◇第百三十六話◇守りたい人と守るべき想い(1)
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地面を蹴った瞬間に、折れた右足首に猛烈な痛みが走った。
けれど、愛する人を助けるためなら、そんなことは関係ないことを一番わかっているのはリヴァイ本人だ。
リヴァイは、出来る限り以上に急いだのだ。
今までの人生でこれほどまで早く走ったことがあっただろうかと思うほどだったから、怪我を言い訳にはしたくない。
それでも、最初に立体起動装置のガスを吹かして壁から飛び降りたのは、リヴァイではなくジャンだった。
アンカーを壁に突き刺した勢いのままジャンが飛び込む。そして、ブーツから煙が見える程の猛スピードで壁を滑りながらなまえの元へ向かうと、なんとか間一髪のところで彼女を受け止めた。
壁の中腹辺りで止まったジャンとなまえを確かめて、リヴァイはホッと息を吐き、トリガーにかけていた自身の指を外す。
「なまえ!」
すぐに眼下を見下ろして、なまえの無事を確認する。
けれど、返って来たのは、愛おしい人の凛とした声でもなければヘラヘラした言い訳でもなかった。
「息はありますが、意識がありません!
壁で頭を打ったのか、額に裂傷があります!!
すぐに処置が必要だと思われます!!」
「クソ…!」
リヴァイは苛立った声を漏らした。
50m下の地面に直撃は避けられたものの、なまえに怪我をさせてしまった。
自分なら無事な姿で助けられたかもしれない————間に合わなかった今でも、そう考えてしまうのだ。
とにかく、今は後悔しているときではない。
怪我をしているのならば、早く壁上に戻って来て治療が必要だ。
なまえ#とジャンのすぐ下では、5、6体の巨人が、このまま彼らが落ちてきてくれるのを今か今かと待ち構えている。
彼らと巨人との差は十数メートルはある。だが、15m級だと思われる巨人が、必死に手を伸ばしてジャンとなまえを捕まえようとしているのも確認できる。
このまま壁にぶら下がっていれば、巨人の大きな手に握り潰されるのも時間の問題だろう。
「何してる!早く上がってきやがれ!」
リヴァイは、真下にいるジャンに向かって叫んだ。
周りにいる調査兵達からも似たような声がジャンに向かって飛び交う。
けれど、ジャンはなまえを片手で抱えたままその場から動こうとしない。
彼の身に何か問題が起きたのであろうことは明らかだった。
「ジャンさん!」
リヴァイのすぐ隣から悲痛な叫びが聞こえた。
聞き覚えがあるようなその声になんとなく視線を向ければ、泣きそうな顔でジャンの名前を呼んでいるのは、幾度となくなまえに嫌がらせをしてきた若い調査兵、フレイヤだった。
「…!」
リヴァイは、なまえが壁から落ちていくのが見えたとき、すぐ隣で悲鳴を上げていたのもフレイヤだったのを思い出す。
いや、まさか———そう思いながらも、思考が悪い方にばかり向かう。
曲りなりにも彼女は調査兵だ。最近は訓練にも真剣に参加しているとミケから聞いていたし、共に命を懸けて戦う仲間であることに間違いはないはずだ。
だからこそ、疑いたくはない。けれど、もしかして、なまえが落下してしまったことにフレイヤが関係しているのだとしたら———。
「アンカーが動きません!」
張り上げたジャンの声が聞こえて、リヴァイは忙しなく動こうとしていた思考を遮断した。
犯人捜しなんていつでもできる。
まずは、なまえとジャンを壁の上の安全な場所まで連れてくるのが先だ。
「どういうことだ!」
「なまえさんを受け止めたときの衝撃でアンカーの金具が破損したみたいです!
トリガーを引いても反応がないので、上がれません!」
ジャンが叫ぶ。
それで漸く、彼がいつまでも壁上に上がってこようとしない理由に納得する。
今は、壁に刺さったアンカーのおかげでどうにかぶら下がっているような状態だ。
不安定なその体勢で、彼はなまえを抱えている。
これまでの鍛錬の成果と言うべきか。それとも、補佐官として彼女をそうして守って来た慣れなのか。
今はまだ平然とした表情をしているジャンだが、このまま片手で自分となまえ、2人分の体重を支え続けるのは困難だろう。
万が一にでもアンカーが外れれば、巨人の口の中へ真っ逆さまだ。
出来る限り早く彼らの元へ助けに向かう必要がある。
「待て、リヴァイ!」
アンカーに指をかけたとき、すぐそばから自分を呼び止めるエルヴィンの声が聞こえた。
けれどそのときにはもう既にリヴァイは、躊躇いなく地面を蹴って飛び上がっていた。
ジャンとなまえの下にいる巨人は6体。少し離れたところからは、なまえとジャンを見つけて近づいてきている巨人も数体確認できる。
壁以外にアンカーを刺す場所もない。
このまま降りて行って、なまえを受け取り、ジャンを助けて壁上へ上がれば成功と簡単にはいかないかもしれない。
とても不利な状況でのとても危険な救出作戦であることは理解していた。
万が一に何かあった場合にも、徹夜での戦闘を終えたばかりで疲労困憊の精鋭兵達は、負傷者も含めて、素早くは動けないだろう。
それでも、なまえを救いたいという思いが、一度立ち止まりエルヴィンの指示を仰ぐ暇もないほどにリヴァイを急かした。
けれど、愛する人を助けるためなら、そんなことは関係ないことを一番わかっているのはリヴァイ本人だ。
リヴァイは、出来る限り以上に急いだのだ。
今までの人生でこれほどまで早く走ったことがあっただろうかと思うほどだったから、怪我を言い訳にはしたくない。
それでも、最初に立体起動装置のガスを吹かして壁から飛び降りたのは、リヴァイではなくジャンだった。
アンカーを壁に突き刺した勢いのままジャンが飛び込む。そして、ブーツから煙が見える程の猛スピードで壁を滑りながらなまえの元へ向かうと、なんとか間一髪のところで彼女を受け止めた。
壁の中腹辺りで止まったジャンとなまえを確かめて、リヴァイはホッと息を吐き、トリガーにかけていた自身の指を外す。
「なまえ!」
すぐに眼下を見下ろして、なまえの無事を確認する。
けれど、返って来たのは、愛おしい人の凛とした声でもなければヘラヘラした言い訳でもなかった。
「息はありますが、意識がありません!
