◇第百四十話◇姫を守る騎士になる…
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「本当に…!ありがとう!!」
翌日、エルヴィンに会議室に呼ばれたジャンは、部屋に入ってくるなり抱き着かれた。
驚くジャンの背中を折れそうなほどの力で抱きしめるのは、なまえの父親だ。
ジャンは、痛みに顔を歪めながら、状況を整理していく。
会議室にいるのは、痛いくらいに抱きしめてきている父親の他に、なまえの母親、そして、ジャンを呼び出したエルヴィンとリヴァイ、ハンジもいる。
ありがとう———そう繰り返す父親の言葉もあり、なんとなく状況が掴めて来た。
「いえ、俺は何も……っ。」
何もしていない————は嘘になる。
それでもジャンは、なまえを傷つけた罪悪感から、彼女の両親からの感謝を素直に受け入れることは出来なかった。
父親の胸元を両手で強く押しのけると、意外とすんなり離れてくれた。
「いきなり抱き着いてすまなかったね。でも本当に君には感謝をしているんだ。」
「エルヴィンとリヴァイから話は聞いたわ。
誰もが諦めかけていたときに、あなただけがなまえを助けるために
命を懸けてくれたんですってね。本当に…ありがとう。」
「なまえのことも有難いが、君も無事で本当によかったよ。」
目の前で、なまえの父親は満足そうな笑みを浮かべている。その隣では、母親が幸せそうに涙ぐんでいる。
ジャンが、彼らの大切な一人娘を命を張って助けてくれたからなのだろう。
けれど、ジャンが彼らの大切な一人娘の心を深く傷つたことを、彼らは知らない。
ジャンは僅かに目を伏せて下唇を噛んだ。
———素直に、喜べない。
これはチャンスだ。せっかくなのだから、今のうちになまえの両親に恩を売ってしまえばいい。
ついでに、リヴァイはなまえを見捨てて巨人の餌にしようとしたのだと告げ口してしまえば完璧だ。
そうすれば、なぜか突然に『本物の婚約者は自分だ』と主張してジャンからなまえを奪った男から、彼女を取り返せるかもしれない。
頭の中で、もう一人の自分がとても良い提案をくれている。
それなのに、傷ついたなまえの顔が脳裏から離れてくれないのだ。彼女の涙を思い出す度に、心臓が握り潰されそうになって、喉の奥が渇いて声が出せないのだ。
「…おれは…、彼女を……」
「娘の補佐官になってくれたのが君で本当によかった!」
なまえの父親が、ジャンの両肩を掴んで嬉しそうに言った。
一体自分は今、何を言おうとしていたのだろう————ハッとして言葉を切ったジャンは、心臓の鼓動が速くなったのを感じた。
それが何だったのかハッキリと覚えている自信ははないけれど、言わなくてよかった気がする。
だって、せめて、なまえの補佐官としてそばにいたいのだ。
彼女が心から大切に想う両親に、嫌われたくない。少しでも良い印象を持っていてほしい。そう思うのは、おかしなことだろうか。
「いえ、俺は補佐官として当然のことをしたまでです。
なまえさんの補佐として、彼女を守る為に続けていた訓練が役に立って
俺も本当によかったと安心しています。」
ジャンは、清々しい表情を作って、凛々しく答えた。
嘘は吐いていない。なまえの補佐官に任命されたそのときから、彼女を守る為のあらゆる想定をしながら、厳しい訓練を行って来たのだ。
そして今回、その成果を出せた。それだけのことだ。
嘘は吐いていない————。
感激した様子で感謝を繰り返すなまえの両親を前に、ジャンは何度も自分に言い聞かせたけれど、胸の内にひっかかった嫌な感情は残ったままだった。
翌日、エルヴィンに会議室に呼ばれたジャンは、部屋に入ってくるなり抱き着かれた。
驚くジャンの背中を折れそうなほどの力で抱きしめるのは、なまえの父親だ。
ジャンは、痛みに顔を歪めながら、状況を整理していく。
会議室にいるのは、痛いくらいに抱きしめてきている父親の他に、なまえの母親、そして、ジャンを呼び出したエルヴィンとリヴァイ、ハンジもいる。
ありがとう———そう繰り返す父親の言葉もあり、なんとなく状況が掴めて来た。
「いえ、俺は何も……っ。」
何もしていない————は嘘になる。
それでもジャンは、なまえを傷つけた罪悪感から、彼女の両親からの感謝を素直に受け入れることは出来なかった。
父親の胸元を両手で強く押しのけると、意外とすんなり離れてくれた。
「いきなり抱き着いてすまなかったね。でも本当に君には感謝をしているんだ。」
「エルヴィンとリヴァイから話は聞いたわ。
誰もが諦めかけていたときに、あなただけがなまえを助けるために
命を懸けてくれたんですってね。本当に…ありがとう。」
「なまえのことも有難いが、君も無事で本当によかったよ。」
目の前で、なまえの父親は満足そうな笑みを浮かべている。その隣では、母親が幸せそうに涙ぐんでいる。
ジャンが、彼らの大切な一人娘を命を張って助けてくれたからなのだろう。
けれど、ジャンが彼らの大切な一人娘の心を深く傷つたことを、彼らは知らない。
ジャンは僅かに目を伏せて下唇を噛んだ。
———素直に、喜べない。
これはチャンスだ。せっかくなのだから、今のうちになまえの両親に恩を売ってしまえばいい。
ついでに、リヴァイはなまえを見捨てて巨人の餌にしようとしたのだと告げ口してしまえば完璧だ。
そうすれば、なぜか突然に『本物の婚約者は自分だ』と主張してジャンからなまえを奪った男から、彼女を取り返せるかもしれない。
頭の中で、もう一人の自分がとても良い提案をくれている。
それなのに、傷ついたなまえの顔が脳裏から離れてくれないのだ。彼女の涙を思い出す度に、心臓が握り潰されそうになって、喉の奥が渇いて声が出せないのだ。
「…おれは…、彼女を……」
「娘の補佐官になってくれたのが君で本当によかった!」
なまえの父親が、ジャンの両肩を掴んで嬉しそうに言った。
一体自分は今、何を言おうとしていたのだろう————ハッとして言葉を切ったジャンは、心臓の鼓動が速くなったのを感じた。
それが何だったのかハッキリと覚えている自信ははないけれど、言わなくてよかった気がする。
だって、せめて、なまえの補佐官としてそばにいたいのだ。
彼女が心から大切に想う両親に、嫌われたくない。少しでも良い印象を持っていてほしい。そう思うのは、おかしなことだろうか。
「いえ、俺は補佐官として当然のことをしたまでです。
なまえさんの補佐として、彼女を守る為に続けていた訓練が役に立って
俺も本当によかったと安心しています。」
ジャンは、清々しい表情を作って、凛々しく答えた。
嘘は吐いていない。なまえの補佐官に任命されたそのときから、彼女を守る為のあらゆる想定をしながら、厳しい訓練を行って来たのだ。
そして今回、その成果を出せた。それだけのことだ。
嘘は吐いていない————。
感激した様子で感謝を繰り返すなまえの両親を前に、ジャンは何度も自分に言い聞かせたけれど、胸の内にひっかかった嫌な感情は残ったままだった。