◇第百四十七話◇最愛を唱えるのは天使か悪魔か
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翌日の午後、休憩時間に入ったジャンが足早に目指したのは医療棟だった。
なまえが目を覚ましたことは、朝のうちに調査兵達にも伝えられていた。
皆が、仲間の為に戦った彼女の回復を願っていた。「よかったな。」とジャンに声をかけてきた調査兵は2,3人ではない。
「おーい、ジャン!」
ほら、まただ。ジャンは、自分を呼ぶ声に気が付いて後ろを振り向く。
手を振って走って来てるのはコニーだ。
「おう。」
ジャンも軽く手をあげて、立ち止まった。
「なまえさんとの婚約、ダメになったわけじゃなくてよかったな!」
息を切らして駆け寄って来たコニーは、嬉しそうな顔で言った。
今日、ジャンが何度も聞かされたのと同じセリフだ。
最初は何を言われているのか分からなかったが、彼らが揃ってそう口にする理由については、なんとなく掴めて来た。
「なまえさんを逆恨みしてた奴らが、婚約者の俺まで本気で殺そうとし始めたから
俺の体力が回復するまでは、リヴァイ兵長が婚約者のフリをして守ってくれてたって話だろ。」
よかったな、と声をかけてくる先輩兵士達を質問攻めにして、なんとか聞き出したのがコレだった。
昨日までは確かに、ジャンは、意識不明の間に上司に婚約者を寝取られた不憫な男だったはずなのだ。
それがいつの間にか、調査兵達は、リヴァイが偽物の婚約者、ジャンが本物の婚約者という認識に切り替わっている。
まるで、なまえがリヴァイに心を奪われなかったという世界線に飛ばされたみたいな奇妙な感覚だ。
「なんだ、もう知ってたのかよ~。
お前もリヴァイ兵長から事情を説明してもらったのか?」
コニーはつまらなそうに口を尖らせた。
気になったのは、『お前も』というセリフだ。
「その話、リヴァイ兵長から聞いたのか?」
「おう!昨日、リヴァイ兵長が俺達に教えてくれたんだ!
なんか、今回の壁外調査でのジャンを見て、もう安心だって判断できたから
もう真実を隠す必要はねぇってさ。」
「…へぇ。」
コニーは少し得意げな表情でそう言うと、なぜか照れくさそうに鼻の先を指で掻いた。
けれど、ジャンはやはりその意味がよく分からなかった。
状況が読めないのだ。
もし仮に、その話が事実だったとしよう。でも、だからといって、自分は本当にまた婚約者という立場に戻っていいのだろうか。
調査兵たちから聞かされる話には、リヴァイが言いふらしているらしい『真実』というものがあるだけで、なまえの気持ちがひとつもないのだ。
それに、元に戻ったところで、それは『本物の婚約者』ではなく『偽物の婚約者』に過ぎない。
だって、ジャンこそがまさに『偽物の婚約者』だったのだから————。
なまえが目を覚ましたことは、朝のうちに調査兵達にも伝えられていた。
皆が、仲間の為に戦った彼女の回復を願っていた。「よかったな。」とジャンに声をかけてきた調査兵は2,3人ではない。
「おーい、ジャン!」
ほら、まただ。ジャンは、自分を呼ぶ声に気が付いて後ろを振り向く。
手を振って走って来てるのはコニーだ。
「おう。」
ジャンも軽く手をあげて、立ち止まった。
「なまえさんとの婚約、ダメになったわけじゃなくてよかったな!」
息を切らして駆け寄って来たコニーは、嬉しそうな顔で言った。
今日、ジャンが何度も聞かされたのと同じセリフだ。
最初は何を言われているのか分からなかったが、彼らが揃ってそう口にする理由については、なんとなく掴めて来た。
「なまえさんを逆恨みしてた奴らが、婚約者の俺まで本気で殺そうとし始めたから
俺の体力が回復するまでは、リヴァイ兵長が婚約者のフリをして守ってくれてたって話だろ。」
よかったな、と声をかけてくる先輩兵士達を質問攻めにして、なんとか聞き出したのがコレだった。
昨日までは確かに、ジャンは、意識不明の間に上司に婚約者を寝取られた不憫な男だったはずなのだ。
それがいつの間にか、調査兵達は、リヴァイが偽物の婚約者、ジャンが本物の婚約者という認識に切り替わっている。
まるで、なまえがリヴァイに心を奪われなかったという世界線に飛ばされたみたいな奇妙な感覚だ。
「なんだ、もう知ってたのかよ~。
お前もリヴァイ兵長から事情を説明してもらったのか?」
コニーはつまらなそうに口を尖らせた。
気になったのは、『お前も』というセリフだ。
「その話、リヴァイ兵長から聞いたのか?」
「おう!昨日、リヴァイ兵長が俺達に教えてくれたんだ!
なんか、今回の壁外調査でのジャンを見て、もう安心だって判断できたから
もう真実を隠す必要はねぇってさ。」
「…へぇ。」
コニーは少し得意げな表情でそう言うと、なぜか照れくさそうに鼻の先を指で掻いた。
けれど、ジャンはやはりその意味がよく分からなかった。
状況が読めないのだ。
もし仮に、その話が事実だったとしよう。でも、だからといって、自分は本当にまた婚約者という立場に戻っていいのだろうか。
調査兵たちから聞かされる話には、リヴァイが言いふらしているらしい『真実』というものがあるだけで、なまえの気持ちがひとつもないのだ。
それに、元に戻ったところで、それは『本物の婚約者』ではなく『偽物の婚約者』に過ぎない。
だって、ジャンこそがまさに『偽物の婚約者』だったのだから————。