壁で頭を打ったのか、額に裂傷があります!!
すぐに処置が必要だと思われます!!」
「クソ…!」
リヴァイは苛立った声を漏らした。
50m下の地面に直撃は避けられたものの、なまえに怪我をさせてしまった。
自分なら無事な姿で助けられたかもしれない————間に合わなかった今でも、そう考えてしまうのだ。
とにかく、今は後悔しているときではない。
怪我をしているのならば、早く壁上に戻って来て治療が必要だ。
なまえ#とジャンのすぐ下では、5、6体の巨人が、このまま彼らが落ちてきてくれるのを今か今かと待ち構えている。
彼らと巨人との差は十数メートルはある。だが、15m級だと思われる巨人が、必死に手を伸ばしてジャンとなまえを捕まえようとしているのも確認できる。
このまま壁にぶら下がっていれば、巨人の大きな手に握り潰されるのも時間の問題だろう。
「何してる!早く上がってきやがれ!」
リヴァイは、真下にいるジャンに向かって叫んだ。
周りにいる調査兵達からも似たような声がジャンに向かって飛び交う。
けれど、ジャンはなまえを片手で抱えたままその場から動こうとしない。
彼の身に何か問題が起きたのであろうことは明らかだった。
「ジャンさん!」
リヴァイのすぐ隣から悲痛な叫びが聞こえた。
聞き覚えがあるようなその声になんとなく視線を向ければ、泣きそうな顔でジャンの名前を呼んでいるのは、幾度となくなまえに嫌がらせをしてきた若い調査兵、フレイヤだった。
「…!」
リヴァイは、なまえが壁から落ちていくのが見えたとき、すぐ隣で悲鳴を上げていたのもフレイヤだったのを思い出す。
いや、まさか———そう思いながらも、思考が悪い方にばかり向かう。
曲りなりにも彼女は調査兵だ。最近は訓練にも真剣に参加しているとミケから聞いていたし、共に命を懸けて戦う仲間であることに間違いはないはずだ。
だからこそ、疑いたくはない。けれど、もしかして、なまえが落下してしまったことにフレイヤが関係しているのだとしたら———。
「アンカーが動きません!」
張り上げたジャンの声が聞こえて、リヴァイは忙しなく動こうとしていた思考を遮断した。
犯人捜しなんていつでもできる。
まずは、なまえとジャンを壁の上の安全な場所まで連れてくるのが先だ。
「どういうことだ!」
「なまえさんを受け止めたときの衝撃でアンカーの金具が破損したみたいです!
トリガーを引いても反応がないので、上がれません!」
ジャンが叫ぶ。
それで漸く、彼がいつまでも壁上に上がってこようとしない理由に納得する。
今は、壁に刺さったアンカーのおかげでどうにかぶら下がっているような状態だ。
不安定なその体勢で、彼はなまえを抱えている。
これまでの鍛錬の成果と言うべきか。それとも、補佐官として彼女をそうして守って来た慣れなのか。
今はまだ平然とした表情をしているジャンだが、このまま片手で自分となまえ、2人分の体重を支え続けるのは困難だろう。
万が一にでもアンカーが外れれば、巨人の口の中へ真っ逆さまだ。
出来る限り早く彼らの元へ助けに向かう必要がある。
「待て、リヴァイ!」
アンカーに指をかけたとき、すぐそばから自分を呼び止めるエルヴィンの声が聞こえた。
けれどそのときにはもう既にリヴァイは、躊躇いなく地面を蹴って飛び上がっていた。
ジャンとなまえの下にいる巨人は6体。少し離れたところからは、なまえとジャンを見つけて近づいてきている巨人も数体確認できる。
壁以外にアンカーを刺す場所もない。
このまま降りて行って、なまえを受け取り、ジャンを助けて壁上へ上がれば成功と簡単にはいかないかもしれない。
とても不利な状況でのとても危険な救出作戦であることは理解していた。
万が一に何かあった場合にも、徹夜での戦闘を終えたばかりで疲労困憊の精鋭兵達は、負傷者も含めて、素早くは動けないだろう。
それでも、なまえを救いたいという思いが、一度立ち止まりエルヴィンの指示を仰ぐ暇もないほどにリヴァイを急かした。