がすぐに迎えに来てくれそうなのに———、と彼女を見る度に思うのだ。
でも、彼女は、お姫様ではなく、強く戦うことを選んだ。
私達と同じミケ分隊に所属していて、班は————、たぶん、ゲルガーのところだった気がする。
でも、同じ分隊でも、遂行している任務が全く違うから、仕事で私と関わることはない。
もちろん、歳が離れている彼女とプライベートで親しくしていることもない。
ただ、副兵士長という役職から、ミケ分隊の中での会議で調査兵達の評価を耳にすることも多く、彼女が調査兵になってまだ1年でありながら、とても信頼性の高い実力を持っているということは知っていた。
いつか、お姫様が、宙を舞って、力強く戦う姿を見てみたい。
「うん、大丈夫だよ。どうしたの?」
私に何の用だろう———。
不思議に思いながらも、開いていた本を閉じながら、フレイヤに訊ねた。
「ジャンさんと婚約したって、嘘ですよね。」
それは、質問ではなかった。
最も常識的な事実を述べるような口調で、フレイヤは言った。
可愛らしい顔立ちからは意外なほどに、彼女はとても意志の強い瞳をしていた。
先輩である私の方が、気負いされそうだった。
「…へ?」
思いがけないどころか、聞き間違いだとしか思えなくて、私は間の抜けた声を発することしか出来なかった。
鳩が豆鉄砲を食ったよう、という一文を読んだことがある。
たぶん、今の私は、そんな顔をしているはずだ。
「なまえさんとジャンさんのこと見てたけど、全然そんな風に見えませんでした。」
「え…っと、それは…、仕事とプライベートは分けているっていうか———。」
「嘘です、そんなの。壁外任務中も妄想ばっかりしてるなまえさんが、
そんなこと出来るわけないって、誰だって分かりますよ。
すぐに顔に出るのに、今まで誰にも気づかれなかったなんておかし過ぎます。」
なんとか誤魔化そうとした言い訳すら、フライヤに一刀両断されてしまった。
ぐぅの音も出ないほど、彼女の言っていることが正し過ぎて、私は、呆気なく言い訳を失った。
何も言えなくなった私を見下ろして、フレイヤはさらに続けた。
「私、信じてませんから。」
彼女はキッパリとそう告げて、私の返事を待たずに宿舎に入って行ってしまった。
言いたいことだけ言って立ち去る、というのは、捨て台詞と呼んでいいはずだ。
でも、なぜか私はそれを、宣戦布告のように感じた。
(…よく分かんないけど、ジャンに相談しよう。)
首を傾げながらも、解決策はジャンに決めて、私はまたお気に入りの本を開いた。
それにしても———。
私はどうしていつも、先輩兵士らしく対応してもらえないのだろう。
別に、尊敬してほしいとか、敬って欲しいとかは思ってない。
だって、ただ、巨人から逃げるのが得意で、毎回、運よく壁内に戻って来られているだけだ。
そんなにすごい功績を残して来たわけでもない。
でも、もうすこしなんか———。
妄想ばっかりしてるどうしようもない兵士、その通り過ぎる彼女のイメージする私に、ため息を吐いたときだった。
「はい、これ、持ってきましたよ。」
隣からジャンの声が聞こえてすぐ、古いベンチが軋んだ。
私に書類を渡したジャンは、疲れた———と、長い脚を前に投げ出して、ベンチの背もたれに寄り掛かった。
「ありがと。早かったね。」
「走りましたから。」
「ゆっくりでいいのに。」
「その間、サボる気だったからでしょ。」
「へへ、バレてた~。」
「そういえば、さっき、珍しく分隊のヤツと話してましたね。
何かあったんですか?」
「あ、そうだ。それなんだけどね———。」
ジャンに訊ねられて、フレイヤの宣戦布告を思い出した。
ハンジさんの疑いが晴れた今、後輩の兵士の疑いは、私には大きな問題には感じられなかった。
でも、私達の恋人のフリを信じていない調査兵が存在しているということが分かったということは、ジャンに伝えておいた方が良い。
それに、解決策を考えて欲しいし———。
そう思って、彼女に言われたことをジャンに話した。
すると、ベンチに寄り掛かったまま、青い空を見上げて話を聞いていたジャンが、しばらく何かを考えたように黙り込んだ後、跳ねるように身体を起こした。
そして、私を見てニッと口の端を上げた。
「明日、ちょうど休みですし、デートに連れてってやりますよ。」
「・・・・私の話聞いてた?」
大きく話題の変わってしまったそれに、私は呆れ気味に答えた。
それに、休みの日は部屋にこもって好きなだけ寝て、好きな時に起きて、ダラダラとベッドの上で妄想しながら過ごすのだと決めている。
それなのに、ジャンは当然のような顔で、飄々と答える。
「聞いてましたよ?」
「それなら、デートなんて馬鹿みたいなこと言ってないで
ちゃんと考えて——。」
「だから、デート行きましょうって言ってるんですよ。」
「どこが、だからなの。もうふざけないでよ。」
私は、首を竦めたため息を吐いた。
ふざけてるわけじゃないと言われても、私には冗談にしか聞こえなかったのだ。
でも、どうやらジャンは本当にちゃんと考えていたらしい。
「ずっと隠れて付き合ってた2人が、やっと公認になったら
今まで出来なかったデートがしたいと思うものでしょ。」
「…だから、デートって言ったの?」
「あとは、せっかく休みが重なってんのに、
それぞれで過ごしてたら、さらに怪しまれますからね。」
「そっか。ちゃんと考えてたんだね。
ごめんね、ふざけてるだけだと思った。」
私が謝れば、今度は、ジャンが首を竦めて、ため気を吐いた。
それから———。
「誰に見られてもいいような、最高のデートにしましょうね。」
私の横の髪を梳かすように撫でながら、ジャンの流し目が私を見下ろす。
だから彼は———。
「やっぱりふざけてるじゃんか。」
クスッと笑って、私は立ちあがった。
宿舎に入れば、すぐにジャンが何冊も積み上げられた本を抱えて隣に並んだ。
「少しは自分も持とうと思わないんすか?」
「ねぇ、ベンチに座ってて思ったんだけどね。」
「どうせまたくだらないことでも思いついたんでしょ。」
「今日は天気もいいし、風も気持ちいいし、良いお昼寝日和——。」
「お昼寝日和じゃありません。これ終わらせねぇと、デートどころじゃねぇっすよ。」
「お昼寝した~い。」
「そんな暇ありません。」
「ちぇ。」
口を尖らせて小さく舌打ちをした後、私は大きな欠伸を漏らした。
隣で、ジャンが大きなため息を吐いていた。